人材が不足する会社に助成金を利用してRPAを導入させれば、会社に喜ばれる施策になって、それが広まれば局長の評価が上がるという考えのようだが、あまりにも子供っぽい考えで、考えが足りなさ過ぎる。


 まず、人材不足で困っている中小事業者には、RPAで合理化して得られる利益とRPAでかかる費用が一般的には割に合わない。そこで助成金という考え方だが、一見すると導入さえ助成金でできればうまくいくような気がするかもしれないが、多くの場合で中小企業が使い続けられるということにはならない。

 

 RPAは事業の変化に応じて、そのソフトなどの調整が必要となる。中小事業者ではそれを自社でできないことから専門業者を利用することになると、その費用がかなり大きく継続的にかかり、中小事業者はその負担に耐えるだけの利益が出ないこととなる。事業の変化が大きくなってRPAのソフトの改修費用が出せなくなった時に、RPAはなくなるだろう。発展途上国(低開発国)のプラント建設と同じ構造だ。当初は助成金などの投入で立派なものが導入されるが、その維持経費の助成がなく、立派な設備が早い段階で使われなくなる。そうなると、発展途上国は、メンテナンスをすれば使える設備がある中で、助成がなくなった古い設備を捨て、助成がされる新規設備の導入を再び求めることとなる。たいへんな社会的な無駄が生じている。助成金がうまくいくには、経済的な幸運が続く必要がある。

 

 すでにRPAは期待の大きさから、中折れしていると言われる。大企業の成功例が広がりを見せたあとにしか、中小企業にRPAが広がることはないだろう。(そんなことバカじゃなければ普通に想像がつく。バカでないならば、うまくいかないことがわかっていて、私的な目的でやっているだけなのだ。)

 

 中小事業者の助成金のRPAも同様なことが起こるであろう。そもそも、RPAからの利益が大きいところは、大した額の出ない助成金に関わらず、合理性を持って自ら導入を判断できるのである。自ら判断ができない事業者がRPAから合理的に利益を得るのは多くの場合無理だろう。RPAより、データ処理の賃金の安い海外への外注化が進んでおり、その方がRPAよりよっぽどメリットがあるだろう。また、メリットがあるからすでに海外への外注化は広まっているのだ。
 そもそも、このうまくいかない中小事業者に対するRPAの助成金誘導に公務員の人件費などを投入すること自体が無駄なのだ。

 

 そして、愛知労働局自体が局内の事務処理にほとんどRPAを導入していないことから、中小事業者には導入が困難なことを自ら示している。それは自己否定になるので卑怯にも決して言わないが。中小事業主にRPAを勧めるなら、まず、愛知労働局がRPAを導入したらどうだ、ということだ。自らがRPAを使って効率的にRPAの助成金の導入事業をしてみろ、そうしたら少しは信用されるだろう、ということだ。

 

 しかし、本音はRPAでも何でもいいのだ。助成金の金額が大きくなる商品であり、だれかと関係の深い大塚商会の商品が売れれば何でもいいのだ。

 愛知労働局の職員は大塚商会の会社内の会議室で愛知労働局長と一緒に、大塚商会の社員から直接、大塚商品の商品説明を受けて、大塚商会の商品知識を教え込まれている。

 会社を集めて話をするときの資料にも大塚商会だけがこっそり入っている。こんな不自然な売り込みが功を奏するだろうか。

 

 行政は国民のためを思ってくれているとは限らない。末端の公務員さえも、局長の職務評価を気にして国民のためにならない施策にまい進する。