今日のストーリーの主役は子育てママの井上さん。
「子どもにもお友達がたくさん増えて、幼稚園にも慣れてきて…」
井上さんはふっと笑った。
「この前も、お弁当も全部食べてきたんですよ。
年少さんの頃は食が細くて、食べてくれるようにずいぶん工夫しました。
年長さんになって…好き嫌いなくたくさん食べれるようになって…空のお弁当箱を見て、胸の奥がじんわり温かくなって、“もう大丈夫かな”って。でも、どこか少しだけ寂しくて」
私はうなずきながら、そっとお茶を差し出した。
その気持ち、よくわかる。
「その日の夕方に、小さな背中を見ていたら、
ふと“そろそろ働こうかな”って思ったんです」
井上さんは、少し恥ずかしそうに笑う。
「そう考えると不思議と焦りはなくて、むしろちょっとワクワクしてて。
でも、“できるかな”“続けられるかな”って不安も顔を出して」
私はゆっくりと言葉を返した。
「そうですね。その気持ち、とても自然ですよ。
“社会に戻る”というより、
“自分をもう一度取り戻したい”という感覚に近いかもしれませんね」
井上さんは目を見開いて、小さくうなずく。
「そうかもしれません。
いままで子どものことばかり考えてきたけど、
子どもは子どもの世界ができてきたみたいだから、
少しだけ“私も私”を動かしたい気持ちが出てきたんだと思います」
「そうですね。それってとてもいいサイン。
誰にでも訪れる“変化のタイミング”なんですよ」
少し沈黙が流れたあと、私は飲んでいたお茶を置いて、そっと言った。
「小さな準備ですよ。
働く前にね、
考えておきたい 「ま・み・む・め・も」
を知ってます?」
井上さんは首をかしげて笑う。
「ま・み・む・め・も…ですか?」
「まず、そのの準備をしておくだけで、今胸の中にある不安が和らぎますよ」
井上さんは少し明るい顔になって、
「ま・み・む・め・も」
なんだか楽しみになってきました」と笑顔で言った。
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働きたい気持ちは、
“戻る”ことじゃなく、“取り戻す”こと。
次回は、働く準備のステップ
「ま・み・む・め・も」を一緒に見ていきましょう。