17:30 夫からメールを受信。
「今日は18:50には帰るね♡」
そうかそうか、と夕飯の支度を続ける。ひと段落して、夫にメールを返す。
「了解だよ♡」
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18:45 夫帰宅。
夫は今日、お酒が飲めない日。街灯当番だ。例えば事故などで街灯が倒れた時に、撤去復旧に駆り出されるのだ。
お酒を飲んでいては急な呼び出しに対応できないため、1週間のうち、土曜日日曜日水曜日はお酒が飲めない日になっている。
夕食を食べながら今日の出来事を報告する。
子ども達と談笑。
いつもの光景。
「今日は夕飯食べ終えたら点検に行くけぇ。」
という。
分ったよ、気を付けて行ってきてねと言い、家の中に私と子供たちだけになった。よくある光景のため、特に何も思わずに
キッチンを片付け始める。
軽く洗い流した食器を食洗器に詰め、キッチンを整理。一段落・・・。
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突然スマホが鳴る。
画面を見ると実家の母からだった。
私 「はいはい」
母 「こんな時間にごめんね、あのね、ふゆちゃん、あのね、マコト君がね、今日亡くなったんよ・・・。今朝頭の血管が切れてね、救急車が来たみたいなんだけど、その時にはもうダメだったみたいで・・・・×××・・・・でね・・・・・」
ショック過ぎて以降の言葉が虚しく宙を舞うだけで頭に入らない。
あぁダメだしっかりしないと!
大きく息を吸って気をしっかりと持って聞く。
マコト君というのは、実家の真裏にある地主さんであり、常にPTAの行事に積極的に出ていたおじちゃんのこと。
御年59歳。
まさか享年になるなんて・・・。
私が死別して実家に帰って来た時から、まだ1才に満たない長女を当然のように可愛がってくれて
言葉数は少ないおじちゃんだったけど
背中で生き様を見せてくれるような、そんなおじちゃんだった。
子供たちを連れて実家に帰り、
長女と私と実家の父とでマコトおじちゃんの家に・・・。
大きな正門をくぐり、丁寧に手入れされてある植木を横にし、緊張する気持ちと
おじちゃんの死姿に会うということを受け入れたくない気持ちからか、心臓がバクバクと速まる。
ふらふらと眩暈がする。転ばないように飛び石を丁寧に踏み込んで玄関までの道を行く。
相変わらずの大きな大きな家。
玄関を開け、失礼しますと言葉を掛け、長女の背中に手を添えて一緒に仏間にお邪魔する。
白い真っ新な御布団に北枕にして横たわるマコトおじちゃんの御鼻に、ティッシュが丸めて詰めてある。
髪の毛が真っ白。
あれ・・・こんなに白髪だったっけ・・・
長女が気になり長女に目をやると涙をこらえているように見える。
そうか長女は亡くなった人を間近で見るのは初めて(物心ついてから)なのだった。
長女の心をしっかりフォローしなくては。
徐々に私は心が落ち着いてくる。
横には化粧もせずに憔悴しきった様子の奥様がおられた。
おじちゃんばかりが表に出ていたので、奥様にちゃんとお目にかかったのは奇しくも今日が初めてだった。
肩に付かないセミロングの明るい髪色で、細身で清楚な奥様が
「立ち直れないです。。。何もかも主人に任せきりだったから・・・。私が至らなかったからこんなことになってしまった・・・」
と肩を震わせていらした。
そうだ、私も13年前に同じことを思った。
私が至らないから旦那は死んじゃったんだ・・・と。
私よりもずっと年上のその奥様の細い肩を、気付いたらそっと抱いてしまっていた。
そんなことないです、この子(長女)も私もマコトおじちゃんにはすごく可愛がって頂いて・・・・。
お手伝いできることがあったら言ってください。
父も私も来ますから。
と伝えると、「ありがとうございます」とだけ仰って
肩を震わせて下を向いたままお顔をお上げにはならなかった。
つらい。
それも、つい4ヶ月前に、おじちゃんのお母様が亡くなられたばかりだった。
おじちゃん、弱音を人に吐く人じゃなかったから、お酒を飲んで紛らわせてたんだな・・・。
夏に実家に帰りフラっと外に出たとき
おじちゃんに会った。
「飲もうや!^^」
と言われて、コンクリートの小高くなっている道に座って夜空を見ながら色んなことを語り合った。
思い出がどんどん蘇る。
布団に横たわるおじちゃんに
「おじちゃん、まことおじちゃん」
と呼びかけるけどやっぱりお返事が無かった。
長女の中で生死というものがリアルになったようだ・・・。
素直でわりと純粋な長女のことだから、ショックも大きかったことだろう。
しっかりとフォローにつとめる。
「人は死んだら、原子レベルにまで分解され、一瞬にして宇宙の彼方にまで飛んで
行くことができるのだ」
「だとすれば、宮沢賢治の銀河鉄道の世界も、そこから着想を得たのかもしれませんね」
「そうかも知れませんね。でも、色気のない話ですが、原子でなら、
銀河鉄道を追い抜いていきますよ。ははは。」
今は亡き、知人の大学教授と交わした言葉を思い出し、
私も少し気がしっかりとする。
人の命のなんと儚いことか。
ほんとは見えていないだけで近くにいるんでしょ。
と
小声で呟いたりしてみる。