ズビャギンツェフの『ラブレス』とベズルコフの『理性の睡眠(ゆめ)』 | ロシアのドラマが好き

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(連投ですが、こっちは今日の日記も兼ねて…)


今日(日本時間)はアカデミー賞の発表の日だ。

外国語賞にノミネートされているズビャギンツェフ監督の『ラブレス』が気になる。


すると、ロシア人からFBのイベントで、今日、あの超大物俳優セルゲイ・ベズルコフの劇を六本木でやるっていう、ちょっと興奮ぎみのシェアがきた。しかも、無料!


…ありえん。

疑り深い私はそう思った。

もちろん、そう。調べてみれば、場所は六本木ヒルズTOHOシネマ。劇をやるって言っても、映像にとったものを流すのだ。

でも、ロシア語で回ってきた情報だけを見ると、まるでベズルコフがきてくれそうな書き方。主に在日ロシア人の間でシェアされている模様。すでに参加予定は160人、興味あり270人。

…ぜ〜ったい、みんな間違えてるチーン



外国語賞の『ラブレス』も気になったが、受賞はきっと無理だと思ったので、FBでまわってきた『理性の睡眠(ゆめ)』をふらっと観に行った。


六本木ヒルズにいってみると、これは『アートビレッジ とうおん構想』という企画の一環で、演劇をとびきり画質のいい8Kで撮影して、臨場感あふれる芝居を再現しようというもの。

プレスも来て、この企画の関係者たちによる挨拶まであった。

関係者の挨拶に、なにこれ?と訝しげなロシア女性たち。

すごいドレスアップして来ている女性たち。綺麗に着飾っている母娘をみて、私はなんだか気の毒になった。


これはね、正直ちょっと厳しいものがありました。

まず、字幕が、文学専門の真面目な学生さんがつけたのかな?という感じで、読める字数以上のものを詰め込んで、読みきれない。途中、とばしているところもいっぱい。しゃべってるのに、字幕なし。言ってる内容と字幕がずれててゼスチャーがおかしいところも多い。
初めて、字幕つけをしたのかも…

私は出入口近くの席にいたけれど、まあ、まず日本人たちが出て行く、出て行く。


その後、肩透かしを食らったロシア女性たちも出て行く、出て行く。

ありゃりゃ…ショボーン


ゴーゴリの『狂人日記』をもとにした芝居。ベズルコフは1時間半ほど出ずっぱりの一人芝居風(共演者もいるが、彼がほぼずっとしゃべっている)。すごい才能だとは思うけど、やっぱり生の迫力がないと、見続けるのもきついかも。


企画の趣旨に反して、正直、演劇は生にかぎる…ということを痛感してしまった。
(無料で見せてくださったのに、こんなこと書いてごめんなさい)



それで、最後に

どうしてズビャギンツェフ監督の『ラブレス』がオスカーは難しいと思ったかというと…



注意:全部ネタバレします!



『ラブレス』は半年くらい前に観たので、ちょっとウロ覚えで間違いがあるかもしれませんが、すっかり破局してしまった夫婦の話。(記憶違いがあったら、ごめんなさい)

妻にも愛人がいるし、夫の愛人にいたってはすでに子供を妊娠中。お互い、愛人といた方がもう幸せ。二人顔をあわせてもピリピリするばっかり、どう考えても、早く別れてしまった方がいい。

ところが、残念なことに(?)一人息子がいる。小学6年生か中学1、2年生くらいに見えた。二人の険悪な喧嘩にじっと無言で耐える息子。

家をもらう妻は、もう家を売る予定。息子の部屋にまで、購入希望者が見学にやってきて、購入後の話をあれこれとする。自分の居場所もなくなりつつある。

夫婦はすっかり離婚後の生活に向けて、準備中。居場所のなくなる息子のことなんて全然お構いなし。

で、ついに息子は失踪… 捜索の結果、発見された息子を見て、母親が「きゃあ〜〜ガーン

そして、最後はその数年後。

母親は新しい家で、しれっとランニンングマシーンでエクササイズしている。

そこで、テレビから流れるウクライナ東部の惨状を伝えるニュース。

終わり


というわけで、最後の最後になるまで、ロシアとウクライナの関係なんておくびにも出なかったんだけど、最後になって、はたと気づくのです。その夫婦関係をロシアとウクライナに重ねることができると。

勝手に関係悪化して、置き去りにされた者たちがどれだけ悲惨な目にあってると思うの!と感じるわけです。
置き去りにされた者はウクライナ東部だったり、二国の関係悪化に翻弄される人々であったり。
単純な私にはそうとれたのです。

ズビャギンツェフ監督は喧嘩両成敗的に、どちらが悪いという描き方はしていない。ただ、ただ、犠牲になっている人々の深い悲しみへの同情が残る。だから、ウクライナを支援するアメリカからすると喜ばしい内容ではないと思うのです。

みなさんはどう考えます?

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