[m:692]第3話:
ぴょんぴょん雲と
そらのかけら
ある日の夕方、
りかちゃんとユウくんは、
丘の上で ぼーっと
空を見上げていました。
「今日は、カエルくも
いないねぇ」
「うん……でも、
また来てくれるかもよ?」
ちょっぴりさみしくなった
そのとき――
空のすみっこに、
きらっと光る何かが見えました!
「ほら、あれ見て!
星じゃないよ、きっと!」
それは、カエルくもが
のこしていったような、
小さな“そらのかけら”。
ぴょこっ、ぴょこっと
ふたりの方へ とんできて……
「わっ! おちてきた!」
ふわりと草の上に落ちた
それは、ちいさな、
ふわふわの雲のかけらでした。
「もしかして、
カエルくもの おてがみかも!」
りかちゃんが
そらのかけらを手にとると、
中から ちいさな声が
きこえてきました。
「たすけて…!
カエルおうさまが
まよいこんだのです…
そらの迷路に……」
「そらの迷路!?」
ユウくんの目がまるくなります。
「それって…
空のなかにあるんじゃない?」
ふたりは、
急いで一輪車にまたがり、
そらのかけらが指す方向へと
走り出しました!
風の通り道をぬけ、
光のはしごをのぼると――
そこには、モクモクと
続く雲の迷路が
広がっていました。
雲の道はふわふわで、
でもときどき…
「ブゥ~!」と
音を立てて動いたり、
「ヒュル~!」と
形を変えたりして、
まるで生きてるみたい。
「ねえ、こっちの道、
カエルの足あとみたい!」
りかちゃんが指差した先には、
雲のうえにぽつぽつと、
ぴょんぴょん模様が
ついています。
「いってみよう!」
ユウくんといっしょに、
ぴょんぴょん道を
進んでいくと――
ついに!
カエルおうさまが、
もじゃもじゃ雲の中で
ぐるぐる回っていました!
「ぴょ…ぴょん!
出られないのじゃ~~!」
「こっちです!
ぴょんぴょん道をたどって!」
ふたりが手をふると、
カエルおうさまはひとっ飛び!
ぴょん! ぴょん! ぴょ~~ん!
迷路をぬけだして、
空高くジャンプ!
「ありがたや~~!!」
そのとき、空に大きな
虹がかかりました。
そのまんなかに、
ふわっとひとつ――
ハート型の雲が浮かんでいます。
カエルおうさまは、
ハート雲にちょこんとのって、
ふたりに深く
おじぎをしました。
「きっと また 会えるね」
りかちゃんとユウくんは、
にっこり。
そらのかけらを
ポケットにしまって、
一輪車でふたたび
野原へおりていきました。
[m:66]おしまい[m:66]
