■■■■「ついつい」コラム■■■■
(投稿済みの「ツイ」ッターに「追」加して書いています。仕事柄、政治の悪弊を「ついつい」論難してしまいます)
“裸で桃を盗ろうとする”安倍首相-核発言をめぐり
「李下(りか)に冠(かんむり)を正さず」とは、王様が桃の木の下で冠に触ると桃を盗んだように誤解されるから、そういう軽率な行為をしないようにという戒めです。「裸の王様」は正しいことを忠告する人がおらず、恥をかく王様の話です。核兵器をめぐる最近の安倍さんの言動は、“桃の実を盗ろうとモゾモゾしている裸の王様”のように見えます。この王様、本当にオカシイぞ――私たちの平和で自由な暮らしを安倍首相には託せないと、いよいよ実感します。
■法文上、自衛隊は核兵器を運べる
8月5日の参議院の委員会質疑で、法文上は自衛隊が後方支援として核兵器も運べることがわかりました(「重要影響事態法案」「国際平和支援法案」)。安倍首相は「法理上の話ではなく、政策上、全くあり得ないのです。国是としての非核三原則があるのだから」と否定しました。それでも執拗に野党から問われると、「私は総理大臣としてありえないと言ってるんですから、間違いありません。総理大臣として言ってるわけですから」と、鼻白んで答えていました。この「総理大臣だから私が正しい」話法は、安倍さんの得意のフレーズです。民主党の岡田克也代表との論戦でも飛び出しました。ただ、この言い方は総理大臣という権威をかさにきているだけですから、説得力は乏しいのですが。
■広島のあいさつで非核三原則を省く
その委員会の翌日6日、広島の平和式典であいさつをした安倍首相は、非核三原則に触れませんでした。「核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず」とする非核三原則は、唯一の被爆国、日本のアイデンティティでもあります。これまで広島・長崎の首相あいさつでは毎年必ず明言されてきたのに、なぜ安倍首相は今回、それを言わなかったのか。被爆関係者をはじめ世論の大きな疑問を招き、首相は9日の長崎のあいさつでは非核三原則に触れました。広島で省いた理由を問われ、首相は当然の原則だから言うまでもない、と答えました。確かに「言わずもがな」という場面も一般にはあります。しかし、今回はそうでしょうか。毎回発言してきた継続性と、原爆ということの重大性に鑑みれば、非核三原則を急に省く行為には「言わずもがな」以上の理由が推測されて当然でしょう。
■日本の核保有を考えているから?
ふつう、首相や大臣などの公的なあいさつ文は官僚が周到に配慮して原案をつくりますから、それに則っていれば問題は生じません。今回も官僚の原案には非核三原則は入っていましたが、首相の判断でそれを抜いたわけです。安倍さんはそこで何を考えたのか。理由は二通りありえます。一つ、何かしっかり考えた理由があって。もう一つは、つい軽い気持ちで。なにか確信的な理由があったとすると、それは「日本の安全には核保有が必要」と考える安全保障観でしょう。その是非はさておき、国際社会において核保有は一つのオプションです。日本は原発から出たプルトニウムを貯蔵しているので、その高い技術力からすれば数年で核兵器を開発できると目されています。依然、軍事力がモノを言う国際社会では核という圧倒的な兵器を持つことは一定の合理性があります。したがって安倍さんが確信もって日本の核保有を肯定するのは一つの考え方です。もしそうであるなら、今回の安保法制で自衛隊が核を輸送できるとする立法と整合しますし、今回のあいさつで非核三原則の言及をやめるのも筋が通ります。しかし、世論のごうごうたる反発を買うのは明らかです。安倍さんはそれに対して正面から説得できる、論理と気概を持たねばなりません。
■深く考えず、ついうっかり?
他方、もう一つの理由、つい軽い気持ちで。「戦後レジームからの脱却」という安倍首相の根底にある志向性からすれば、非核三原則も「脱却」したい一つの対象でしょう。その意識が根底にあるから、「また非核三原則かよ。毎度お決まりの形式的な文言だから抜いてもいいだろ」と、軽く考えたのかもしれません。私がここで問題にしたいのは、とりあえず核保有の是非ではありません。安倍さんの状況判断力です。前日の国会で自衛隊は核兵器も輸送できるとなって世論の疑念がわいている中、非核三原則を抜いてあいさつをすれば、当然、輪をかけて反発を買うだろうというのは、子供でも分かる推測です。その程度のことも、判断できない人なのでしょうか。あるいは連日の国会審議で疲労困憊だったのかもしれません。ですが、首相だから激務は当然です。「疲れていたので判断間違えて、戦争しちゃいました、ごめんなさい」なんて言い訳、通用しません。疲れや病気で仕事ができないなら第一次安倍政権の時と同じく辞任するべきです。
■首相のミスを修正できない周囲
さらに呆れるのは、そうした首相の単純な判断ミスを周囲が修正できなかったという点です。「総理、今の状況で、この文言を抜いたら大変なことになりますよ」と官僚も閣僚もアドバイスできなかったなら、つまり「王様、あなたは裸です」と誰も言えなかったなら、組織としては致命的な欠陥です。周囲がイエスマンばかりなのか、安倍首相が周囲に相談する気がない、あるいは耳をかさないのか。いずれにしても意思決定者の独断専行がなんらチェックされない組織は早晩大きな失策を犯しがちです。一会社なら倒産で済みますが、政府の大きな失策ははるかに甚大な悪影響を及ぼします。
■いずれにしても安倍内閣は信頼できない
安倍首相は実は、強い確信もって日本の核保有を考えているのかもしれません。しかしこれまでの安保法制をめぐる国会討論でも明らかなように、安倍さんには正面から争点に向き合う姿勢がありません。核保有論も当然、正面から国民に問うはずありません。安倍さんがなし崩し的に、はぐらかしながら核保有論を進めようとするなら、私たちは大きな警戒感を持たねばなりません。また、安倍さんが言葉どおり、核輸送、核保有なんて考えていないとしても、あの状況で軽率にも非核三原則を抜いてしまうという程度の判断力しかない政治家に、とても国政を預けられません。そしてそんな判断ミスを修正できない内閣・政府自体に対しても同様です。もはや安倍さんや政府に対しては不信感を超えて、恐怖感を覚えます。
<裸の安倍さんが取ってはいけない桃の実を取ろうとしているのに、取り巻きは見ているだけ>という滑稽な図は、安倍政権を否定する根拠をわかりやすくイメージさせてくれるのです(誰かこの風刺画、書いてくれませんか)(終)。