このブログに一度でもお越し頂き、ド素人が書く小説を読んで頂いたすべての皆様。


お陰さまで、「株式会社『明日』」を最後まで書き上げることが出来ました!


何をやっても長続きしなかった自分が、約十ヶ月にわたり書き続けることが出来たのは、ひとえに皆様のおかげです!


通勤電車の中を利用して書いていたため、前後の繋がりに不自然なところがあったり、書き方が急に変わったりなど、読みづらい点も多々あったと思います(汗)


それでも見放さずに読んで頂いたことは、本当に感謝の一言に尽きます。


このブログを始めるまで、まともに文章を書いたこともなく、それほど読書家でもありません。


強いて言うなら、妄想が好き……(笑)


形に残すことが容易になった「ブログ」というツールが、僕の背中を押してくれたのかもしれません。


そして何より、読者の方の存在……。


「どうせ誰も読まないだろう……。」と思っていたのに、数え切れないコメントと、たくさんのアクセスをして頂きました。


嬉しくて嬉しくて、苦痛を感じることなく携帯を操作する指が動きました。


名前を出してしまうと優劣をつけてしまっているようなので、あえて明かしませんが、ブログ発足当初からコメントして下さった方、アップするたびにコメントして下さった方、忙しい合間を縫ってまで、折に触れてコメントして下さった方……。


グッピグやなう、それからペタを通して応援して下さった方。


「え?私かな?」と思っている皆さん!


そうです!


皆さんのことですよぉ~!!


今すぐ会ってハグして胴上げしたいくらい感謝しています!(笑)


どうかどうかこれからも、変わらずド素人小説にお付き合い下さい!


しばらくはまた仕事が忙しいのですが、頭の中には二つほど構想があるので、二月くらいまでには再開したいと思っています(*^^*)


作風はガラッと変えるつもりなので、気に入って頂けるか分かりませんが、とにかく全力を尽くしてみます!


決まり次第【予告】するつもりです!


それまでしばしのお別れです(たぶんすぐ書きますし、皆さんのブログ訪問や雑記は続けます)!


改めて、本当にありがとうございました!!


とんじる
「山倉!そっち行ったぞ!裏回れ!」




繁華街の雑居ビルで、大規模な一斉検挙が行われていた。




今回の一件での検挙者数はすでに30を越えているが、それもまだ氷山の一角にすぎない。




長堀の自宅パソコンからは、「顧客・関係者リスト」と思われる大量の暗号化されたファイルが見付かり、「株式会社『明日』」の解析ソフトをもとに解読されたそれらが、彼らの鎮圧と逃亡阻止を加速させている。




タクシー、バス、鉄道といった陸の移動手段はもちろん、空、海にまで至る全ての関連企業に協力を要請し、日本は海に囲まれた要塞と化していた。




同時に、被害者についても保護が相次ぎ、道半ばではあるものの、取り掛かってから数日で大きな成果を挙げている。




「大人しくしろ!おらぁ!」




山倉と柊は、当然の如くこの作戦の中心的な役割を担っている。




今回の事件での二人の行動は、厳密には規範から外れていたものの、「株式会社『明日』」が間に入ることで、知らぬ間に称賛されるべきものへと変わっていた。




「柊!そっちは!?」




「全員確保!全員確保しました!」




まだ現場の警官と「株式会社『明日』」とのわだかまりが消えぬ中、二人には確信にも似た想いがある。




法律という、ある意味では制限された枠の中、しかしだからこそ守られる「正義」を掲げる警察という組織が、凶悪化、複雑化する近代犯罪の中で時に行き詰まることがある。




そんな時、超法規的措置を許された「株式会社『明日』」と、共存、共生する時が来るのではないか。




今はまだ上層部だけに過ぎないその関係が、いつか現場レベルで行われるのではないか。




そんな想いだった。




しかし一方で、封建的な組織の象徴である警察と気紛れな彼らは、これからも真の意味で交わろうとはしないだろう。




存在意義が違う以上、その方がより自然で、適切な在り方なのだから。




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何度耳抜きをしても、昇り続けるエレベーターの中では徒労にすぎない。




薄紫のドレスという着慣れない服装だけでも窮屈なのに、地上から遠ざかる足が更に気持ちを不安定にさせる。




「警部、こんな高いお店で食事したことありますか?」




「それは値段か?それとも八十五階っつぅ無茶苦茶な高さ?」




「両方です。」




「……もちろんない。」




扉が開くと、髪を後ろに撫で付けた「高級店」を絵に描いた様な男が立っていて、数ミリ単位で管理された笑顔を崩さぬまま個室へと案内される。




「こちらになります。ごゆっくりどうぞ。」




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上品でありながら決して嫌みの無い料理は、大いに二人を満足させた。




目の前に置かれたコーヒーは、香りだけで安らぎを与えてくれる。




同じコーヒーを自宅で飲んだとしても、今の豊かな気持ちを味わうことは出来ないだろう。




「警部……一生分の幸せを使いきっている気分です。」




「柊……お前まだ二十代だろ?年寄り染みた発言はやめろ。」




二人のそんなやり取りに、テーブルの反対側から笑い声が響く。




「ハハハ。いや、満足してもらえた様で何よりです。お二人は恩人ですから。」




その言葉に、アルコールで紅く染まった柊の頬が、更に色付く。




「恩人だなんて!やっぱりあの時のミスを思い出すと……。」




「その点に関しては、我々も同じなんだから、もう忘れてくださいよ。」




「ハハ。巌流丘さん、そう言われても柊は気にしますよ。でも大丈夫です。こいつなら、あの日のことを糧に、きちんと今後に活かしますから。」




巌流丘は頷きながら、あの日あったことを思い出す。




あれは奇跡だったのか、それとも運命という中に流れる必然だったのか。




その答えは、彼女にしか分からない。




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巌流丘は、タクシーに乗った山倉と柊を、車体が完全に見えなくなるまで見送った。




次に会うのはいつだろう。




案外に早いかもしれない。




「さ、俺たちも帰るか。」




そう言って連なるタクシーの列に向かって歩き出した巌流丘を、星羅が呼び止める。




「巌流丘さん。……歩きませんか?」




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二人は大通りを避け、平行している裏通りを歩きながら、落ち着くまで保留していた話題を話し始めた。




「なぁ星羅。あの娘は、なぜあんな行動に出たんだろう……。あまりに唐突すぎて、未だによく分からないんだ。」




あのクルーザーでの最後の瞬間、巌流丘が爆弾を起動させるのが早いか、それとも長堀が銃を撃つのが早いか、結末を迎えるための選択肢はその二つだと思われた。




しかし、そのどちらも選ばれることはなく、三つ目の選択肢が新しい結末を運んだ。




「……あの娘、寂しかったんだと思います。」




「寂しい?」




「はい。そうでなければ、私達を殺して長堀と生きようとしたでしょう。でもあの瞬間……、彼女は長堀を刺した。自分の一番大切だと思っていた人から、必要とされていないと気付いたから……。」




「そういや、あの時長堀は随分とひどい言葉を浴びせていたからなぁ……。」




「確かにそれも大きいと思います。でも……。」




そう言って立ち止まった星羅は、スモックに霞んだ夜空をゆっくりと見上げる。




「自分に名前が無いこと……。」




「え?」




「私には、巌流丘さんからもらった新しい名前があるのに、自分は名前を失ったきり、名無しのままだった。最初はそれが長堀からの愛情だと思っていたけれど、私と巌流丘さんを見て、そうでは無かったと気付いてしまった……。」




「……名前が無いから……か。」




「分かりません。あくまで私の考えですから。本当の気持ちは彼女にしか分からない。……もしかしたら、彼女にも分からないのかもしれませんね。」




「あぁ……そうだな。」




その後、二人は黙って歩き続けていたが、巌流丘が痺れを切らしたように話し始める。




「なぁ星羅。」




「何ですか?ちょっ……!モジモジしないで下さい!気持ち悪い!」




「お前、面と向かってよくそんなことを言うなぁ……。まぁ良いや。それより、そろそろ私を「巌流丘さん」と呼ぶのはやめたらどうだ?」




「え?」




「だってよ、……その、お前ももう「巌流丘」じゃないか。」




「……ま、まぁ確かに、戸籍が無いから社内的にではありますが、養子になりましたからね。……でも、父親としても兄としても中途半端だし、今さら呼び方を変えられませんよ……。」




「そういうもんか?」




「そういうもんです。……あ。」




星羅は、ポケットから携帯を取り出し、着信相手を確認して通話ボタンを押す。




「はい。西園寺……、じゃなくて巌流丘です。え?ええ、はい、まだ慣れなくて……。フフフ。」




電話をしながら微笑む星羅を横目で見やり、巌流丘も思わず微笑む。




それに気付いた星羅の目は、「こちらを見るな」と語りつつ、どこか嬉しそうでもある。




「はい。構いませんよ。しばらくはオフなので。じゃあ、七時に駅前ですね。……はい、おやすみなさい。」




携帯をしまうのを待ってから、巌流丘は聞いた。




「誰から?」




「柊さん。今日の私の服を見て気に入ったから、買い物に付き合ってほしいって。……良いですか?」




「ダメなもんか。素晴らしいことじゃないか。で、いつだい?」




「明日。」




「そうか。……楽しみだな。」




「……ええ。そうですね。あんなに辛いことがあったのに、今は『明日』が来るのが待ち遠しい……。」




「私もだ。……これからも、この仕事を通じてたくさんの人に関わるだろう。それは、辛いことや悲しいことをたくさん見ることに他ならない。でも……。」




「ええ。……私はもう大丈夫。巌流丘さんといれば、何も恐くない。……友達も出来たしね。」




「あぁ。そうだな。その通りだ。柑夏さんも、きっと喜んでいるよ。」




「……うん。」




二人を祝福するように、雲の遥か上で星が一つ瞬いた。




その輝きは、どんな闇にも飲み込まれることなく、この先も二人を照らし続ける。




いつまでも、いつまでも。




【完】
「私はね、柑夏さんが亡くなったあの日から、君を守ってきたつもりだった。


柑夏さんに生かされた私がすべきことは、それに尽きると思ったからだ。


でも、いつも気がかりだった。


同じように生きなければならなくなった君は、相変わらず笑わず、怒らず、もちろん泣くことも無い。


果たして自分は正しいことをしているのか……不安だったんだ。


でも、今こうして君を目の前に、少なくとも自分にとってこの10年が、意義のあるものだったと確信している。


……大きくなったな、星羅。


とても綺麗になった。


私は君を生かすことが出来て、とてもとても幸せだよ。」




「巌流丘さん……私……。」




「なぁ星羅。君はどうなんだい?幸せだったか?正直に聞かせてくれないか?」




「私は……、私……。」




その時、西園寺の瞳から涙が溢れ、顔の曲線に沿って流れ落ちる。




一本だったその川は、くしゃくしゃに歪んだ目もとのせいで不規則に分かれ、顎の先でまた一つになる。




「私は……私も幸せだった。どうして良いか分からなかったけど、……とっても幸せだったよ。


巌流丘さんは、こんな私にいっつも優しいし、会社のみんなはお節介だし……。


笑い方が分からなかったけど、私、すごく楽しかった。


幸せな家庭を知らないのに、家族が出来たみたいだった。」




巌流丘は、その言葉を聞いて、優しく微笑む。




「「家族みたい」じゃないぞ。俺たちは家族なんだ。


人生に絶望し、身寄りもなく、生かされることでしか生きることの出来ない惨めな集まりだが、だからこそ強く繋がっているんだ。


君を会社に連れてきた瞬間から、私たちは家族だ。


そうだろ?」




「……うん。」




「もっと早くに伝えるべきだったな。柑夏さんに怒られそうだ。」




「……う゛ん。」




「見たかったなぁ……。君が誰かに恋をしたり、結婚したり……。


そうしたら、子供だって産まれるだろう?きっと君に似て、かわいい子が産まれただろうなぁ。」




「私が……親に?」




「あぁ、そうさ。会社の連中が大挙して見舞いに来て、そりゃ賑やかな出産になるぞ。」




「そんなこと……想像したことも無かった……。もしそうなったら、私にそうしてくれたように、巌流丘さんに名前を付けて欲しかった……。」




「それなら、約束しよう。生まれ変わったら、何がなんでも再会して、名付け親になるよ。」




「ほんと?」




「あぁ、本当だ。約束する。西園寺★星羅に負けないくらい、素敵な名前を考えておくよ。」




「名前の間に、変な記号を付けるのは無しだよ。」




「気に入ってると思ってた。」




西園寺は、涙でボロボロになったまま、まるで子供のように無邪気に笑う。




「ふふふ。気に入るわけ無いでしょ。


でも……ありがとう。新しい名前のおかげで、素晴らしい10年を貰えた。


ねぇ……巌流丘さん。」




「ん?」




「大好きだよ。」




「あぁ……、私もだ。君と過ごした10年……決して忘れないよ。」




「うん。」




二人はしばらくの間見つめ合い、何があっても忘れることが無いように、どこへ行っても離れることが無いように、互いの瞳を脳裏に刻んだ。




「……良いよ。巌流丘さん。考えていることは分かってる。私もそれが良い。躊躇わないで。お願い。」




「あぁ。」




巌流丘の返事を合図に、長堀が再び口を開く。




「……三分だ。別れは済んだようだな。」




おもむろに銃を持った右手を上げると、巌流丘の額に照準を合わせ、撃鉄に親指を乗せる。




「最高の茶番を見せてもらったよ。西園寺のことは俺に任せろ。これからたっぷり可愛がってやるよ。」




「……お前は私を撃つことは出来ない。」




「何?」




巌流丘は、スーツの上着を床に落とすと、シャツのボタンを外し始める。




「貴様……それは……。」




そこには防弾ベストではなく、大量の爆薬が複数のコードと共に仕込まれていた。




「ここに来ると決めた時から、救えなかった場合の策として仕込んでいたんだ。お前に星羅は渡さない。お前たちもろとも、ここで終わりにするんだ。」




「ふんっ!馬鹿な!起爆させる前に頭を撃ち抜いてやる!」




「長堀……、俺がそんなに浅はかだと?この爆弾は、もちろんスイッチでも起動するが、万が一にも備えてある。私の脳波が途切れると、自動的に爆発するように出来ているんだ。」




「ハッタリだっ!」




「そう思うなら撃て。爆発させるという結果さえ同じなら、私にはどちらでも同じことだ。」




「西園寺も巻き込む気か!?」




「……まだ分からんのか?西園寺は、お前などと一緒には生きない。お前と二人になった途端、自ら命を絶つだろう。


だから、それならせめて私が、お前たちもろとも決着をつける。」




「イカれてやがる……。おい!西園寺!何とか言え!奴は勝手に船を吹き飛ばそうとしてるぞ!」




「……彼が言った通りよ。私はあなたとは生きない。彼の決めた通り、ここで一緒に死ぬわ。」




「……くそっ!おい!何とかしろ!」




巌流丘と西園寺の会話に知らぬ間に聞き入っていた女は、唐突に掛けられた言葉に反応出来ない。




「おいっ!お前だ!この役立たずが!」




「え?……あたし?」




「お前以外に誰がいるんだ!早くあいつを何とかしろ!」




「……でも、どうやったら良いか……。」




「殺さずに捕らえるんだ!少しは自分で考えろ!バカが!」




「惨めなやり取りはやめろ。そこからじゃ、私の所に着く頃には爆弾は爆発してる。」




そう言うと、左胸の付近にある金属カバーを開ける。




そこには、無機質な赤で塗られた起爆スイッチが備えられていた。




「さぁ、さよならの時だ。周囲の仲間は撤退したようだ。貴重な三分だったよ。長堀、お前の愚かさに感謝だな。」




「うぅ……、うおぁーーー!!どいつもこいつも俺の邪魔をしやがって!てめぇら皆殺しだぁーーー!!」




長堀が撃鉄を下ろすのに合わせて、巌流丘はもう一度西園寺を見た。




そこには、もう涙はしまい、代わりにとても幸せそうに微笑む西園寺がいた。




それで充分だった。




自分が産まれ落ちた意味も、絶望の中この会社で生きると決めた意味も、彼女に出会った意味も。




全てが満たされ、ここに集まり、新しい世界へと解き放たれる。




************************




山倉と柊は、ヘリコプターの中で、通信機を通じて二人の会話を聞いていた。




しかし、長堀の叫びが響いてすぐ、通信はブツブツという音だけ残してあっけなく途切れる。




泣きじゃくる柊の肩を、山倉は子供をあやすようにリズム良く叩く。




今はどんな言葉も意味を持たない。




代わりに、届くはずの無い言葉を、届くことだけをひたすらに信じて送る。




「(巌流丘さん、西園寺……。そこは神様に一番近い場所だから、どうか、今度こそ幸せになれよ。俺もいつかそこへ行ったら、一杯やろう。


その時まで、……さようなら。)」




夜空に浮かぶ月は、空気を切り裂くヘリコプターの回転など物ともせず、優しい光を海に散りばめる。




それはまるで星の様で、天地の境目を無くし、地球全体が光の帯であったかのような錯覚をもたらす。




そこには人間の卑しさも、憎しみも、愚かさも、何もかもが溶かされて、優しさだけが残されていた。




【続く】