蝶々を捕まえにいこう
そう思った僕は
学校の裏にある門を越えてすぐの原っぱに向かった
その門は決められた子供しか通ってはいけない門だった
ほとんどの子供は正門から出た方に家があり
僕が知る限り2人の女の子だけが裏門の方に家があった
原っぱはそのうちの一人の女の子の家のとなりだった
蝶々を捕まえるとか
恐竜の雲を見るとか
どうでもいいことやあやふやなことをポケットに詰め込んでこっそり門を越えてくる僕に
その女の子はとても優しかった
動き疲れて並んで座るとお互いの両親のことやクラスの出来事や宿題のことなど小さなことをたくさん話し
夕暮れのチャイムが流れると
バイバイ
と言って家に帰った
一緒にいるところを同級生に見られて冷やかされても
その女の子は笑っていた
「あいつお前のこと好きなんじゃないか?」と
好きの意味が今と違う同級生が次々にそう口にしたが
その時の好きは今よりも重く痛かった
重く痛かった理由を知るのはもう少し大人になってからだが
それからは裏の門を越えていくことは少なくなり
蝶々を追いかけることや雲を眺めることもだんだんなくなっていった
周りに投げかけられた好きという言葉を受け入れることができなかった
蝶々や恐竜の雲だけではなく
女の子との空間がとても心地よく
壊れやすい感情の重さ
癒えても跡が残る痛さ
そのことを好きという
その時は知らなかった
その女の子がいない場所で蝶々を追いかけたり恐竜の雲を探したりすることはなく
それはその場所でするものだと思い
他の場所ですることは思いもしなかった
その女の子がどうしているのか知るはずもなく
原っぱの横を通り抜ける時にいつも思い出す記憶
ついこのあいだ通りがかりに見たある原っぱで
あの日の僕と女の子を見たような気がしたがそんなはずはないので
記憶をポケットにしまい込み
うん
とだけ言って通り過ぎた
…と、以上が今日事務員に聞かれた
「マジの初恋って覚えてます?」
という質問に対する答えだ。
懐かしい…いいことばかりじゃなかった好きといういくつかあるタイトルのお話の中でもたぶんずっと忘れない気がする。
そりゃもちろん
「忘れた」
って答えたけど。
そう思った僕は
学校の裏にある門を越えてすぐの原っぱに向かった
その門は決められた子供しか通ってはいけない門だった
ほとんどの子供は正門から出た方に家があり
僕が知る限り2人の女の子だけが裏門の方に家があった
原っぱはそのうちの一人の女の子の家のとなりだった
蝶々を捕まえるとか
恐竜の雲を見るとか
どうでもいいことやあやふやなことをポケットに詰め込んでこっそり門を越えてくる僕に
その女の子はとても優しかった
動き疲れて並んで座るとお互いの両親のことやクラスの出来事や宿題のことなど小さなことをたくさん話し
夕暮れのチャイムが流れると
バイバイ
と言って家に帰った
一緒にいるところを同級生に見られて冷やかされても
その女の子は笑っていた
「あいつお前のこと好きなんじゃないか?」と
好きの意味が今と違う同級生が次々にそう口にしたが
その時の好きは今よりも重く痛かった
重く痛かった理由を知るのはもう少し大人になってからだが
それからは裏の門を越えていくことは少なくなり
蝶々を追いかけることや雲を眺めることもだんだんなくなっていった
周りに投げかけられた好きという言葉を受け入れることができなかった
蝶々や恐竜の雲だけではなく
女の子との空間がとても心地よく
壊れやすい感情の重さ
癒えても跡が残る痛さ
そのことを好きという
その時は知らなかった
その女の子がいない場所で蝶々を追いかけたり恐竜の雲を探したりすることはなく
それはその場所でするものだと思い
他の場所ですることは思いもしなかった
その女の子がどうしているのか知るはずもなく
原っぱの横を通り抜ける時にいつも思い出す記憶
ついこのあいだ通りがかりに見たある原っぱで
あの日の僕と女の子を見たような気がしたがそんなはずはないので
記憶をポケットにしまい込み
うん
とだけ言って通り過ぎた
…と、以上が今日事務員に聞かれた
「マジの初恋って覚えてます?」
という質問に対する答えだ。
懐かしい…いいことばかりじゃなかった好きといういくつかあるタイトルのお話の中でもたぶんずっと忘れない気がする。
そりゃもちろん
「忘れた」
って答えたけど。