*2015年10月22日*0歳3ヶ月*


救急車の出発と同時に、M先生が電話をする。


『今、病院を出ました。15時30分頃には着くと思います。』


おそらく搬送先のこども病院の先生に掛けたのだろう。


この時15時頃だったので、30分くらいかかるらしいことがわかった。





私は初めて乗る救急車の中を見渡していた。




車内にある色々な医療器具を見ながら、りーたんの手を握る。






しばらく乗っていると、救急車の揺れが心地良いのか、りーたんが眠り始めた。


M先生はりーたんの意識が朦朧としているのかと心配して、脈や呼吸を確認している。







その光景を見ていたら、急に不安が押し寄せてくる。



救急車の揺れに合わせて、涙がこぼれてしまう。







いやいや、大丈夫、大丈夫。


泣いてる場合じゃないぞ、母ちゃん。




自分を鼓舞してそっと涙を拭う。







救急車に乗っていた30分間は、とてもとても長い時間だった。




車外ではサイレンが鳴り続いているが、車内には妙な静けさがあった。





後部座席の窓はカーテンで塞がれているが、フロントガラスから少しだけ外の様子が見える。




車や自転車、歩行者がたくさんいる。



『どいてください。どいてください。
お願いだから、道を空けてください。』


心の中で叫ぶ。






救急車に乗って初めてわかったが、案外、みんな救急車が来てもすぐに避けてくれない。


車はもちろん端に寄ってくれるが、歩行者と自転車は我が物顔で道を塞いでいることが多々あった。




『どいてよ、どいてよ。急いでるんだよ。』



私はまた涙が出そうになり、必死に堪える。







予定通り15時30分頃に、こども病院に到着し、りーたんはすぐに救急外来へと運ばれて行く。