より抜粋



「自然が相手」に重きをおくか、時代に沿った安全管理重視か――。


小鹿野町の二子山(1166メートル)で起きた岩場墜落事故で重傷を負った男性が、
町と小鹿野クライミング協会に慰謝料などの支払いを求めた訴訟は、
クライミングを巡る「自己責任の原則」が最大の争点となっている。

原告、被告双方から3通ずつ出された意見書は、
最大の争点に関わる安全性を巡る主張が真っ向から対立している。




岩場を管理すると宣言した団体が整備した場所で起きた事故。
整備した側には一定の責任はある。
すべてが利用サイドの自己責任ですむものではない
」。

原告男性のためにまとめた意見書にそうつづったのは、
アイスクライミング界をリードし、スポーツクライミングルート開拓も手掛けた、
東京都山岳連盟会長の廣川健太郎さん(64)だ。

一方、「クライミング文化にとって危機的状況になる」と考え、
被告のクライミング協会側の意見書をまとめたと話したのは、
山岳ライターで元クライミングジャーナル編集長の菊地敏之さん(63)。

意見書では「自然を相手にしたスポーツまたは野外活動をする場合、
イベントなどと違い個人的な活動では、大前提としなければならないのは
安全管理責任はすべてその行為者本人にあるということ。
(その前提が守られなくなると)自然の中で行われる活動、
スポーツは成り立たなくなる
」と警鐘を鳴らす。


事故は、2022年9月に二子山西岳で岩場のボルトが外れて、
クライミング中の男性(当時59歳)が落下して起きた。
23年6月に町と協会を相手取り、さいたま地裁川越支部に起こした訴訟は、
同年8月の第1回口頭弁論以降、非公開の弁論準備手続きが続く。
次回は4月17日に4回目の同手続きが行われる予定だ。