前橋市などは人工知能(AI)ドローン
官民のビッグデータを活用して
空き家を正確に判定するノウハウを開発する。

従来の調査員を使う方法に比べて
低コストで迅速に実態を把握できるようにする。

人口減少などで空き家が増え、
その対策は各自治体にとって重要な課題になっているが、
実態調査には費用や時間がかかる。

開発した方法はほかの地域で利用してもらうことを目指す。



今回のプロジェクトは前橋市や東京大学、
帝国データバンク、三菱総合研究所が2017年に設立した
「超スマート自治体研究協議会」が主体となって実施する。

前橋市などが目指すのは、
AIによる画像解析など複数の手法を組み合わせることで、
人手に頼ることなく建物単位で空き家を判定するノウハウの確立だ。

このため今回、
建物の外観を撮影した画像をAIで分析する実証実験を実施。

この画像解析と、建物の熱をドローンで感知した結果や、
市役所と民間企業が持つそれぞれのビッグデータを組み合わせる。

このノウハウの土台となるのが、
協議会で以前から進めてきた官民の持つビッグデータの活用だ。

住民基本台帳や固定資産税台帳、
水道利用量など市役所のデータと、
民間が持つ地図などのデータを統合し、
空き家を推定する手法を構築してきた。

この官民データの統合で
既に約8割の確度で空き家を推定することに成功している。

今回、建物外観の画像分析などを加えることで、
さらに確度を高める。

この判定手法を確立できれば
空き家の実態を把握するコストの減少が期待される。



現在の実態調査は、自治体が調査会社などに委託し、
人が現地へ赴いて目視で確認する方法が主流。

以前、前橋市が実施した際には1千万円以上かかったが、
新たなノウハウだと実態把握には400万円程度で済むとみている。

前橋市は確立したノウハウを22年には市役所で活用するほか、
他の自治体でも利用してもらう考え。

また、23年以降には空き家が市内に分布する様子を
デジタル空間にジオラマ(情景模型)にしてわかりやすく表現し、
関係者が利用しやすくする計画も立てている。

人口減を背景に全国で空き家は増え、
その対策に悩む自治体は増えている。

総務省によると全国の空き家率は18年に13.6%と過去最高になったが、
前橋市の割合は15.9%とさらに高い。

ただ、実態を正確・迅速に把握できなければ適切な措置を講じにくい。

前橋市が目指すのは、
大きな費用をかけずに正確なデータを収集することで、
エビデンス(証拠)に基づく政策立案(EBPM)につなげることだ。

空き家の問題は、倒壊しそうな家屋への対処だけでなく、
再利用を促すことで中心街の空洞化を防ぐといった
様々な政策テーマと深く結びついている。