葬儀を行うのは3日後


家の空気は変わらず重い

少しの事にも過敏に反応してしまう

 

娘の葬儀は特に大きな斎場でしない

ごく親近者だけの葬儀

必要な物を揃える準備は簡単に終わってしまう

 

 

本当に親近者のみの法要

叔父や叔母、会社、友人誰ひとりにも

娘の訃報は伝えられていない


 家族葬でも

本来の葬儀とは少し違っている


 

それは娘の死亡日付と共に「不詳」の文字

昨日今日の話でもない

そして葬儀が終われば

直ぐに四十九日の法要が迫っている位

葬儀は遅くなってしまっているから

 

 

敢えてその事実を周囲に知られることを

夫と母親は極度に嫌がっていた

周囲の視線、興味本位な憶測や想像

噂によって心無い言葉を耳にする事は

容易に想像できる話

今耐えられる強さは持ち合わせていない

 

 

まだ娘の死に受入れられないのだから

当たり前なのかもしれない


言葉って難しい

何気ない一言でも受け取った側は

その時の感情で言葉は鋭利な刃物になり

傷つけ、その傷は心を抉られる

 

日常でも起こる話

環境や価値観の違い、感情によって

受け取り方はそれぞれ違うから


言葉を発した側は覚えていなくても

受け取った側は忘れない

 

感情のある人間は難しい 



息子は姉の所で過ごしている

同じ年齢の甥っ子もそこには居て

姉が心配で連れていってくれた

 

 

そんな中母親から

ふと言われた言葉

大学に連絡しなくていいの?


 

大切な書類は夫が娘の家に

忘れたまま

 

時間が経過しているのにまだ夫は

取りには行っていない

 

夫に取り行くように促すも

「ひとりじゃいけない」

「運転できない」そう言うだけ


またあの部屋へ行くの気が重い

整理はしても部屋にはまだ娘の荷物が

残っている

娘が何ヵ月も「死」と向き合った場所

そして最期を迎えた場所は

私達が眼を背けたい場所


娘の最期の顔を思い出す場所

空気が重く哀しみでしかない場所

気持ちが落ち着いたら行こう
のんびり片付けよう、後でやろう

周囲に迷惑を掛けてしまっている以上

そんな事は言えない立場


仕方なく「私がいきます」


そう伝えてると

夫は突然一緒に行くと言い出す


娘のことだけでも現実逃避したいのに

私の中では更に現実逃避したい夫の発言


ひとりでも平気

何を言っても一緒に行くと

聞く耳持たない


「ならひとりで行けば良いのに」

そう思ってもその時は言えなかった



断る理由がなく

渋々、紙切れ一枚だけの夫婦が

何年ぶりかに2人きりの時間が

訪れた






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