故人が眠る場所は様々

特に昨今は

お墓、永代供養、樹木葬、散骨

色々選べる時代。



戸籍上だけの夫婦はお墓など作る気はない

離婚出来なくても夫の墓地に入りたくない

父親の眠る墓地にも入りたくない



実は私は樹木葬と決めていた。

春に咲き誇る桜の下で

ひとり安らかに永眠したい。

誰にも話していない。

ただそう決めていた。



娘が永眠するまでは




状況が変わった今

そんな話が出来るはずもない




何も考えたくない

ただひたすら我が子の傍にいたい。

ただそれだけ


なのに



全ての判断を委ねられた私は

現実に向き合わなければ

いけない立場に立ってしまった




娘の意思だったとしても

連れて行ったのは夫


娘と暮らしていたアパートには

カメラを設置していた。

娘を監視する為ではなく

夫を警戒してつけたカメラ

そのカメラを観る事は少なかった。

言うならはドラレコみたいな物



夫は娘をアパートに迎えに来た時

カメラを見つけた夫は

カメラに向かって

不敵な笑みを浮かべ「ざまぁみろ」

そう言ってカメラの電源を抜いた人



そんな夫が目の前にいる

この人がいなければ子供は誕生していない。

感謝しているのはそこだけ

夫には嫌悪、憎悪しかない他人だ

夫婦には「情」があると聞くが

もうそんな物は何処にもない。



私にとって夫は

「出来れば関わりたくない人」



夫は2人だけで話すと

自分の都合の良い解釈しかしない。

決めつけでなくもうずっとそんな人

たとえ憔悴していたとしても

人間の根底は簡単には

変わらない事を知っている。



叶うならば話などしたくなかった。

それでも現実と向き合うしかない。




私は敢えて親族の前で夫に尋ねた。

意見の対立を避けるために



何処に娘を納骨するのかを。



そして選択肢を考えていく


選択を絞っていくと

姑の眠る墓地

私の父親の眠る墓地

2つの選択肢が残る




夫の家と私の家は宗派が違う

宗派が違えば考え方やり方も違う

後からやっぱり変えたい。

それは簡単にはいかない事

なにより

娘がゆっくり出来ないこと

慎重に考えて欲しいそう伝えた



後から駄々を捏ねられたくない

そんな気持ちから夫の判断に委ねた。



少し考えさせて欲しい。




そう言われ期限を決めて答えを待つ



その間もする事は山積みだった



夫に預けたはずの書類が無い事に

気つき更に夫に尋ねる。


娘のアパートに忘れたらしい


大学の書類

奨学金の書類

娘の賃貸契約会社の書類

銀行やクレジットカード

全てアパートに置き去り。



全てが前に進めない。



もううんざりした。

疲労困憊していた私に夫は更に

追い討ちをかける



それは生命保険

自死は生命保険が出ない。

それ以前の問題で

夫は娘の生命保険を勝手に解約していた。



やっぱり夫らしいそう思った

親族は信じられないような顔を

夫に向けていた



息子は黙ったまま

息子はこの重い空気を

何を思い何を考えていたんだろう



そんな夫の姿を見ていると

ふと私の悪魔が囁いた


何故夫は平然と生きているの

どうして夫じゃなくて娘なの

なぜ娘が

こんな目に合ってしまったの

夫に対しての他罰感



今まで蓄積していた我慢が限界になり

私の感情が一気に溢れた

そして夫を罵倒し罵りそうになる



それでも一瞬我に戻る



ここには子供達がいる。

我が子が悲しむ。

母親が自分の父親を罵倒する姿を

見たい子供がいるだろうか?



そんな気持ちが私にブレーキをかける



罵倒し罵りたい気持ちの

行き場所は失っていた。



もうひとりになりたかった。



また私の悪魔が囁く

私も娘と同じになれば娘に会える

私には娘が待っている。

待っていてくれるはず

後追いを悪魔が囁き続ける

「死」に対して恐怖が消えた瞬間だった。



複雑な気持ちが頂点に達した瞬間

私は気を失った

目覚めた時の光景は

白い天井が広がっていた







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