病院を出た私は実家へ向かう

再び話し合いをするために

実家に戻るとそこは閑散としていた

現実を受入れない姉は
夫を問いを続けていたのだろう
そして
普段冷静な姉は取り乱したりしない人
表情が疲れていて呆然としていた

母親は高齢なのにも関わらず
娘を発見したひとり

その光景に強い衝撃を受けてしまっていて
強いストレスやフラッシュバックが
心のコントロールを失っているようにみえる


母親は
自分が先に荼毘に伏す
そう考えていただろう
娘はおろか
飛び越えて孫が先に逝ってしまう
そんな事実を想像したことが
あるはずもない。
あっては成らない現実
経験しなくていい現実


ずっと父親の仏壇の前に座ったまま
動かない

そして夫は
部屋に籠ったまま


それぞれの感情が渦巻いていた


それでも無駄に時は過ぎていく
何も進まないままに

今出来ること
それは遺影を作ることだけだった。

仕方なく夫に声を掛け
遺影の話をする

そして憔悴した夫には申し訳ないけど
追加で「お金」の問題を指摘した。

夫は気まずそうに

「お金がありません」

母親と姉はうんざりしている。

娘に出来ることはもう少ない。

私は夫の逆鱗に触れないように話す

全て私が支払いたい。と。

夫は項垂れて頷くだけ。

もともと判断力がない夫は
更に判断力が弱っている


そして夫は娘の写真を一枚も
持っていなかった。
夫は娘を大切にしてたの?
疑問が湧いたが聞かなかった

娘の写真をたくさん持っていたのは
姉の方だった。

それは普段の写真から
成人式の写真まで。
動画もたくさんある

動画には娘が笑っている

お骨になっても娘が戻ってくる
そんな気がしてる。


その時初めて私は娘の晴れ姿を
観ることが出来た



そこには私の知らない娘の風景

姉は写真のひとりひとつの
思い出を話し出す
懐かしそうに楽しそうに話す姉は
まだ娘のいない世界に実感がない
そんな姉に申し訳なさしかなかった


その写真全てを私に託し
「この中で一番好きな写真を選びなさい」
姉はそういった

娘の最後の写真
遺影は私に託された


今は個々にひとりになった方がいい
ひとりになりたい
皆がそう考えていた。


後追い。そんな言葉が浮かんだ。
ただ今はみなそんな気持ちに
なれない空気

夫が答えを出すまで2日あった。

そして

全員が解散した。


息子を送り
私は何故か会社に向かっていた。





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