東日本大震災その時私は
働いている。

地震に馴れていた。
他県から来た人が多い職場の人達は
直ぐ外に出る。
地震馴れしているのは私だけじゃない。
隣に座っている同僚もそうだった。

2人で何であんなに慌てているんだろう?
そう思って笑っていた。

外に出た職場の人達は私達を
手招きする。
大袈裟だねぇ。なんて話していたら
照明が落ちてきた。
パソコンが次々倒れていく。

流石にまずいと思い私達2人は
外に出た。外に出た次の瞬間
入口のガラスドアが割れた。

外に出て始めて分かった。
立っていられない自分

道路が波のようにうねる。
道路にヒビが入る。
全てが揺れている。

訳が分からなかった。
誰もが状況を把握出来てない。

職場に待機させられている間
息子に連絡をする。息子は無事だ。
母親にも電話する。家は無事だ。
姉から電話が鳴る。娘は無事だ。
娘は姉が迎えに行ってくれる事になった。


ライフラインが止まった道は混乱していた。
そんな中でも私は息子の高校へ迎えに行く。

何時もより何時間もかけて帰路に着く。

周囲は夜で電気も付かない。
そんな中懐中電灯を持ち家に入る。
家は散乱していた。

食器棚のお皿は全て割れていた。
家電は倒れていた。

夫は帰って来ない。
知る良しもない。

子供達と3人で朝を待った。

辛うじて水が出る。
偶然にもカセットコンロがあった。

姉の家もそこまで被害は無かったが

何故か全員実家に集まる。
それぞれが別の場所にいた。
その時の状況を話している。

会社は取り敢えず1週間の休みの指示が出た


子供達も甥っ子達と
4人で仲良く過ごしている。



それを尻目に私は部屋を片付ける。
片付けながら
あー娘の卒業式の服まだ買ってないな
お店は開くのか?どうしようかな。
卒業式やるのかな?
そんな事を考えていた。


すると異色な生物が立っていた。夫だ。
私はこの頃もう夫をひとりの人間として
見ていなかった。

夫は借金苦でお気に入りの車を手放し
舅に頭を下げ実家の車を借りていた。
夫の洋服など私は買わない。
生活費を貰っていないので当たり前だ。
お金のない
夫は何時も似たような汚い服装だ。
髪もボサボサ
本当に汚いおじさんと言う言葉が
良く似合っていた。
それでも浮気相手とは続いていた。
こんな人の何処が良いのだろう?
もう夫に興味もなく人間とも認識してない私は浮気相手の気持ちが全く理解出来ない。


浮気相手もそれなりの歳になっている。
周りが結婚していてもおかしくない年頃。
私はこのまま夫と付き合い続けて
婚期を逃してしまえば良い
そんな卑劣な事ばかり考える嫌な女だ。


異色な生物は私に話し掛ける。
大丈夫か?

はぁ?この状況ですけど何か?
そう思っても無言。

異色な生物は私に言う。
また仕事に戻らなきゃいけない。
夫の仕事は大変な事になっていた。
そう。それだけ返事をし夫は去る。


何が大丈夫と聞きたかったのだろう。
今でも分からない。

あの頃の私は仮面夫婦すら
演じる気持ちなどなかった。


私達の家は若干傾いていた。
外から見たら分からないが
傾いている。
地震保険などない時期だった。
火災保険は適用されない。

仮面夫婦にはお似合いの家だ。
私は修理する気は無く今も直してない。



そんな中、娘の卒業式が行われた。
洋服は揃えられる状態じゃなかった。
息子の友人からジャケットやら
スカートを借りてどうにか間に合わせた。
それらしい服装、髪型に
それでも娘は満足してくれた。
学校の体育館のガラスは割れていた。
教室も荒れていた。
卒業式は何時もとは異なる小さな小さな
卒業式となる。それでも
卒業式を出来た事に感謝した。

思えば
娘は永遠に小学生のまま時が止まってしまえば良かったのかもしれない。







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