娘も無事に幼稚園に入園し
落ち着き始めた。

息子もそれなりに頑張っている。
マイペースは変わらない。

夫は変わらず子供のままだ。

私も世間を知った様に見せている子供。

ままごと夫婦生活は
暗闇のトンネルに佇んだまま。
それでも平和だ。


そんな日常は長く続かない。

それを壊したのは私だ。


娘が幼稚園に行ってる短時間。
バイト先で更にバイトしないか?と
持ちかけられていた。
出来る範囲で良いと。

幼稚園までのお迎えの時間は短い。

私は生活の為に受け入れた。
今後の生活をより安定させたかったから。
仕事をしていると
何も考えなくて済む。
ひとりで居ると暗い気持ちになるから。

その提案を受け入れたのが
間違いの始まりだ。

昼間子供が居ない時間働いて
子供が帰って来たら家事と育児。
夫が帰って来たらまた働く。
そんな生活をしていた。

現実を受け入れつつ
受け入れない何処か現実逃避したい自分がいた。誰にも頼れず話せず
母親としか見られていない私の視野は狭い。
私をひとりの人間として見て欲しかった。


そんな時私は恋をした。


夫しか知らない私はこの感情が何なのか
分からなかった。
ただドキドキした。
胸が高鳴った。
その気持ちに気付くのにかなりの時間が掛かった。

私はその時30歳目前だった。
家庭や育児に終われていた私は
夫にときめきなどない。
ある意味感情が薄れていた。
子供や夫、お金の事ばかり考えていて
自分の事なんて考えた事も無かった。
既婚者が恋をするなんて考えた事もない。


そんな私はある日恋をしたことを
自覚し認めてしまった。

それを実行した訳じゃない。
ただひたすら隠していた。
それでも相手の事を考えるだけで
ドキドキし幸せだった。
仕事に行くのも楽しくなった。


気持ちが悪いが
溢れる思いは止まらない。
どうすことも出来ず、気持ちをノートに
書き綴った事が一度だけある。
そのページは燃やした。

誰にも知られる筈もなかった。


それなのに夫に知られてしまった。

仕事から帰って来た時
夫は珍しく起きていた。
私を嘲笑うかのような視線を向ける。

夫は私に話を切り出す。
好きな人がいるんだって?

ゾッとした。身体中から冷や汗が出た。
私は話を反らした。

あくまで私のただの片思いだ。
今の言葉を使うと推しに過ぎない。

私は否定し続ける。

するとある紙を私に見せた。

それは私が思いを綴ったノート。
燃やしたノートの次のページだった。

その紙には鉛筆で黒く染まった紙。
その黒く染まった紙の上にほんのり
私の字が浮かび上がっている。


今思うと夫の粘着性が気味悪い。
夫の嫌な部分に蓋をして来たけど
全ての行動が気持ち悪い。
私は何故この人を好きになったのだろう。
何故付き合ってしまったのか?
考えても考えても今でも分からない。
夫の良さが全然思い付かない。



夫は何も言わなかったが
私の異変に気付いていた。
私は夫との夜の夫婦生活を拒み始めていた。
それでも断りきれない時は我慢した。
本当に疲れていただけだった。


夫は私に静かに言う。
誰かのお古はもういらない。と。

更に
夫のは趣味で週末居ない。
その理由はその後毎回飲み明かしてるから。
私はそれを咎めた事もない。
夫はそれを不満に思っていた。
どうして連絡してこなかったんだと。
私を責めた。


私は混乱した。
ただ、話をしても興奮している夫には
何を言っても伝わらない。
誤解だといっても信じてもらえない。


夫は続けた。離婚はしない。
一生働き続けろ。

お前が浮気をしたから俺もした。
お互い様だろ?


やられたからやり返す。
それは違う。
そんな幼稚な考えしか浮かばない夫。

それはただの言い訳で
自分の浮気の正当化を主張した。


お互いに悪い所があったかとか
話し合いの時間を設けるとか
そんな気持ちなど夫は最初から持ち合わせていなかった。


夫は常々私に厳しく言っていた。
常にキレイでいろ。
太るなんてあり得ない。
俺の嫁なんだから何処にいても
恥ずかしい姿になるなと。


私は夫の自己満足の為の
見た目の良いお飾り嫁だった。
それ以外は期待されていなかった。

愛情なんて最初から無かった。
家族になろうなんて
最初から思われていなかったんだ。











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