スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』製作発表記者会見 | 〽いとしと書いて藤の花 気まぐれお稽古日記

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右近さんの二回目かの「歌舞伎夜話」で、今度はルフィがやりたいと言われていたのが、忘れられないでおりました真顔

それが今回実現される訳ですから、とても嬉しいですニコニコキラキラ

しかしワンピースのチケット発売されましたが、争奪戦で思うようにチケットが買えないことが悩みですえー!?

 

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之助が意気込みを披露~スーパー歌舞伎II

『ワンピース』製作発表記者会見

 新橋演舞場1011月公演は、スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』の再演が決定しました。2015年に新橋演舞場で初演され大きな反響と共に話題を呼んだ作品が、装いも新たに再び新橋演舞場の舞台に帰ってきます。725日(火)に都内にて製作発表記者会見が行われ、前回に引き続き脚本・演出を手掛ける横内謙介と主演の市川猿之助が再演に向けての意気込みを語りました。

【横内謙介(脚本・演出)】
 2年前に会見をした時は、これは歌舞伎界と漫画界を敵に廻してしまう恐ろしい試みであって、何故この船の乗ってしまったのだろうと凄く不安な気持ちでいました。その時には台本の第一稿ができてはいましたが、猿之助さんがお忙しく、そんなに深く打ち合わせができているわけでもなく、更には「原作を読んでいません!」というとても恐ろしい発言をされたりして、とてもハラハラしたのを思い出します。

 実は前回新橋演舞場での2ヶ月間の公演を終えた後に、次の大阪公演に向けての練り直しをしました。そこの練り直しが凄く大きくて、大阪・博多公演はかなり別のものになったといわれるほどの進化をしましたその間に「ワンピース」に対する理解も凄く深まり、やるべきことはこれだったとやりながら気付いたところもいっぱいありました。そして、これをもう一回、最初に観てくださった方々に観ていただかなくてはいけないという思いがありました。もちろんまだ進化させますけれども、今回それが実現するということで、とても嬉しく思います。少しでも多くの方に観ていただきたいと思います。

 台本も尾田(栄一郎)先生に読んでいただき、やり取りを何度かしましたが、我々の、特に私ですが、「ワンピース」への理解不足ということがありました。歌舞伎にするのだからその通りにはいかないよと思っていると、ジャンプ編集部からこのキャラクターはこのようには言わないといったチェックが入ったりしました。
 これはちょっとした異文化交流だったなと思います。紆余曲折ありまして初日を迎えてとてもうれしかったのは、歌舞伎のお客様にも漫画のお客様にもこの作品を大きな心で受け入れてくださったことです。それから想像の斜め上を行っているという評判がとても嬉しかったです。これは我々にとって、とても良い力になる言葉をいただいたなと思いました。
 また、思った以上に歌舞伎と「ワンピース」というものの相性の良さ、親和性が凄いというお褒めの言葉をいただきました。尾田先生の描いている「ワンピース」の世界観がどこかで日本文化の源流みたいなものをお互いに分かち合って、今ここで再会しているだけなのかもしれないとも思います。コミックというか漫画というものはどちらかというと輸入文化のような印象もありますが、そうではなく日本の中で生まれてきた文化の発展系というのでしょう。それから文化の源流の近くにいながら新たなものを受け入れていく歌舞伎と、実は出逢うべくして出逢った世界に誇るべき日本文化なのではないかと感じました。

 舞台化をするにあたり、俳優さん達がとても大事だなと思いました。歌舞伎の俳優さんの力というのは、もともとある原作をコピーするのではなく、一度解体して別のものにしてもう一度提示する、猿之助さんも、芝居になった時に少年であったり超能力者であったり、何か形だけコスプレをするのではなく、動くこと、芝居をすることで表現する力があるのだと思います。
 それがベテランの俳優だけではなく若手の方達も、役に名前を付けてキャラクターを示された瞬間に、並びの手下1、手下2、ではないものになっていて、自分なりのストーリーみたいなものがしっかりと組みたてられている。歌舞伎は形といいますが、やはり気持ちが出てくる装置みたいなものが上手く作動した時に、この人たちは輝くのだなということを体験しました。

 ひとつの役が俳優を得て、舞台で命を吹き込んでくれた瞬間に漫画の人物がその場にいるという感覚。漫画に舞台がすり寄っているのではなく、漫画を俳優たちが噛み砕いていって具現化していく姿を見て、その力強さみたいなものを凄く感じました。これから他にアニメや漫画を舞台化するのであれば、その俳優達へのメッセージにもなるのではないでしょうか。

【市川猿之助】
 歌舞伎というものは、現在名作とうたわれているものも初演からその形があったわけではありません。何回も繰り返し上演されて、あらゆる俳優の工夫を経て、そして究極系の形が出てきた。やはり再演を重ねるということは必要なことで、素晴らしい作品を生み出すためには必要なことだと思います。
 おじの(市川)猿翁からも常々「新作というのは一回作ることは割と簡単にできる。再演を重ねことが、新作を作ることよりも実は難しい」ということを言われていたので、ものを創るにあたって興味本位の一回限りの話題、そういう作品作りは避け、なるべく後世に残るようなものを創りたいということで創ってまいりましたが、この『ワンピース』が今回、再演されるということがすべての答えだと思っております。

 この間尾田先生とお話させていただいた時に、「君は何をやってもルフィにしか見えない、だからもう大丈夫だ」という言葉をいただきました。これは最初にお芝居を創る時はディテールにこだわります。歌舞伎でもそうです、先輩に習った時は細部にこだわってやります。しかし、それだけでは駄目です。その次の発展段階では自由にやるということですね。これもよく先輩方がおっしゃいます「役の心さえちゃんと掴んでいれば何をやったっていいんだよ」という究極の教えです。この言葉をいただいたような気がします。
 今回の再演に当たり、皆、役が本当に自分のものになっていると思うんです。その心をしっかりと掴んだうえで自由に羽ばたいてみたいと思います。
 演出の方も、大阪と博多でもやったことのないことを東京でお見せしようと思っております。一回目を観てくださった方々の期待を良い意味で裏切るというのと、初めて観る方にも感動していただける作品を皆で創っていきたいと思います。


 若手を抜擢した麦わらの挑戦も上演します。尾上右近さんは僕と主役を比べられるでしょうし、彼の方が年齢が若いのですけれども、年齢が若ければ歌舞伎の役の上で若いわけではなのですね。歳を重ねれば重ねるほど若くなるという歌舞伎の術、演技を彼らがどう学んでくれるかというところです。前回の公演までは、(中村)隼人さん、(坂東)巳之助さん、(坂東)新悟さん達はこれまである意味、主役である私に助けられていた部分があると思うんです。
 しかし主役が僕ではなく若手になった時に、今度は彼らが100%以上の実力を出さなければ芝居は面白くない、いつも先輩とばかり芝居をしていたら勉強になりません。若手だけの芝居だからこそ、役同志のカバー力というものが必要になります。そのことによって彼らが何かを掴んでくれればいいと思い、泣く泣くWキャストになりました(笑)。
 そして、自分が一番良い状態の時に、次の担い手に渡すということが、歌舞伎が長く続く使命だと思っています。僕がシャンクスに回った時に、彼、もしくはそれを支える若手の彼らがどうなるのかが楽しみです。


 前回2ヶ月やってみて、「ワンピース」の世界に「ワンピース」を知らない方々が入ってこられるのかということを心配していました。例えば、能力の実等をいちいち説明するようなことを最初の頃はやっていましたが、上演を重ねていくと、そういうところが全部いらないなという感じがしました。いきなり手が伸びても皆さん不思議に思わないですね。非常に世界観に溶け込んでいるので、皆、すんなり入ってくる。だから、余計な説明がどんどんいらなくなってくる。もちろん手を伸ばすことで皆さんが喜んでくださるのですけれども、それが非常に重要な部分を占めているかというとそうでもないのです。尾田先生が描いていらっしゃる人間の変わらないもの、そういうドラマの方が皆さん反応してくださいます。
 今回は、今まで説明に使っていた時間をドラマの時間に使うということで、より普遍的なものをお見せできると思います。


 新しい演出としては、最新技術を使ったことをやってみたいと思います。多分、映像を使った演出になると思います。あと上演時間をなるべく短く、より濃密にしようと思っています。
 今回、再演ということになりますが、バージョンアップということではなくて、全く新しい『ワンピース』という気持ちで創っております。一度観た方は本当にこれが同じ作品なのかという驚きを持って、初めて観る方は『ワンピース』がこんな世界だったのかという驚きを感じていただきたいと思います。これから初日に向かって、新たな進化に関する情報が飛び出るか、飛び出ないか、その辺も楽しみにして、是非、期待していただきたいと思います。