「この人850万円超えているけど、このまま出しちゃっていい?」

社会保険事務所の職員はたずねました。私がその意味を十分理解していると思っていたのでしょう。

「実際の所得ですもんね。いいです。」

特にこの件で、先生から注意事項を聞かされていないし、大丈夫。そう考えて答えました。


事務所に帰ってこの話をすると、先生の顔色が一瞬で変わりました

「どうして連絡してくれなかったの。加給年金がつかなくなるじゃない!起こる

月にして2万5千円ほどの年金が、つかなくなるというのです。加給年金がつかないということは、これに引き続く振替加算(奥様65歳から奥様自身の年金に加算される年金。加給年金よりも額は少ない)もなくなることになり、お客様・その奥様にとっては重大な損失出費です。


奥様の所得が高いと加給年金がつかなくなることは知っていました。が、私は誤った思い込みをしていました。加給年金がつかなくなるのは一時的なもので、奥様の給料が下がり、書類を再び提出すればつくようになるものだ、と。


加給年金や遺族年金の中高齢寡婦加算は、原則その時点での所得を判断材料とします。

その時点で、おおむね5年以内に850万円未満になることが客観的に証明できる場合、例外が認められます。


このお客様の場合、奥様は会社員として高額な給料を受けていましたが、この額が5年以上続かないことは、この時わかっていました。このような場合、奥様の会社の就業規則の写しなどで客観的な証明をつければよかったのです。60歳で定年退職するため、55歳を過ぎた奥様の給料は、あと5年もこの状態が続くのではない、という証明です。


「まだ間に合うわ!社会保険事務所に電話してみて」。

先生の指示で社会保険事務所の担当者と連絡をとりました。

「まだ大丈夫だよ」。職員の声が、神様天使のような慈愛のこもった声に聞こえます。

「よかった~!どうもありがとうございます!!」なんとか手続きの保留に間に合いました。


こうして後日、あらためて奥様の会社就業規則写しを添えて提出となり、お客様の年金に、無事加給年金がつくようになったのでした。


思い出しても、あ~こわいあせ。(つづく)