グッバイマイライフ | 競 馬 伝

競 馬 伝

競馬も人生もおもしろい!

おもしろく生きよう~!!

そんな競馬と人生について語ります。

「余命半年」

 

もしあなたがこの宣告を

 

受けたとしたら

 

残りの時間を

 

あなたならどう生きますか?

 

ここにその宣告を受けた男がいた、、

 

男の職業は医師である

 

片田舎だが病院と老人ホームを経営し

 

ここまで順風満帆に生きてきた

 

少し体の異変に気付いた医師は

 

胸部のレントゲンを撮ってみた

 

すると肺の部分が真っ白に写っていた

 

末期癌である

 

残り少ない寿命を悟った医師は

 

妻に打ち明けたのである

 

「あと数週間しか生きれないだろう」

 

治療に専念することと

 

これからのことを相談した

 

その2日後に病院と老人ホームは

 

他の人に譲ったのである

 

男は東京の病院に入院し

 

治療に専念する

 

投薬治療によって白い影は

 

半分になっていた

 

しかし

 

医師である男には

 

余命が延ばされただけとわかっている

 

「残りの時間をどうしよう、、」

 

「やりたいことがある、、、」

 

男は自分の人生を振り返えり考えていた

 

男には小さい頃からの夢があったのである

 

それは馬主になって

 

広い競馬場を走りいく

 

愛馬を眺めたいという夢だった

 

何度も何度もその夢を語る、、

 

家族はその男の我がままを受け入れた、、

 

しばらくして

 

春にデビューする予定のある牝馬を

 

買い求めることができた

 

男はその牝馬に名前をつけた

 

「グッバイマイライフ」

 

それを聞いて

 

妻である茂子さんが

 

「彼の人生を全て預けたような名前だ」

 

と感じた

 

おそらく男はこの牝馬である

 

「グッバイマイライフ」に

 

自分の人生を託したのであろう

 

初勝利は4戦目だった

 

騎手は武幸四郎

 

武豊の弟である

 

男の夢が叶った、、

 

同時に元気を取り戻したようであった

 

しかしその後の

 

「グッバイマイライフ」号は

 

5回出走すれど勝てなかった

 

そんななか故障して

 

5月、休養に入ることになる

 

一旦、競走馬が故障すると

 

復帰するのに時間がかかる

 

人間でもそうだがリハビリは簡単ではない

 

ましてや全力で走る競走馬には

 

時間を要するのは仕方ないところである

 

一方

 

医師である男の方の体調も

 

「グッバイマイライフ」号と

 

時を同じくして急速に悪化してきた

 

残り少ない時間を悟った男は

 

「グッバイマイライフ」号の

 

調教師に毎日のように電話をする

 

「馬の走る姿が見たい、、」

 

「勝てなくてもいい、、」

 

「走る姿だけでも、、、」

 

毎日、電話をした

 

しかし

 

「グッバイマイライフ」号は

 

まだ出走できる状態ではない、、

 

いつしか、、

 

男の声がもう出なくなっていた、、

 

男はFAXで自分の気持ちを送信した

 

医師である男は

 

「グッバイマイライフ」号に

 

自分を重ねていたんだろう

 

「このまま終わりたくない、、、」

 

FAXには書かれていないが

 

そう読み取れる、、

 

「グッバイマイライフ」号を

 

預かる調教師も状況をくみ取り

 

出走させることにした

 

そして10月19日、

 

病院ではなく自宅で

 

家族と一緒に

 

TVで観戦することになった

 

結果は2着だった

 

「もう少しだったのになぁ」

 

家族の一人が言った

 

男は大喜びである

 

男だけではない

 

家族の皆で喜びを分かち合えている

 

精一杯に走ったのを知っている

 

故障明けのなか

 

精一杯、頑張ったのを誰もが知っている

 

男は自分自身と重ねていたに違いない、、

 

数日後、

 

「さらば我が人生」

 

と名付けた馬主で医師である男は

 

静かに息をひきとった、、

 

それから

 

「さらば我が人生」いや

 

「グッバイマイライフ」号は

 

翌年2月に武豊が騎乗して

 

2勝目を挙げている

 

通算成績

 

18戦2勝

 

男の人生にもう少し時間があれば

 

馬の名前も変わっていたかもしれない

 

「グッバイマイライフ」

 

ではなく

 

「ハッピーマイライフ」

 

だったかもしれない

 

夢の途中で終わるのは

 

本当に悔しい気持ちで

 

一杯だっただろうけど、、

 

精一杯やり切った感もあったであろう

 

私も

 

グッバイマイライフと

 

笑って言いたいものである