『後悔しないよう、伝えたい思いを言葉に』
5年前、突然母が亡くなった時、母を失った悲しみと一緒に、
悔やんでも悔やみきれない思いが残りました。
それは、ずっと伝えたかったのに、伝えなかった言葉が残ったからでした。
亡くなるまでの約15年ほど、母には祖父母の入院・介護、父の入院が続きました。
それ故に、人一倍自分の老いに恐怖心を持ち、
老後の自分の生活に不安を募らせていたことを私はよく分かっていました。
「お母さん、大好きよ。
何があっても、私がいるから大丈夫よ。何にも心配いらないからね」。
そう私はいつも思っていました。
でも、伝えなかった。
あらためて口に出すことに、照れもありました。
行動で示していくから、言わなくてもわかってくれるはず・・・、
なんて勝手なことも思っていました。
言葉にしなければ伝わらないことを、よくわかっていたのに。
自分だって、ちゃんと伝えてもらえたら、どんなに嬉しくて安心するか、
よくわかっていたのに。
そして、母は 別れの言葉も ありがとうも言えないまま、
突然逝ってしまいました。
伝えられなかった言葉がずっしりと重く、寒い心の中に残りました。
そして昨年秋、
父も突然に、母の元に逝ってしまいました。
もちろん、父の死はショックで悲しくて…。
でも・・・、母の時のような後悔だけはありませんでした。
母の死後、
一人暮らしをしてくれていた父と過ごした時間は、
いい時もあれば、
そうできなかった時間もありました。
だけど、 あんな思いは二度としたくないと、
伝えたい言葉を 出し惜しみせず、
気を抜かないで 伝えるよう、この5年心がけてきました。
一緒に過ごせる時間はできるだけ父の楽しい時間になるように、
父の言葉をゆっくり待って、
たくさんの話を聴くことも心がけてきました。
父が亡くなる数日前、
会話の中で 思わず父を抱き締め、
「 大切な大切なお父さん。 大好き。 ずっと元気でいてね。」
と伝えた時の父の嬉しそうな顔。
あの優しい笑顔が、生前の
父の最後に見た顔として私の心の中に残ったことを、
本当に有り難く幸せに思っています。
だから、伝えていきたいです。自分の思いを言葉にして。