「真っ直ぐいらっしゃるより、沢山ときめきがあって、よろしゅうございましたね」

楽しそうに微笑みながら、そのご婦人は仰いました。

電車に乗り遅れ、その上途中で合流した仲間が忘れ物をして、

結局 お約束の時間より一時間近くも遅れた私共をお迎え下さった時の、

第一声がこの言葉でした。

知人の案内で私共に会いに来て下さったそのご婦人Sさんからは、

その後カフェでコーヒーをお勧めした時にも、こんな言葉を頂きました。

「初めてお会いした方にこんな事申し上げるのも何ですが…。

昨年、私、癌を賜りましたもので、コーヒーが頂けませんの」

と、やはりにっこり微笑みながら。

 

小学生のMちゃんのお迎えにおばあ様が教室に来て下さった時のこと。

お家は、農業に素麺工場、etc.をなさっていて、

どんどん新しい事にも挑戦なさる元気で働き者のご主人を、

二人三脚で支えていらっしゃったことをお話の中から知りました。

「お忙しいですね」

と伝えますと、

 「主人にね、お父さん、私もね、もう年を取ったから、疲れるのよ、

少しずつ仕事を減らしましょうって言たらね、

ヘェ~お前、いつの間に年取っとったんや?ずっと20歳やと思とったって、

こんなこと言うんですよ」

と、可笑しそうに、お話しして下さいました。

Mちゃん達が、本当に素直で明るい、いい子の訳がわかりました。

 

実家の前で、同級生のお母様にお会いして、久し振りにお話しさせて頂いた時のことです。

そのお母様が、

もう街に出てしまわれて滅多に帰っていらっしゃらない

ご本家のお庭廻りの手入れをずっとなさっていることをお聴きしました。

「草一本も生えない様に綺麗にしてるんですよ。

喜んでくれるんと違うかなと思うと、嬉しくて。」

控えめに、でも本当に嬉しそうに仰った言葉に頭が下がりました。



日常の生活の中で自然に出てくる言葉がその人の言葉であり、

まさに、生き方そのものだと感じています。