【こころの病気を正しく知る】統合失調症とは?症状や原因、付き合い方について

 

「統合失調症」という病名を聞いたことがありますか?

「なんだかよくわからない」「少し怖い病気かもしれない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、統合失調症は特別な病気ではなく、約100人に1人がかかると言われる、とても身近なこころの病気の一つです。

この記事では、「統合失調症とはどのような病気なのか」「どのような症状があり、どう付き合っていけばいいのか」を、わかりやすく解説します。ご本人やご家族、周りの方がこの病気への理解を深める一助となれば幸いです。

 

統合失調症とは? - 心の働きをまとめるのが難しくなる病気 -

 

統合失調症は、考えや気持ち、行動などをまとめ、一貫性を保つ「統合する」能力が、一時的に不調になる病気です。この脳の機能的な不調によって、現実を正しく認識することが難しくなり、様々な症状が現れます。

決して「性格」や「育て方」が原因でなるものではありません。適切な治療とサポートによって、回復し、自分らしい生活を送っている方もたくさんいます。

 

主な症状は? - 陽性症状・陰性症状・認知機能障害 -

 

統合失調症の症状は、大きく3つのタイプに分けられます。これらの症状は、人によって現れ方や程度が異なります。

 

1. 陽性症状(本来ないものが出現する)

 

健康な時にはなかった状態が、症状として現れます。周りの人にも分かりやすく、病気だと気づくきっかけになりやすい症状です。

  • 幻覚: 現実にはないものをあるように感じること。特に、自分の悪口や噂、命令などが聞こえてくる「幻聴」が多くみられます。

  • 妄想: 明らかに事実とは違うことを、訂正不可能なほど強く信じ込んでしまうこと。「誰かに監視されている」「悪意のある集団に狙われている」といった被害的な内容(被害妄想)が多いです。

  • 思考の混乱: 考えがまとまらず、話に一貫性がなくなったり、会話が飛躍したりします。本人も「考えが引き抜かれる」「考えを吹き込まれる」といった奇妙な感覚を覚えることがあります。

 

2. 陰性症状(本来あるものが失われる)

 

これまであった感情や意欲などが失われ、活動性が低下する症状です。うつ病にも似ていますが、本人の「つらい」という感情表現が乏しい場合もあります。

  • 感情の平板化: 喜怒哀楽の表現が乏しくなり、表情が硬くなります。

  • 意欲の低下: 何事にもやる気が起きず、これまで好きだったことにも興味を示さなくなります。

  • 思考の貧困: 口数が少なくなり、会話の内容も乏しくなります。

  • ひきこもり: 人との関わりを避け、自室に閉じこもりがちになります。

 

3. 認知機能障害

 

日常生活や社会生活を送る上で必要な、知的な能力に障害が起こります。

  • 注意・集中力の低下: 物事に集中したり、注意を持続させたりすることが難しくなります。

  • 記憶力の低下: 新しいことを覚えたり、過去の出来事を思い出したりすることが苦手になります。

  • 実行機能の障害: 計画を立てて、段取りよく物事を進めることが困難になります。

これらの症状は、ご本人が一番つらく、混乱しています。「怠けている」のではなく「病気の症状である」と理解することが非常に重要です。

 

原因は? - 脳の脆弱性とストレスの組み合わせ -

 

現在の医学では、統合失調症の原因は一つに特定されていません。しかし、脳の機能的な脆弱性(なりやすさ)に、人間関係の悩みや仕事のプレッシャー、環境の変化といった「ストレス」が加わることで発症するのではないか、という**「脆弱性ストレスモデル」**が有力な説とされています。

遺伝的な要因も関与すると言われていますが、親が統合失調症だからといって、必ず子どもも発症するわけではありません。様々な要因が複雑に絡み合って発症するものであり、誰かのせいではないことを理解してください。

 

治療の柱 - 薬物療法と心理社会的療法 -

 

統合失調症の治療は、「薬物療法」と「心理社会的療法」を組み合わせ、そこに十分な「休養」を加えることが基本となります。

  • 薬物療法: 主に「抗精神病薬」が使われます。この薬は、脳内の神経伝達物質(ドーパミンなど)のバランスを整えることで、特に幻覚や妄想といった陽性症状を和らげる効果が期待できます。医師の指示通りに服薬を続けることが、症状の安定と再発予防につながります。

  • 心理社会的療法: 薬で症状をコントロールしながら、社会生活機能の回復を目指すリハビリテーションです。病気について正しく学び(心理教育)、対人関係のスキルを訓練したり(SST)、作業を通して自信を回復したり(作業療法)と、様々なプログラムがあります。

 

周りの人はどうサポートすればいい?

 

ご家族や友人など、身近な方のサポートはご本人の回復にとって大きな力となります。

  1. まずは病気を正しく理解する: 症状や本人のつらさを理解することが、全ての基本です。

  2. 安心して話せる環境を作る: 本人の話をじっくりと、批判や否定をせずに聴いてあげましょう。

  3. 幻覚や妄想を否定しない: 本人にとっては紛れもない「現実」です。頭ごなしに否定すると、心を閉ざしてしまいます。「あなたにはそう聞こえる(見える)のね」と、まずは受け止める姿勢が大切です。

  4. 受診を勧める: 「最近眠れていないみたいで心配だよ」「専門家に相談してみない?」など、本人の健康を心配しているというメッセージを伝えながら、優しく受診を促しましょう。

  5. 一人で抱え込まない: ご家族自身も、精神保健福祉センターや家族会、相談室などのサポートを利用し、悩みを分かち合うことが大切です。

 

最後に:早期相談が回復への第一歩

 

統合失調症は、不治の病ではありません。適切な治療と周りのサポートがあれば、症状をコントロールし、その人らしい人生を歩んでいくことが十分に可能です。

もし、ご自身や身近な人に気になるサインが見られたら、一人で抱え込まずに、精神科や心療内科、お住まいの地域の精神保健福祉センターなどの専門機関に、ぜひ一度相談してみてください。早期に相談することが、回復への大切な第一歩となります。