ここ数年、ニュースで「不登校の児童生徒数が過去最多を更新した」という話題を耳にすることが増えました。
「昔はもっと少なかったのに、なぜ?」「子供たちが弱くなったの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、現場の実情や専門家の分析を見ると、単に子供の変化だけではなく、「学校」「家庭」「社会」それぞれの環境が大きく変化していることが見えてきます。
今回は、なぜ今、不登校が増え続けているのか、その背景にある複雑な要因をわかりやすく解説します。
1. 「学校生活」における息苦しさとミスマッチ
文部科学省の調査によると、不登校の要因として最も多いのは「無気力・不安」ですが、その根底には学校環境とのミスマッチがあります。
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集団生活へのストレス: 「みんな一緒」を求める同調圧力が強く、繊細な子供(HSC:ハイリー・センシティブ・チャイルド)や、自分のペースで学びたい子供にとって、教室が「安心できない場所」になっています。
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人間関係の複雑化: SNSの普及により、学校が終わって家に帰ってからもクラスメートとの繋がりが切れず、人間関係のトラブルや疲れがリセットできない状況が続いています。
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発達特性への理解: 発達障害やグレーゾーンと呼ばれる子供たちの特性が広く知られるようになりました。これ自体は良いことですが、従来の画一的な一斉授業のスタイルが、その特性に合わず、学習についてもいけなくなるケースが顕在化しています。
2. コロナ禍がもたらした「生活リズム」と「意識」の変化
新型コロナウイルスの流行は、子供たちの心理に大きな影響を与えました。
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生活リズムの乱れ: 長期の休校や分散登校により、生活リズムを作るのが難しくなり、登校する気力が削がれてしまったケース。
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「学校に行く意味」の問い直し: オンライン授業や自宅学習を経験したことで、「無理して毎日教室に行く必要があるのか?」という本質的な疑問を、子供自身や親が抱くようになりました。
3. 社会全体の「不登校に対する捉え方」の変化
これが、数字が増えている最大の要因の一つかもしれません。「不登校=悪いこと」という価値観が変わりつつあります。
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「無理をさせない」という選択: 以前は「這ってでも学校へ行け」という風潮がありましたが、現在は「心の健康を守るために休む」という選択を、親も学校も認めるようになってきました。
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「命の安全地帯」としての不登校: いじめや過度なストレスから逃れるための「緊急避難」として、不登校をポジティブに捉える動きが広がっています。
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学びの場の多様化: フリースクール、通信制高校、オンライン学習など、学校以外の学びの選択肢が増えたことで、「学校に行かない=学びの終わり」ではなくなりました。
「不登校」は問題行動ではない
不登校が増えている数字を見ると不安になるかもしれません。しかし、これは「子供たちがSOSを出しやすくなった」「大人がそのSOSを受け止められるようになった」という側面もあります。
学校に行けないことは、決して子供の怠慢や親の育て方のせいではありません。 今の子供たちは、変化の激しい時代の中で、自分に合った生き方や学び方を必死に模索しています。
もし身近に不登校で悩んでいる方がいたら、まずは「休むこと」を肯定し、学校という枠組み以外にも広い世界があることを伝えてあげたいですね。
まとめ
不登校の増加は、以下の3点が複合的に絡み合っています。
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学校システムの制度疲労(画一的な教育の限界)
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コロナ禍による生活と価値観の変化
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「無理して行く必要はない」という社会の許容度の高まり
社会全体で、学校以外の居場所作りや、個々の特性に合わせた学びの支援を進めていくことが、これからの課題と言えるでしょう。


