私が最初に手に入れた花びんはすりガラス製で、
縁にはレリーフのような花模様が付いている。
高さは16cmくらいで使い勝手がいい。
今でこそ使っているが、
手に入れてから長い間、この花びんを使えなかった。
それは香典返しで頂いたものだった。
元同級生の葬儀だった。
当時は20代で、
ある日突然「○○君がバイク事故で亡くなった」と連絡網が回ってきた。
彼と話したことはほとんどなかったが、
友人みんなで葬儀に行った。
まだそんなに給料をもらっていなかったから、
大した香典は渡していないはず。
だが後日、香典返しとして花びんが届いた。
すごくきれいな花びん! と単純に嬉しかった一方、
あの人はもうこの世にいないんだ、とものすごく複雑な気持ちになり、
そのまま押し入れにしまいこんだ。
数十年が経って、ようやく使う気持ちになった。
孫がいてもおかしくないような年齢になった今、彼のご両親の悲しみ、悔しさを思う。
ご両親にとっては、いつまで経っても20代の彼だろう…。
彼のほかにも、やはりバイク事故で亡くなった部活の後輩、
高校の体育の授業中に倒れて亡くなった同級生がいる。
元気だったらみんな今頃、中年太りしていたのかな。薄毛になっていたかな。
それともイケオジになっていたかな。
孫がいたかもしれない。
彼らが生きた年数の倍以上生きてきた私。
人の命はどうこうできるものではない。
私は自分に与えられた命を大事に使わなければ、と花びんを見て真面目に思った。