映画「幻滅」を鑑賞する!
2022年 フランス
フランスの文豪バルザックの『幻滅 メディア戦記』を「情痴 アヴァンチュール」「偉大なるマルグリット」のグザヴィエ・ジャノリ監督が映画化し、セザール賞で作品賞を含む7冠を獲得した人間ドラマ。19世紀前半のパリを舞台に、田舎から出てきた純朴な青年が、新米記者として足を踏み入れたジャーナリズムの世界で、いつしか初心を見失い、欲望の渦へと呑み込まれていく転落の物語を描く。主演は「Summer of 85」のバンジャマン・ヴォワザン。共演にセシル・ドゥ・フランス、ヴァンサン・ラコスト、グザヴィエ・ドラン。
19世紀前半のフランス。詩人としての成功を夢見る田舎の青年リュシアンは、貴族の人妻ルイーズと恋に落ち、やがて2人で駆け落ち同然にパリへとやって来る。そしてルイーズの支援で社交界への進出を目論むも、世間知らずな振る舞いでたちまち笑い者に。その後、生活が苦しくなった彼は、やっとの思いで新聞記者の仕事を手にする。しかし、お金のためなら平気で嘘も書く、私欲にまみれた同僚たちの姿に戸惑いを隠せないリュシアンだったが…。
<allcinema>
育ちの卑しい美少年が、その美貌を頼りに上流階級への野心を滾らせる。なんか、フランスのお話って、こういうのが多いですよね。有名なスタンダールの小説「赤と黒」とか、アラン・ドロンの一連の映画だとか。
どこまでバルザックが偉大だったのか、映画がよくできていたのか?は私には判断しかねます。
でも、とても重厚な作りですバルザックとかディケンズの小説を読むとき、極東の島国に住む私には、小説の文章だけではディテールが判らない。こういう映画は、その世界を理解するのに助かります~
家柄だとか財産で人の値打ちが決まってしまう社会って、本当に馬鹿馬鹿しいと私は感じるんだけど、そういうものにひたすら憧れる何も持たない庶民の気持ちもわからないではない。今の日本でいうなら、「学歴」に相当するんでしょうか?成功した芸能人が、子供を慶応の幼稚舎にお金を積んで入学させたがるみたいなもんでしょうかね?
で、いうまでもなく、生粋の上流階級の人たちに馬鹿にされて、罠にはめられて、零落してしまう悲しい結末でした。ちょっと、石川啄木の人生を連想する。
真実を伝えるはずのジャーナリズムにも勿論裏駆け引きがある。田中角栄の金脈問題を立花隆が書いたとき、巷の新聞記者は「そんなこと、前から知っている。」と言っていたそうだけど、それならなぜその人たちは記事にしなかったのか? なにも松本人志の味方ばかりするつもりは毛頭ありませんが(笑)、これだけ彼がバッシングされるのには、やはりジャーナリズムの力学が働いているんでしょうね。でも、その真実は、飲み屋の新聞記者のグダとしてしか語られないのでありました。