窃盗容疑
仕事が終わり、さっさと着替えて帰ろうとした時、ダウン(ダウンジャケット)がないことに気づきました。
「荷物と同じ場所に置いておいたはずなのに…」
辺りをくまなく探しましたが、羽毛を100%使っておきながら、わずか千円で買えた掘り出し物の茶色のダウンは見つかりませんでした。
「誰かが間違えて着ていってしまったのか…」
「とんだアホがいるもんだ」
僕は、嘆きました。
暖かいダウンに甘え、下は長袖シャツ一枚というこの時期に対して極めて薄着で来てしまったことを後悔しました。
諦めて帰ろうとした時、明らかに似合っていない茶色のダウンを着たパートのオバサンを見つけました。
「も、もしや…」
オバサンの肩を叩いて優しく聞いてみました。
「もしかして、誰かの上着を間違えて着ていませんか?」
オバサンは、驚いた顔を見せた後に、ダウンを脱ぎ捨てるかのように僕に渡し、不機嫌そうに言いました。
「どうりで、くさいと思った」
僕は思わず謝ってしまいました。
千円床屋
千円でカットしてくれる床屋に行きました。
どのような髪型にするか聞かれました。
「サッパリしてもらえればいいです」
と言うつもりでした。
「シャッパリしてもらえればいいです」
と言ってしまいました。
「フフフ…」
理容師に鼻で笑われました。
後ろから子供の声が聞こえました。
「シャッパリだって~」
「シャッパリってなんだろ~」
「俺もシャッパリにしよ~」
バカにしていました。
暴言王子
アパレル商品を仕分けする仕事をしてきました。
日雇い労働者を完全に見下し、暴言ばかり吐く社員がいました。
若くて男前なので、僕は密かに『暴言王子』と呼んでいました。
暴言王子の暴言は、とにかく凄まじいの一言でした。
50歳ぐらいのオジサンがミスをすると…
「そりゃ、リストラされるわ!」
そのオジサンが「ごめんね」と謝ると…
「ごめんねじゃねぇだろ!ごめんなさいだろ!」
同じく50歳ぐらいのオジサンがミスをしたら…
「今まで、よく生きてこれたな!」
手が空いたオジサンが「なにか手伝えることあるかい?」と聞いたら…
「俺に気安くタメ口聞くんじゃねぇ!」
大声で独り言のように…
「日雇いは、クズばっかりだな~!」
ハゲているオジサンに…
「ハゲ!」
ついに、我慢の限界を越えた日雇いオジサンズ達は、暴言王子を訴えてやろうと意気込んでいました。
僕は、暴言王子を一つの個性(キャラクター)として見ていたので、訴えてやるという気持ちはありませんでした。
しかし、その後、暴言王子が僕に寄ってきました。
そして、僕の顔を見ながら言いました。
「いかにも女にモテそうにない顔してんな!」
僕もオジサン達に協力することにしました。