とある町に、牛を潰し、肉に加工する職人のおじさんがいました。
そのおじさんは、何十年も続けているので、とても腕が良く有名でした。
しかし、本当はそんな仕事をしたくてしている訳ではなく、工場長に頼まれて働いています。
ある日、おじさんの前に、一頭の牛と小さな女の子がトラックの中から降りてきました。
女の子は『みーちゃんごめんね。みーちゃんごめんね。』と、泣きながら牛の頭や首を撫でています。
本当は、女の子もみーちゃんを潰したくはない。でも、女の子が我が儘を言ってしまえば、女の子も含め家族が生きていけないのです。
その辛い現実を受け止めて、女の子はおじさんに『みーちゃんをよろしくお願いします』と頭を下げました。
その晩、家に帰ったおじさんは悩み、苦しみました。
自分はなんて残酷なことをしているんだ。
やはり、この仕事は辞めてしまおう。
それを家族に話すと、女の子と歳が変わらない息子がこう言いました。
『お父さんがお肉にしてあげないと、可哀相だよ。』
おじさんは驚いて聞きました。
『お父さんにお願いした女の子や、みーちゃんが可哀相だよ。』
息子は父親がどれだけ腕の良い職人か知っています。
他の職人だと、牛に苦しい思いをさせてしまうかもしれない。
しかし、父親は上手に刺すから、牛が苦しまずにお肉になる。
だから父親にやってもらいたかったのです。
次の日、おじさんはいろんな想いを抱いて出勤しました。
後ろ足を縛られ、逆さまに吊されたみーちゃんは、他の牛達と同じように暴れています。
そんなみーちゃんの頭や首を優しく撫でてあげて『みーちゃん、みーちゃん』と名前を呼びました。
『みーちゃんごめんね。今から、みーちゃんをお肉にするけど、苦しまないようにすぐ終わらすからね。』
おじさんは、この仕事を長く続けていますが、初めて牛に声をかけたと言います。
すると、みーちゃんは暴れるのを辞めて、大粒の涙を流しました。
牛の涙を初めて見たおじさんは、涙をこらえて、みーちゃんの首に長い針を刺しました。
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僕は、実際にこんな経験をしたことがない。
でも、間違いなく言えるのは、僕たちが食べる肉や魚は、『生きていた』ってこと。
僕たちは、植物を含め、命を頂いているってこと。
『いただきます』と『ごちそうさま』。
言うのは簡単。
だけど、『命をいただいてる』と思って食べてたら、勝手にその言葉にも心がこもるよね。
ありがとう。
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