今回から、居飛車が△72飛と袖飛車にした後に棒金の仕掛けをやってくる将棋を見ていきます。
△82飛型での△74歩▲同歩△同金の仕掛けには、▲65歩△75歩に▲同角と取る手が可能でしたが、△72飛型ではそれができません。また、今回74に出てくる金には、銀だけでなく飛車のひももついて安定感が増しています。石田流は、△82飛型の時とは違う対処をする必要があります。
AIは、△72飛に▲86歩で仕掛けろと言ってきます。それはそれであるかもしれませんが、このブログではひとまず平凡に▲68銀と上がっておきます。
居飛車は△74歩▲同歩△同金と仕掛けます。次に△75歩を喰らったらゲームセットですが、▲75歩△84金の進行は居飛車の注文通り。そのタイミングで▲65歩を突くのは遅く、▲36飛と回った時に▲75歩が取り残された状況になり、負担になります。
よって、石田流はやはり△74歩▲同歩△同金のタイミングで▲65歩(下図)と突きます。ここを突いておけば、とりあえず▲76飛の横利きが通って飛車が呼吸できるようになるので、すぐには潰れません。この局面で、△65同歩と△75歩を考えていきます。
(1)△65同歩
▲36飛(下図)と回ります。△75金には▲34飛△33歩▲84飛がありますし、△33銀は▲53角成があります。
(1ーA)△33玉
△33銀がまずい以上、▲34飛を受ける場合、この△33玉!の一手です。指しにくいと言えば指しにくいですが、実際指された時にどうするか、意外と難しいかもしれません。そもそも石田流としても、▲36飛と回って歩越しの飛車を使って手を作っていくのは、簡単ではないと思います。
△33玉には▲86歩(下図)でどうか。△同歩▲同飛は注文通りで、石田流の大駒が楽になります。
▲86同飛に△85歩▲同桂△84歩には、▲88角△44歩▲76飛(次に▲64歩△同銀▲73歩)△75歩▲46飛△43銀▲55角(下図)で、石田流まずまず。以下、△92飛には▲83歩△64銀▲同角△同金▲73銀が一例です。
▲86歩に△75金は、▲85歩△76歩▲75角△同飛▲86金△72飛▲76飛(下図)が一例で互角の範囲です。△33玉型のため41の金が浮いているのは、飛車交換等の場合に石田流にとって好材料です。
(1-B)△75歩
▲34飛を受けずに、▲97角の利きを止めました。▲34飛の王手に対する受け方で分岐して見ていきます。
(1-Bーア)△33銀
歩を打たずに、形よく銀を上がって受けた手ですが、▲36飛に△42金(▲76歩△同歩▲53角成の受け)が必要になります。
△42金以下、▲67銀△54銀なら▲76歩(下図)と位に反発して、捌きやすい形を目指します。△同歩▲同銀は▲85銀を狙って石田流十分です。△45銀は▲75歩△36銀▲74歩△同飛▲65桂で捌けます。
(1-Bーイ)△33歩
歩を打って、囲いを崩さずに受けました。居飛車は▲36飛△54銀▲67銀に△45銀(下図)と一手早く出る事ができます。
石田流は飛車が狭いですが、▲35飛に△34銀は▲65飛△同金▲同桂(下図)と飛車を切って左桂を捌いてどうか。次に▲64歩の垂らしを狙います。居飛車は歩切れが痛いです。以下、△62飛には▲64歩△同飛▲53桂成△同銀▲75角が一例で石田流好調です。
▲35飛に△44歩(下図)なら手番を得ます。また、銀が質に入っていれば、最悪でもいつでも飛車を切れます。居飛車の角道が二重に閉じたのもありがたいところです。
ただ、△44歩に▲56銀とぶつけるのは、△34歩▲25飛を利かされた後、△56銀▲同歩となって玉のコビンが空くのも気持ち悪いところです。以下、△45歩▲63銀△73飛▲74銀成△同飛(下図)の瞬間の石田流の手が難しく、実戦的にも居飛車よしだと思います。
▲56銀に代えて、先程と同様に▲76歩(下図)から反撃するのが、地味ながらこういった将棋では実戦的でしょうか。
この後の変化は多岐に渡るので、一概には言えませんが、「△75歩と位を取られた場合に手番が来たら、▲76歩と反発する手を狙うのが有効な場合が多い」と覚えておけば、指し手の方向性が少し見える可能性があります。
逆に、(1ーA)のように、すぐに△75歩を打ってこない場合、あるいは▲76歩が有効でない場合は▲86歩が仕掛けの接点になるようです。
(1-Bーウ)△33角
角で受けましたが、頭が丸いのでこの場合は飛車が高段で安定します(飛車を追いづらい)ので、石田流に攻めのターンが来ます。
・すぐに▲15歩△同歩▲14歩の端攻めを決行する。
・▲65桂(△同金は▲84飛)で一歩を得てから、△64歩▲15歩△同歩▲12歩△同香▲13歩△同香▲14歩△同香を狙う。
・▲88角と引き、次に▲65桂を狙う。
といった攻めが狙えます。△33角が動きづらいため、石田流がペースを握れそうです。
(2)△75歩
▲65歩に△75歩と押さえてきた手です。石田流を完封する方針に見えます。
ここでも▲36飛と回ります。そこで△65歩なら(1)と合流します。先に△75歩を打ったのは、ここで△33銀と受けるためでしょう。
ちなみに、AIは△24歩を推奨しており、▲34飛△23玉という謎の進行を読んでいたのですが、とても人間の手とは思えない(あるいは強すぎる手で意味がわからない)ので、△33銀(下図)で進めます。
△33銀に対しては▲64歩と取り込みます。銀で取るか金で取るかで場合分けします。
(2ーA)△64同銀
この場合、△54銀~△45銀と出る手が消えるので、少し落ち着けます。▲67銀(下図)と上がって▲76歩を狙ってどうか。
居飛車は手が広いですが、上図から△82飛と△94歩を見ておきます。
(2ーA-ア)△82飛
居飛車は飛車を8筋に戻して、85の地点に利きを足しました。それでも▲76歩△同歩▲同銀(下図)と仕掛る手があります。
上図で△75歩▲85銀△同金▲同桂△同飛なら▲86飛(下図)とぶつけて石田流よしです。
(2ーA-イ)△94歩
▲76歩(飛車の横利きが止まる瞬間)に△95歩を用意した手です。その進行は石田流が忙しいので、今度は▲56銀(下図)と出て玉頭方面を狙っていきます。
▲56銀に△95歩なら、▲45銀△96歩▲88角(下図)で、次に▲85桂△同金に▲34銀や▲65歩△同銀▲55角を狙って捌けそうな形です。
▲56銀に△44歩なら、そこで▲76歩と反発します。△95歩なら▲65歩△73銀▲75歩△84金▲74歩、△76同歩なら▲65銀とぶつける手が利きます。腰掛銀まで構える事ができれば、石田流の攻めに厚みが出るので、一気に捌きやすくなります。
(2ーB)△64同金
石田流は、やはり▲67銀(下図)と上がっておきます。金で取った場合、先程の銀で取った場合と比較すると、石田流側から見て居飛車陣の右側がやや厚くなっています。ほんの僅かな違いに見えますが、違う指し方が求められます。
上図から△42金と陣形を整備する手には、ここでも▲76歩があります。
▲76歩に△同歩▲同銀は▲65歩や▲85銀で好調です。▲76歩に△94歩なら、▲75歩△同金▲76銀!(下図)があり、△同金に▲73歩△同飛▲65桂で左桂が捌けます。
次に、△94歩の変化を見ていきます。基本的に△94歩以外の手であれば、▲76歩が有力な候補手のようですが、△94歩に▲76歩には△95歩があるのでダメです。
△94歩に今度▲56銀は、△54銀と銀対抗で受ける手があり、そこで▲76歩と打っても、△63歩(下図)くらいでも後続の手が難しく、いまいちです。
この場合の△94歩には、金が一路ずれた事を咎めて▲85桂(下図)と跳ねてしまう手が有効なようです。この局面からの分岐を見ていきます。
(2ーB-ア)△82飛
▲86飛は、△84歩▲66飛△62飛(▲75角△同金▲63飛成の受け)で切れ模様。
△82飛には、代えて▲88角(下図)と居角のラインに戻っておくのが好手。そこで△85飛なら▲86飛とぶつけて確実に飛車交換になります。
▲88角に△84歩と歩を打って桂馬を取りに来るなら、居飛車の飛車が狭くなるので、▲33角成△同桂▲73銀(下図)の筋が有効になります。これは石田流十分です。
▲88角に△44歩なら、▲95歩△同歩▲92歩△同香▲86飛(下図)が巧妙な手順。今度△84歩には▲93歩があり、△85歩に▲92歩成が飛車当たりになります。▲92歩成に飛車が逃げれば、こちらも▲36飛と戻っておいて十分(と金が作れた分、有利)です。
(2ーB-イ)△74金
金を戻って桂馬を取りに来ました。この時にやっていけないのが▲86歩と支える手で、「▲86飛」を捌く手段として残しておきたいです。
△74金には▲73歩と打ちます。△52飛なら▲66銀と立ち、△85金に▲75銀(下図)と出ていけば、桂馬が取られる代わりに角と銀が捌けてきます。次の▲64歩(△54銀なら▲74銀)が厳しい手になります。
▲73歩に△82飛なら、先程のように▲88角(下図)と引いておきます。代えて▲66銀では、△85飛に▲86飛とぶつけられなくなります。状況次第で、角を引く手と銀を上がる手を選ぶ必要があるという事ですね。
上図で△85金には、▲55角△64歩▲65歩(下図)と追撃します。▲72歩成の成り捨てがどこかで利く+居飛車の角道が止まっているため、この角出だけでもそこそこ手になっています。
(2ーB-ウ)△84歩
歩で桂馬を取りに来ました。この場合、居飛車は△82飛としても飛車先が重いので、▲66銀(下図)と立っていく手が有力になります。△74銀には▲65歩から手を続けます。
上図で△85歩なら、▲75銀△同金▲同角△42金なら、▲64歩△74銀▲97角(下図)で石田流十分。次に▲76飛△65銀打▲72歩成△同飛▲63歩成といった狙いがあります。居飛車は6筋と7筋の傷が大きく、そもそも指す手が難しい状況です。
手順中、△42金に代えて△64銀打のような手厚い手の方が勝りますが、▲97角(下図)の時に手の入れ方がまた難しく、例えば△52金なら▲64角△同銀▲72歩成△同飛▲51銀、△42金なら▲62歩△同飛▲72金のようなもたれ方があります。一方、居飛車は何かを指すとそれが隙になりかねないため、どこまで行っても指す手が難しいです。
今回の記事はここまでにしたいと思います。
次の記事でも袖飛車からの棒金を考えますが、次回は石田流が▲65歩から▲36飛と回れないケースを考えてみます。

































