「一直線銀冠」の続きです。

 

今回は▲79角に対して△84飛と指した場合について見ていきます。一直線銀冠の思想的には自然な形でしょうか。この局面を第三図とします。

 

 

第三図以下、▲56歩△32金▲77桂△22玉に▲46角と出ると、次に▲74歩が厳しいので△64歩が普通です。その進行は前回の局面と合流してきます。

 

今回考えるべきは、▲56歩に△54歩と反応したケースでしょうか。前回の「▲55歩」の構想を防いだ手ですが、銀冠の完成は一手遅れます。

 

 

▲77桂△32金▲46角△64歩に▲74歩が行けそうに見えます。実際、そこそこ行けてます。

 

 

ただ、ここで居飛車の最善は△63金らしく▲73歩成△同桂でひとまずは受かってるんですよね。

 

 

しかし、少なくとも居飛車は、もう3枚の銀冠を組む事はできなくなっています。仕掛けが受かっているのはつまらないですが、一直線銀冠を阻止した事にはなるでしょう。

 

もし、石田流が△54歩を見て▲46角を見送るなら、下図のように▲57角型に構えて、▲65歩~▲74歩と動くのが狙い筋。美濃囲いの堅さを維持しつつ、▲77桂にひもをつける組み換えにも注目です。

 

 

△83飛には▲46角と出ます(後述の▲73歩成△同銀▲86歩△同歩▲84歩の筋もあるが、居飛車の角が利いているため△82飛に▲85桂が跳びにくい)。

 

以下、△32金右▲73歩成△同銀▲74歩△82銀▲78金(△75歩▲同飛△86歩のケア)で次に▲64歩△同歩▲同角を狙ってどうかというところです。居飛車は銀冠穴熊とは言え手を作りづらい状況なので、石田流の攻めが通り始めれば、一方的に倒すことも狙えそうです。いわゆる穴熊の姿焼きパターンですね。

 

 

 

次に、△84飛+△94歩型も少し見ておきます。△84飛で▲74歩を手堅く受けつつ、△94歩で端角を受けつつ、▲46角に△93香を用意しています。

 

しかし、これには構わず▲46角と出てみたい。△93香と上がってくるでしょうが、▲55歩と5筋の位を取るのが真の狙い。下図のような陣形がやはり理想形で、▲28玉で態勢を万全にした後、居飛車陣に離れ駒等の隙が出来た時に▲74歩と突けば石田流十分です。

 

 

△83飛に今度は▲73歩成△同銀▲86歩△同歩▲84歩(△同銀は▲72飛成)で居飛車しびれています。

 

 

△82飛には▲85桂が銀と香に当たっているのが大きく、△93香型を咎める事ができます。以下、△62銀▲93桂成△同桂▲83歩成△同飛▲72飛成が一例で石田流優勢です。

 

 

 

ここまでで具体的な局面の検討は終了します。

 

ここからは、前回と今回で見てきた変化について、補足を付けつつまとめます。

 

 

・△63歩型のため△65歩がなく、石田流は▲79角~▲46角の構想が実現しやすい。そのため居飛車は完全に一直線に銀冠を目指せるわけではなく、なんらかの対処が必要。

 

・居飛車が△64歩を突いた場合、▲46角に△63銀ならば▲65歩△同歩▲74歩と仕掛けて(基本的には)石田流がいい。ただ、本当は▲28玉を指しておきたい。

 

 

・居飛車が△64歩を突いている場合、(△52金型の場合)▲46角に△63金が実は最善で、▲65歩△同歩▲74歩△84飛▲73歩成△同桂で受かる。ただし、居飛車は3枚以上の銀冠にほぼ組めなくなる。

 

 

 

・居飛車が△64歩を突いて△63銀と上がっている場合、▲46角に居飛車が何もしなければ▲65歩から仕掛けて石田流よし。よって居飛車は△84飛と受けてくるのが普通だが、▲55歩で位を取れればひとまずポイントは稼いでいる。

 

5筋の位を取った後は、▲56銀+▲57角型に組み、▲65歩からの仕掛けを目指す。5筋の位によって居飛車の角が使いづらく、石田流の本美濃が飛車交換に強い陣形であるので、石田流十分の仕掛けになる。

 

ちなみに、位に反発する△54歩には部分的に▲74歩があり、△同歩でも△同銀でも▲54歩でいい。

 

 

 

・居飛車が△63歩型で△84飛と浮いている場合、▲46角と出てから▲74歩からの仕掛けが生じている。▲65歩を突く必要がなく、居飛車の角が通ってこないのが大きい。▲46角に△64歩と受けるなら、上記の局面と合流してくる。

 

 

 

・▲56歩に△54歩と反応してくるなら、下図のように▲57角型に構えて、▲65歩~▲74歩と動くのが狙い筋。

 

 

・△94歩で▲46角に△93香を用意してきても考え方は変わらず、▲46角に△93香なら▲55歩で5筋の位を取っておいて満足。

 

・(これまでの検討では扱わなかったが)居飛車が△64歩を突いて△63金と上がっている場合、▲46角と出ても無筋。▲55歩にも△54歩があり、△63金型のため▲74歩は▲73歩成の先手にならない。よって、居飛車が玉を固めづらくなった事に満足して、▲46角に代えて▲57角と構え、4筋の位を取って銀冠を目指すような構想が有力なようだ。

 

 

・(これも検討では扱わなかったが)▲56歩に△44歩で▲46角を牽制すらなら、▲46歩で対抗して△45歩のような傲慢な手を許さない(仮に▲46歩を怠って△45歩まで指されたら、▲36歩~▲37桂で狙いに行くか、▲46歩で反発しに行く)。

 

狙い筋はこれまでと同様、下図のような▲57角型からの▲74歩。居飛車は角道が止まっているので反撃しにくく、仕掛けの条件としては石田流に分がある。

 

 

 

といった感じかと思います。

 

長かったですが、今回で「石田流 vs 左美濃」については一区切りとしたいと思います。