先手番で石田流を目指す場合、初形から▲76歩△34歩▲75歩と突きますが、その石田流対策の1つに、4手目に△54歩と突く手があります。

 

 

この△54歩には、先手が▲78飛と振って後手が△88角成~△45角と打った時に、定番の▲76角が切り返しの手にならないようにした意味があります。

 

 

よって、△54歩に▲66歩で角道を止めておくのが無難な対応になります。つまり、先手に角道を止めさせるのが、後手の真の狙いだったわけです。

 

石田流プレイヤーの自分としてはそれが気に食わなかったので、△54歩に▲78飛と回って△45角を打たせた上で戦えないかという検討を以前行いました。

 

あれはあれでそれなりに先手もやれる将棋だと思うのですが、おとなしく▲66歩を突いた展開でも、当然それなりに行けるので、今回はその将棋を検討したいと思います。

 

なお、今回も高崎先生の「わかる!勝てる!!現代相振り飛車」を参考にしています。この本はマジで名著だと思います。相振りの歴史も俯瞰できるので、読み物としても面白いんですよね。

 

 

さて、対策を考えるにしても、まずは後手がどういう指し方をするかが問題になりますが、結論から言うと、後手は相振り飛車(特に向かい飛車が有力)を志向するのが自然です。

 

▲66歩に△84歩と突いて居飛車で指すのはもちろん有力です。おそらく嬉野流的な指し方になりますね。ただ、居飛車志向ならば石田流に▲66歩を突かせる手段は他にもあるわけで、わざわざ4手目に△54歩を突く必然性がなく、形を決めすぎな感があります。

 

また、「向かい飛車 vs 三間飛車」は普通はそもそも先後が逆で、向かい飛車側が3手目▲66歩で角道を止めているケースが多いのですが、今回は三間飛車側が角道を止めています。この状況を後手の得だと主張できるわけです。

 

ただ、▲66歩型のメリットもあるわけで、後手が△64歩+△63金型で高美濃や矢倉のような盛り上がった囲いを目指すと、むしろ▲65歩からの仕掛けの接点になるという側面があります。

 

一例として、「わかる!勝てる!!現代相振り飛車」のp82から結果1図を引用させていただきます(次に先手から▲65歩と▲45銀がある)。

 

 

となると後手としては、自陣は低くて手数がかからない囲いにして、積極的に攻めていく方針が有力になります。

 

一例として、「わかる!勝てる!!現代相振り飛車」のp85から第8図を引用させていただきます。後手はカニ囲いで素早く棒銀を繰り出しています。△26歩から仕掛けて後手十分です。

 

 

先手はこの後手の指し方に対応する必要があります。

 

では、具体的な検討に移ります。今回の基本図は下図(△33角まで)です。

 

 

基本図は先手の手番です。▲48玉で玉を囲いに行くのは自然ですが、それでは上述の後手の構想への対応が遅れる可能性があります。

 

ここで左銀の進出を優先させるのが先手の工夫です。

 

基本図以下、▲67銀△22飛▲56銀と進めた下図を第一図とします。この時点での後手の陣形の弱点は△34歩と△54歩です。△34歩は普通に浮いてますし、△54歩は△53銀が動いた瞬間に浮くため、早めに▲56銀型を作る事で、後手の駒の動きを制限する事ができます。

 

 

次に先手は▲45銀と出る手があるので、後手は△44歩か△44銀で受けるのが普通です。順に予想される展開を見ていきます。

 

(1)△44歩

 

 

先手の角道を止めて喜んでいたはずの後手が角道を止めさせられるという、皮肉な形になりました。また、△53銀が棒銀に行くルートも消えてしまいました。

 

先手は後手の速攻を防いだ事に満足して、▲48玉から駒組に移ります。後手は前述の通り、△64歩を突くと仕掛けの接点になってしまいますので、囲いの発展が難しい。

 

下図が一例で、先手が▲64歩と仕掛けた局面です。

 

 

△64同歩なら▲65歩の継ぎ歩攻めがあります。

 

△64同銀は▲65銀△同銀▲31角成△76銀▲22馬△77銀成▲21飛△51銀▲23馬が一例で、囲いの差を主張して強く戦って先手十分です。

 

 

 

(2)△44銀

 

 

▲45銀を防ぎつつ、△55歩で銀を追い返す手を見ています。

 

先手が攻めの棋風なら、やってみたいのは▲65銀でしょうか。後手の銀が動いたので、△54歩が浮いています。

 

△52飛では利かされなので△55歩と避けるくらいでしょうが、シンプルに▲74歩と突いてどうか。△同歩なら7筋を突破できます。現実的には左銀に手をかけすぎな感もあり、△82銀のような手との交換をどう見るかですが、選択肢の1つではあるでしょう。

 

 

また、△44銀に対して必ずしも▲65銀と出なくても、▲48玉から囲いに行くのは普通に有力で、先程の第8図では美濃に囲っていましたが、金無双に囲えば向かい飛車の攻めにもある程度耐性があります。

 

下図が一例です。5筋が開いているため、先手の端角のラインが通ってくるのが後手の密かな悩みで、△41金が動きづらい状況にあります。次に▲64歩から6筋の歩を切るのが先手の狙いです。二歩持てば、▲95歩△同歩▲93歩△同香▲92歩のような手が生じてきます。後手の陣形は端が薄いです。

 

 

ただ、先手として気になるのは△53角のようにぶつけてくる手でしょうか。角交換から手になる展開ならいいのですが、基本的には浮き飛車に構えている先手陣の方が打ち込みが多いので、実戦的に苦労が多いです。▲88角と戻っておいてもいいでしょう。

 

△53角と引いたことで今度は△55歩が浮いたので、▲95歩△同歩▲93歩△同香▲85桂△94香▲55角△44銀▲66角のような順が生じています。△55歩を突くのも負担になる可能性があるのです。

 

 

上図では、次に▲74歩から攻める手が残っています。△84歩には▲92歩(▲84同角は△83金▲66角△74金が押さえ込まれそうで嫌な感じ)です。

 

 

という感じでして、先手が△54歩に▲66歩と突いた場合も、形の理解度を高めておけば十分戦えます。

 

実戦的には▲56銀と早く出るのがおそらく大事で、後手の形を制限する事で先手の研究範囲に誘い込めるでしょう。