前回は、居飛車が△72飛型を早めに決める指し方について駒組の初期段階から検討し、下図に辿り着きました。前回の呼び方を引き継ぎ、第三図(▲67銀まで)と呼ぶ事にします。

 

 

今回から、第三図からの分岐を考えていきます。

 

(1)△24歩▲56銀△23銀

 

平凡に銀冠を目指した手です。

 

 

△32金まで間に合うとしっかりしてしまうので、これには▲65歩と仕掛けたいところ。▲28玉を保留していたからこそできる動きです。▲65歩以下の変化を見ていきます。

 

(1-A)△77角成▲同桂

 

居飛車から角交換してきた場合ですが、この場合はお手伝いです。

 

次の▲64歩が厳しい(△同銀は▲65歩、△54銀は▲65銀)ので結局△65歩と取りますが、居飛車から角交換してくれたおかげで手順に▲77桂型になっており、65への桂跳ねが石田流の権利になります。また、▲86飛△82飛の交換で王手飛車が視野に入ってきます。

 

 

以下、▲65桂(次に▲71角)△64銀▲73桂成△同銀(△同桂は▲74歩)▲74歩△64銀▲65歩△75銀▲55角が一例で石田流よしです。

 

 

(1-B)△65同歩

 

▲33角成△同桂▲77桂で次に先程と同じ▲86飛△82飛▲65桂を狙います。居飛車は意外と適当な受けが難しく、△64銀なら▲61角が好打。

 

 

以下、△82飛▲74歩△同歩▲同飛△73銀▲76飛に△51金寄▲52角成△同金で角は取れますが、▲65桂△62銀▲63歩△同金▲64歩△同金(△54金は▲63歩成△同銀▲71飛成)▲72金が一例で石田流よしです。

 

 

▲77桂の局面に戻りまして、AIの示す最善手は△94角ですが、▲96飛△32金▲65銀△64歩▲76銀△84歩▲86飛△82飛▲96歩が一例で石田流十分。打った角を負担にさせる方針が正しいようです。

 

 

(1-C)△44歩

 

角交換を拒否した手ですが、既に6筋で火がついていますので収まりません。▲64歩△54銀に▲55銀と平凡にぶつけに行きます。△同銀▲同角では石田流の調子が良すぎるので、△43銀と引いて無事を祈りますが、▲66飛△62飛▲63歩成で決まっています。△同飛は▲同飛成△同金▲72飛△62歩▲64歩、△同金は▲64歩△54金▲63歩成!△55金▲68飛△92飛▲53とが厳しい。石田流優勢です。

 

 

(2)△24歩▲56銀△23玉

 

今度は天守閣美濃を完成させた手です。この玉形には▲26歩を突いてみたいところでしょうか。次に「宮本流」の▲25歩△同歩▲17桂を狙えそうです。

 

 

最初に▲26歩に△54銀と出る変化を見てみます。▲65歩~▲64歩が銀に当たらなくなり、▲45銀と出る手も消えました。よって「宮本流」は無理筋。石田流はもう少し力を溜める必要があります。

 

居飛車の指し手は広いところですが、まずは8筋を伸ばして▲86飛を消しつつ天守閣美濃を維持する指し方から見ていきます。

 

▲36歩△84歩▲37桂△85歩に▲25歩△同歩▲65歩と仕掛けます。

 

 

(2-A)△65同歩

 

▲33角成△同桂▲46角が好打。次に▲74歩を狙いつつ△35歩▲同歩△36歩を受けています。石田流十分です。

 

 

(2-B)△77角成▲同桂

 

△88角は▲64歩△99角成▲24歩が痛打。△同玉は▲22角ですし、これを取れないのでは辛い。▲65銀から銀を捌きに行って石田流よしです。居飛車陣に傷がありすぎます。

 

 

△88角に代えて△69角は△85歩型のため生じた筋(▲86飛の受けがない)です。▲67金が大事な受け。角を打ったからには△87角成ですが、▲66飛の時に居飛車の応手が難しい。

 

 

△65歩が自然ですが、▲同桂△64歩▲73桂成△同飛▲24歩△同玉▲64飛で石田流十分です。△63歩には▲84飛があります。進めていくと、今度は△85歩型のデメリットが出てきました。将棋って難しいですね。

 

 

では次に、天守閣美濃から米長玉への発展を目指す指し方を見てみます。

 

△54銀以下、▲36歩△12玉▲37桂△23銀に▲65歩と仕掛けます。

 

 

△同歩は上記の(2-A)と同様なので割愛します。

 

△77角成▲同桂の変化も(2ーB)とほぼ変わらないようでしたが、今回は△85歩型でないため△69角は▲86飛がぴったりで無筋。△78角成は▲83飛成です。

 

よって居飛車が攻めるなら△88角ですが、▲45銀△同銀▲同桂と素直に捌いて石田流十分。▲64歩の取り込みだけでなく、▲61銀、▲86飛△82飛▲71角などが生じています。

 

 

 

次に、天守閣美濃完成後、▲26歩△54銀以下、▲36歩△44歩で居飛車が角道を止めた場合について見ていきます。

 

この場合、石田流は▲77角型で待機する意味が薄れるので、△54銀以下、▲36歩△44歩に▲59角で角の転回を目指します。

 

 

このタイミングの△45歩は▲37桂で咎めに行けます。▲45桂が受かりません。


▲59角以下、△84歩▲37角が▲64角の先手ですが、△63銀なら▲65歩△同歩▲77桂で石田流好調。

 

 

石田流は▲65桂△64歩▲86飛△82飛▲73桂成△同桂▲76飛が狙い筋で、次の▲74歩が受けにくいです。▲86飛△82飛の交換がポイントで、△64歩で持ち歩がなくなるため▲86飛を手抜けませんし、△82飛が▲37角の射程に入ります。

 

 

今回はここまでとします。1つ1つの変化を覚えるというより、形の特徴を部分的にでも掴み、指し方の手札を増やしていくのが大事だと思います。

 

次回も今回の続きで、他の指し方について見ていきます。