今回から、石田流の対抗形における左美濃対策を考えていきます。

 

今回はサブタイトルにもあるように、「宮本流」と呼ばれる仕掛けについて見ていきます。基本図は下図(△54歩まで)です。

 

 

次に居飛車は△55歩を狙っています。これを突かれると忙しくなるので、石田流はこの局面で仕掛けたいところです。

 

しかし、▲28玉型での▲65歩からの仕掛けは、▲65歩に△同歩や△84飛(第60期王将戦の豊島先生の新手)が攻略できず、▲77角型の石田流は苦境に立っていました。

 

そんな中で登場したのが「宮本流」。互いに囲い合っていますが、石田流は▲39玉型を維持し、▲26歩を早めに突いています。この基本図から▲25歩△同歩▲17桂が鮮烈な桂跳ね。宮本広志先生が初めて指した仕掛けです。

 

 

上図を第一図として、第一図からの後手の候補手ごとに分岐を見ていきます。

 

(1)△13桂

 

△25歩にひもを付ける手です。▲25桂とは跳べないので、攻めるなら▲45銀か▲65歩ですが、今回はシンプルに▲65歩と突いてみます。△同歩は▲同銀△64歩▲74歩で石田流の攻めが決まります。

 

 

次に石田流からは▲64歩△同銀に▲15歩△同歩▲14歩があります。

 

この筋を受けるには△23玉と上がりますが、▲33角成△同銀▲64歩△同銀と陣形を散々崩されます。ちなみに△23銀と上がっていたら、▲33角成を△同玉で取るしかないため、より危ないラインに玉が行く事になります。

 

 

ここから、▲74歩△同歩▲同飛△73銀▲54飛△53歩▲55飛が一例。次に▲71角があるので、△64銀▲45飛と追います。

 

 

石田流は次に▲24歩の叩きを狙っており、△同玉は▲46角、△同銀は▲65歩△73銀▲74歩△同銀▲55角です。あるいは▲25桂△同桂▲同飛でも捌けた形です。これらを味良く防ぐ手が難しい。

 

例えば△73歩なら、▲46角△44歩▲24歩△32玉▲25桂△45歩▲33桂成△同玉▲64角で石田流よし。居飛車陣はガタガタで、次の▲55角の王手が妙に受けづらい形です。

 

 

(2)△23玉

 

あらかじめ角のラインを避けた手です。▲25桂には△22角と居角のラインを維持した位置に引きます。そこで▲24歩が先ほども出てきた急所のたたき。逆に、居飛車に△24歩を先着されると、この仕掛けはとん挫します。

 

 

△12玉は▲15歩で端玉を攻めて石田流優勢。よって△24同玉ですが、▲65歩と追撃します。

 

△77角成▲同桂△25玉は、▲64歩△同銀(△72銀は▲65桂や▲45銀で攻めが続く)▲46角が銀取りをかけつつ、居飛車玉の退路を断つ好手。この「▲46角」という符号が「宮本流」の1つのキーになります。△62飛で銀取りを受けると、▲45銀が▲13角成以下の必死級の詰めろです。

 

 

こうなってはたまらないので、▲65歩には△44歩で角交換を避けますが、居飛車の角が浮いている事に目を付けて、▲45銀と出ます。△43金には▲26飛と回り込み、次に▲33桂成の開き王手から、△同玉▲44銀△同金▲同角△同玉▲22飛成を狙います。△23歩でこの筋を受けるなら、▲56歩~▲68角を狙って石田流十分です。

 

 

(3)△31玉

 

これも角筋を避けた手です。▲25桂△22角に▲24歩を先着するのが急所。

 

 

次に石田流から▲45銀があるので、居飛車は△23歩▲同歩成△同銀で受けますが、そこで▲65歩と突きます。△44歩なら、▲24歩△同銀▲64歩△同銀▲23歩で角が取れます。

 

 

△44歩に代えて△77角成▲同桂△24歩には、▲66角△44角▲同角△同歩▲71角△72飛▲44角成で石田流優勢です。

 

 

(4)△44歩

 

居飛車が角道を止めてきた場合です。ここでも▲25桂はない手ではなく、△42角▲65歩△43金▲45銀に△53角▲56飛が一例で手が続きます。

 

ただ、この場合は▲25桂に代えて、単に▲65歩の方が勝ります。

 

 

次に▲25桂~▲44角があるので、居飛車は△43金で受けておきます。石田流は▲46歩と突き、▲25桂~▲45歩を用意します。

 

ここで△23玉は、▲25桂△22角▲74歩△同歩▲24歩△同玉▲45歩△25玉▲44歩△33金▲64歩△同銀▲45銀(下図)が一例で、次に▲26飛△同玉▲36銀の三手必死があります。△24玉くらいですが、▲74飛△73銀▲54飛△52歩▲74歩△62銀▲55角のように攻めが続きます。

 

 

△23玉に代えて△45歩で角交換を迫る手には▲同歩と取ります。

 

 

以下、△77角成▲同桂△78角が居飛車の定番の反撃ですが、▲44歩△42金引(△同金なら▲71角のラインに入る)▲66飛△87角成▲64歩△77馬▲65飛△55歩▲63歩成△56歩で銀を取り合った後、▲24歩と垂らしておいて石田流十分です。

 

 

という事で、今回は宮本流の典型例(対△54歩型左美濃)について見てきました。

 

石田流らしい攻め筋が連発で、難しい部分がありながらも面白い仕掛けです。

 

しかし、今回扱った基本図以外にも居飛車の指し方は無数にあるわけで、「これにて左美濃完全攻略!」という事にはなりません。

 

次回から少し局面を戻して、色々な変化について見ていきます。