今回は端歩を受けた場合の一直線穴熊に速攻を仕掛けたいと思います。

 

今回の基本図は下図(△11玉まで)です。

 

 

今回の居飛車は飛車先の歩を突く事なく一直線に穴熊に潜りましたが、1筋の端歩の交換は入っているという状況です。

 

この基本図で▲17桂は跳ねたいですが、端歩の交換が入っていて▲13桂成と飛び込む手がないため、▲74歩から仕掛けます。

 

▲74歩に△同歩▲同飛△22銀は▲34飛と捌いて石田流十分。歩を手持ちにすれば、▲17桂から端攻めを狙えます。

 

よって▲74歩は手抜いて△22銀とハッチを閉めますが、そこで▲17桂と跳ねます。

 

 

この局面からの分岐を見ていきます。

 

(1)△54歩

 

AIが示した候補手で、▲65歩~▲55角を消したり、△53銀や△55歩を作ったり、△44角が追われた時の逃走ルートになったりするかと思います。

 

石田流は狙い通り▲25桂と跳ねだします。

 

(ア)△51角

 

▲15歩と突きます。△同歩は▲73歩成△同銀▲65歩で▲13歩の端攻めが確約されます。

 

確認すべきは▲15歩に△24歩でしょう。▲14歩△25歩で桂馬を取られますが、▲65歩△32金に▲16飛と回ります。この飛車の応援があるため、桂損はすぐ取り返せます。

 

 

△74歩は、▲13歩成△同香に▲14歩△同香なら▲同飛△13歩▲34飛のように捌けます。

 

▲14歩には△12歩が最善ですが、▲13歩成△同歩に▲26歩が少し見えづらい攻め筋。△同歩には▲25香が刺さり、△53銀なら▲25歩△23歩に▲14歩と合わせて、再び飛車の捌きを狙います。石田流十分です。

 

 

(イ)△24角

 

この位置だと端が堅いですが、△24歩がないので焦る必要はありません。▲15歩△同歩▲73歩成△同銀▲65歩△32金に▲36飛が定番の揺さぶり。

 

 

受けるなら△35歩ですが、後に端攻めで駒が入った時に打ち込める空間(34)ができました。▲56飛△52飛と先手を取りつつ飛車を割銀の位置に誘い込み、▲13歩を決行します。

 

△同香は▲同桂成△同桂▲34香。△同角なら▲同桂成△同香▲41角で、△62飛なら▲54飛の要領です。

 

▲13歩に△同桂▲同桂成△同香▲34桂に△33銀は▲26歩がじわりと厳しい。△14香で角の逃げ場所を作りますが、▲33角成△同金(△同角は▲41銀)▲25銀で攻めが続きます。石田流十分です。

 

 

(ウ)△55角

 

居角のラインの逃げ場所で、これまで(△13歩型)であれば角を追う手は有力でしたが、今回は▲13桂成がないため、追っている間に△24歩で桂馬を取られるのが気になります。

 

▲15歩に△同歩は▲73歩成△同銀▲65歩△88角成▲同銀に△31金▲77桂が一例。

 

居飛車が右金を動かせば、▲85桂が飛車成を狙って有効になります。この手が生じるのは△83歩型のデメリットの1つでしょう。

 

▲77桂の時の△24歩には▲13歩もありますが、▲46角(下図)もぴったり。△25歩は▲74歩、△55角なら▲24角です。

 

 

最初の▲15歩に△24歩は、▲14歩△25歩▲73歩成△同銀▲65歩△88角成▲同銀△17歩▲同香△44角(下図)がハッとする両取りですが、▲13歩成で切り返します。

 

 

▲13歩成に△同桂は▲16香(▲26歩や▲16飛も有力)△88角成なら▲14歩で石田流十分。

 

▲13歩成に△同香は▲同香成△同銀▲23角がこの場合の定番の角打ち。

 

 

△32金は▲同角成△同飛▲23金△82飛▲12歩△同飛▲同金△同玉▲31飛が、金取りかつ▲73飛成~▲32飛成の詰みを狙った飛車打ち。

 

 

△32香が最善ですが、▲14歩△24銀(△22銀は▲12香まで)▲13香△22玉▲12角成△31玉▲77桂で石田流十分です。

 

 

(エ)△44角

 

基本的に(ウ)△55角の場合と同じなのですが、この場合は石田流が▲65歩で角交換を迫った時に△55歩で拒否する手がありますので、その変化を見てみます。

 

▲15歩△同歩は、▲73歩成△同銀▲65歩△55歩に▲46飛と回り、▲44飛を狙います。

 

 

△32金には、▲44飛△同歩▲74歩△同銀▲55角△92飛▲46角打△73歩▲13歩△同桂▲同桂成△同香▲25桂△12玉▲44角(次に▲22角成△同金▲33銀)が一例で石田流よしです。

 

 

▲15歩に△24歩の場合は、上記の▲46角打の時に桂馬が端攻めに参加していないため、同じ手順では少し紛れます。

 

▲14歩△25歩▲73歩成△同銀▲65歩△55歩に▲74歩△84銀を利かせた後、やはり▲46飛と回ります。

 

 

この▲74歩の利かしを入れた場合、先程と同様の手順を辿った時の▲46角打の下図の局面で、△73歩のような受けがありません。△54桂が最善ですが、▲91角成△46桂▲同馬で次に▲24桂や▲13香を狙って石田流十分です。

 

 

(2)△32金

 

穴熊を強化する自然な手です。△31金型と違いひもはついていませんが、23をカバーしたり△24歩型の時に△23金と上がる手があるため、端攻めへの耐性が強いです。

 

▲25桂はやや無理筋で、△51角▲15歩△同歩▲73歩成△同銀▲65歩△24歩▲13歩△同桂▲同桂成△同香の変化の時、先程の△54歩型なら▲53桂がありましたが、今回はありません。また、▲36飛に△23金の受けがあります。

 

 

そこで▲73歩成△同銀にじっと▲26歩を突き、力を溜めておきます。

 

ここで居飛車の手は広いですが、△15歩▲同歩△16歩は▲25桂~▲16香で切り返せるため居飛車が指しすぎです。

 

 

代えて△52金なら71の利きがなくなるので、▲77桂で次に▲85桂を狙って石田流十分。石田流は攻撃準備ができているため、居飛車としては△32金の次の手は案外難しいところです。

 

△72飛は角のラインを避けつつ7筋の逆襲を狙っていますが、石田流は▲25桂と仕掛けます。

 

 

この局面からの分岐を見てみます。

 

(1)△51角

 

▲15歩に△同歩は、▲77桂と跳ねて袖飛車を咎めに行きます。次の▲65桂の受け方が難しい。△24歩にはいつでも▲13歩があるので大丈夫です。

 

△52飛と逃げるなら▲65歩の感触が良く、飛車の横利きが通ります。また、次に▲85桂で角道も通ります。石田流十分です。

 

 

▲15歩に△24歩は、▲14歩△25歩に▲25歩と取れます。△15歩▲65歩△14香には、▲74歩△84銀(△同銀は▲73歩△同飛▲55角)▲55角△92飛▲86歩で▲85歩△同銀▲75飛△94銀▲73歩成を狙って石田流十分です。

 

 

 

(2)△24角

 

▲65歩△52金に▲36飛△35歩▲56飛△42金右に▲15歩△同歩▲13歩と端攻めに行きます。先程と同様に34が空いているのがポイントです。

 

 

△同香は▲同桂成△同桂▲34香。△同桂は▲同桂成△同香▲45桂が受けづらい。次に▲25歩と▲53桂成があります。開戦前の▲26歩が活きていますね。

 

 

(3)△44角

 

今回は△53歩型で△55歩のような手がないので、△55角は割愛します。

 

▲15歩△同歩は▲65歩△88角成▲同銀△24歩に▲13歩と打ちます。

 

 

△同桂でも△同香でも、▲同桂成△同銀に▲64歩が急所の一手。△同歩▲63角△82飛▲81角成△同飛▲73飛成で石田流よし。次に▲82銀で飛車も取れそうです。△64歩型のため、▲73飛成の瞬間△55角がないのもチェックポイントです。

 

 

戻りまして、▲15歩には△24歩がやや手強く、▲25桂の前に▲15歩を突く方が正解かもしれません。

 

▲14歩△25歩▲65歩は、△88角成▲同銀△18歩▲同香△45角と打たれます。これが生じるのが▲26歩のデメリットです。どんな手にもメリットとデメリットがあります。以下、▲13歩成△同香▲同香成△同銀▲77桂△89角成▲55角が一例でいい勝負です。

 

 

▲14歩△25歩に▲同歩は、△17歩で香の利きを止められる手が気になります。▲24歩と伸ばして▲41角等の筋の時の力を溜める手も有力ですが、△54歩で角道を止める△55歩を用意されると面倒なので、▲65歩と突いてしまいます。

 

 

△88角成▲同銀△18歩成▲同香△45角には▲17香△89角成▲74歩△82銀▲77銀で石田流十分です。▲41角、▲64歩、▲13歩成などの手段が残っています。

 

 

という事で、今回は△82飛+△14歩型の一直線穴熊に速攻を仕掛けていきました。

 

基本的な攻め方としては▲74歩から一歩手持ちにし、浮き飛車で揺さぶりつつ、▲15歩△同歩▲13歩の端攻めで駒を貰って攻めていくという感じでして、単純と言えば単純です。

 

ただし、△44角のように居角のラインに逃げた場合、角を追っていると△24歩で桂馬を取られてしまうので、▲65歩で交換を迫って急いで手を作りに行く点は#1と比べると定性的に考え方が変わってくるので、チェックしておきたい所です。