今回も角交換型中飛車の将棋を検討していきます。

 

今回は向かい飛車に振り直すのでなく、7筋の位を取って石田流含みの浮き飛車で戦う指し方を考えていきます。基本図は下図(▲75歩まで)です。

 

 

△63銀で▲54歩を受けられていますので、5筋からの攻めは難しい状況です。

 

基本図で△74歩▲同歩△同銀は▲54歩で先手十分です。居飛車は△63銀型を維持する必要があります。△72飛には▲83角がありますので、▲75歩型を咎める有効な手段はすぐにはなさそうです。

 

基本図から△42玉に▲56飛は△65角でダメなので、飛車浮きのためには▲78金が必要な手です。以下、互いに駒組を進めた下図(▲56飛まで)を第一図とします。

 

 

第一図から、居飛車側の指し方は広いと思いますが、まずは居飛車が高美濃の形を目指した場合を考えてみます。第一図以下、△44歩▲68銀△43金▲77桂と進めます。

 

浮き飛車に構えた事で、中飛車は左の銀桂を動かしやすくなりました。対して居飛車は、△43金型に組んだことで、△54歩から5筋の位に反発する手が可能になりましたので、早速△54歩と突いてもらいます。▲同歩△同銀と進んだ局面を第二図とします。ちなみに、△54歩に代えて△74歩は▲76飛△75歩▲同飛△74歩▲85飛で居飛車は飛車交換を避けられず、中飛車十分です。

 

 

第二図で攻めるなら▲76飛と回り▲74歩を狙います。△84飛は▲74歩△同歩▲62角で中飛車十分。▲74歩に△同飛から飛車交換になっても中飛車十分です。先手の陣形は飛車の打ち込みに強い格好です。

 

よって▲76飛には△63銀と引くことになります。この手には▲85桂が鮮烈な桂跳ね。こういう手があるから、石田流は人気なんですよね。△同飛には▲96角、放っておけば▲73桂成△同桂▲74歩です。

 

 

▲85桂には△65角▲77飛△84歩▲66歩△83角▲73桂成△同桂▲67金(▲79飛を可能にする)がAIの示す一例で一局。中飛車は桂損ですが、居飛車は歩切れな上、飛車角が使いづらく、苦労も多いでしょう。中飛車からは次に、▲79飛(桂馬の当たりや王手飛車のラインからの退避)の後、▲74角と打つ手が楽しみです。

 

 

どうやら、居飛車が5筋を逆襲して△63銀が持ち場を離れるのはやや危険なようです。

 

そこで△54歩に代えて△24歩で銀冠を目指してみます。ここで▲85桂は△同飛▲96角に△75飛が金取りで入るため失敗です。▲76飛型でなければ、▲85桂は成立しません。

 

しかし中飛車には、代えて▲96角と打つ手があります。▲85角と取れれば中飛車ペース。次に▲86飛と回って大捌きを狙えます。

 

 

とはいえ居飛車側の受けも簡単ではなく、△52銀▲85角△94歩▲86飛が一例で中飛車十分。次に▲52角成△同飛▲81飛成があります。

 

 

よって、居飛車は△24歩に代えて△94歩が無難な対応です。▲96角に△93桂を用意しています。

 

ここで中飛車は、▲76飛で石田流に組む手が普通に有力です。居飛車は△95歩で▲85桂△同飛▲96角を物理的に消します。以下、中飛車は▲56銀型を作り、▲65歩からの仕掛けを狙います。厳密な形勢はともかく、こういうわかりやすい展開であれば自分は中飛車持ちです。

 

 

ただし、一応注意点はあって、▲66歩~▲67銀~▲56銀あるいは▲57銀~▲56銀~▲66歩の順でないとダメです。例えば▲57銀の後に▲66歩を突くと△89角を喰らいます。▲56銀+▲66歩型の時に△89角は、▲67銀と戻って大丈夫です。

 

 

また、今回の場合は▲76飛以外にも▲76角という面白い手があるようです。

 

 

▲85角を防ぐ△93桂には▲74歩と突きます。△同歩は▲43角成△同銀▲73金で中飛車よしです。

 

 

▲74歩に△同銀は▲54歩△同歩▲同角△同金▲同飛で▲53飛成の受けが難しいだろうと主張します。居飛車は角を打って受けるのは気が引けますし、△52歩なら▲64飛△63歩▲44飛のように歩をパクつけます。

 

 

今回はここまでとしておきます。個人的には、前回までのように向かい飛車に振り直したケースより、楽しい変化が多い印象です。


次回は、今回見てきた筋に対して警戒しながら居飛車が駒組してきた場合について、検討していきます。