今回から、角道オープン中飛車で角交換になった場合について調べていきます。

 

基本図は下図(初形から▲76歩△84歩▲68銀△62銀▲56歩△85歩▲77角△34歩▲58飛)までとします。5筋位取り中飛車であれば、▲58飛に代えて▲55歩と指すところでしょうが、角道オープン中飛車の思想的には、△64銀型があり得る段階では▲55歩を保留する方針で指す事になります。居飛車は△85歩を保留する指し方も有力ですが、ここでは△85歩を決めた形で進めます。

 

 

基本図からの居飛車の指し方は当然広いですが、今回はテーマが角交換型ですので、居飛車は早々に角交換します。△77角成▲同銀で下図です。ゴキゲン中飛車の丸山ワクチン風の形になります。

 

 

ここから居飛車は色々な指し方が考えられますが、強い居飛車党ならここで△14歩を突いてくるでしょうか。丸山ワクチンの将棋で佐藤康光先生が最初に指した「佐藤新手」と呼ばれる手です。

 

丸山ワクチンの将棋では、居飛車は左美濃を目指すのが一般的らしいのですが、この△14歩には△32銀型に対する▲22角の対処の意味があります。

 

例えば、▲48玉△32銀▲55歩(▲22角は△33角)△45角(両成を狙った角打ち)に▲22角は、△14歩の効果で△13香と桂馬の利きのある場所へ香車が逃げられます。

 

 

よって、中飛車は△45角が消えるまでは▲55歩を突きづらい事情があり、▲38玉までは指すところです。27をカバーすれば△45角が両成の手になりません。

 

 

ここで居飛車が何を選択するかが1つの分岐点です。色々な手がありますが、今回は定跡通り△64歩と指します。これは▲55歩に△63銀を用意した手で、△14歩を指すようなしっかり勉強している居飛車党なら△64歩も突く気がします。

 

 

以下、今回は▲48銀(53のキズを消しておく)△42玉▲88飛と早囲いで向かい飛車に振り直して速攻を狙ってみます。この局面を第一図とします。

 

 

第一図で中飛車には、いわゆる「逆棒銀」の仕掛けがあります。

 

居飛車が△31玉と入城した局面から▲86歩△同歩▲同銀と仕掛けて、その後の展開を見たいと思います。

 

 

(1)△15歩

 

ほぼ手待ちみたいな手をした場合です。中飛車は▲85銀と立ちます。

 

 

居飛車が尚もパスするような手を指せば、▲84銀や▲83歩で逆棒銀が成功しますので、△72金で受けてきます。

 

△72金に▲84銀は△83歩で収められますし、▲75歩は△76角でしびれます。

 

よって▲84歩で押さえておきます。これで▲75歩を突く事もできます。すぐ戦果が挙がるわけではありませんが、中飛車不満なしです。

 

 

 

(2)△72金

 

中飛車は▲85銀と出ますが、居飛車は△74歩で△73桂を用意します。

 

 

攻めを継続したいので、▲55角と打ちます。△33桂のような受けなら▲64角があるので、△22角と角で受けますが、居飛車が角を手放したので前述の△76角がなくなり、▲75歩が突けるようになりました。

 

 

△同歩▲84銀に△83歩なら▲75銀と取り返し▲64銀を狙います。△63銀と受けた手に▲74歩と押さえておいて中飛車十分。64の地点を狙っていける形です。

 

 

ただ、居飛車は△83歩に代えて、△55角▲同歩△87歩▲同飛△76角が定番の反撃筋です。▲86飛△67角成▲83歩には△92飛で耐えています。以下、▲75銀△85歩▲88飛△76馬▲78飛が一例で、中飛車も戦えますが、中飛車が好んでやる展開とは正直思えません。

 

 

ここまで見てくると、どうも居飛車が△72金のように8筋を強化できる時に逆棒銀に行くのは、ない手ではないけれど、シンプルに8筋を突破しきれる感じではなく、難しい戦いになりがちだという事がわかります。

 

そこで第一図から駒組をもう少し進めてみます。

 

▲16歩△47銀▲39金△52金右と進めて下図です。第二図とします。

 

 

この第二図から、▲86歩△同歩▲同銀と仕掛けます。居飛車は手が広いですが、△74銀の変化を見てみます。△63銀型を活かして▲85銀を受けています。▲75歩は△同銀で無効です。

 


中飛車は▲85歩と押さえるくらいですが、△54角がやはり定番の角打ち。▲78金△76角▲77金△87歩でしびれます。▲同金は△67角成です。

 

 

では第二図から▲78金△33桂の交換を入れてどうかというのも一応見てみますが、▲86歩△同歩▲同銀に△87歩でまたしびれます。▲同飛は△69角▲88飛△78角成▲同飛△86飛、▲同金は△79角▲78飛△35角成です。

 

 

といった感じでして、逆棒銀は色々な振り飛車本で推奨されている仕掛けではありますが、個人的にはあまり振り飛車が楽しくなれない印象です。

 

アマチュア1~2級以下相手なら有力かと思うのですが、それ以上だとなかなか通用しない気がします。反撃筋が比較的定番化されているのも辛い所です。逆棒銀は有名な仕掛けですので、ちゃんと対策している居飛車党が多いイメージです。

 

次回は、別の仕掛けの形を模索してみます。