今回から、井出先生の「現代後手四間飛車のすべて」を参考にしながら、後手ノーマル四間飛車の銀冠穴熊対策を検討していきます。

 

下図を基本図とします(△64歩まで)。

 

 

まずはこの基本図から、居飛車が▲86歩として素直に銀冠を組みに行った場合の変化を見ていきます。

 

▲86歩以下、△54歩▲87銀△74歩▲78金△73桂と進めます。▲86歩を突いた時点で急戦の線が細くなったので、△74歩を突きやすくなっています。

 

 

ここで角道を止める▲66歩ではなく、▲66角としてみます。この位置は▲68銀の後、▲57角への転換を狙っているので、すぐに△65歩(△65桂は消えてしまう)と追います。

 

ここから振り飛車は、▲77角△63金▲98香△84歩▲88玉△41飛▲68金右△52金▲99玉△81飛と地下鉄飛車で8筋に飛車を回ります。△62玉型だからできる構想です。ちなみに、▲98香が▲88玉よりも先なのは、▲88玉型の期間(振り飛車の角のラインに入る期間)をできるだけ短くしたいためです。

 

 

以下、▲88金に△85歩と仕掛けます。

 

(1)▲85同歩

 

△85同桂▲86角△73銀と上がります。△63銀型を決めていたら73には上がれないところです。以下、▲78金右△84銀と進めた局面から、分岐を見ていきます。

 

 

(A)▲68銀

 

居飛車が右銀を囲いに寄せてきた場合です。振り飛車は角道を開けつつ、9筋と7筋に味をつけます。

 

△45歩▲79銀△95歩▲同歩△75歩(△97歩も有力)▲同歩に△64金が次に△75銀を狙う手厚い攻め方。△64金に代えて△42角では▲74歩で角交換を攻められてしまいます。居飛車の角を負担にさせつつ、振り飛車の角を働かせたい将棋ですので、交換は損です。

 

 

▲76銀と守る手に対しては、銀が動いて端が弱くなったので、△97歩▲同桂△95銀と出るのがより厳しい。

 

 

以下、▲同角△同香▲85桂に、構わず△97歩と攻めます。▲73銀は△51玉でひとまず問題ありません。

 

▲97香△同香成(後手の角が利いてるため、先手は取れない)▲64銀成△95香と力を足すのが正解で、振り飛車勝勢です。

 

 

 

(B)▲24歩△同歩▲22歩

 

 

居飛車の常套手段の仕掛けですが、手番は振り飛車なので、反撃していきます。

 

△95歩▲同歩△97歩▲同桂△同桂成▲同香△85銀▲59角に△86歩が激痛で振り飛車優勢。

 

 

▲96銀は△同銀▲同香△87銀。▲98銀には△76銀▲77歩△85銀▲21歩成△96歩が一例です。

 

 

(C)▲59角

 

角をどかして▲86歩を作った意味があります。振り飛車はゆっくりしていられないので、△95歩から仕掛けます。

 

△95歩▲同歩△75歩▲86歩に、△97歩▲同桂(▲同香には△同桂成▲同桂△76歩▲同銀に△96歩)△同桂成▲同香と97で清算した後、△76歩▲同銀に△42角で振り飛車よし。次に△95香、△75銀、△95銀、△85歩等から攻めが狙えます。

 

 

(D)▲66歩

 

アマチュアが指しそうな手ではありませんが、一応取り上げます。△同歩は▲同銀、▲64歩などで、振り飛車の玉頭にプレッシャーがかかりますので、構わず△45歩と角道を開けます。

 

 

▲65歩△75歩(居飛車の角道を止めつつ、7筋に攻めの味を作る)に▲68飛が迫力ありますが、振り飛車は△95歩から反撃します。

 

以下、▲64歩△73金▲95歩に△51玉が最善手。代えて△76歩も悪手とまでは言えませんが、86の角のラインが通ってくるため、居飛車の猛攻を受ける可能性があります。

 

 

居飛車が▲55歩(△同歩には▲53歩等が生じる)と追撃してくるなら、更に△41玉と安全地帯へ退避し、△97歩からの攻めを楽しみにします。振り飛車よしです。

 

 

(2)▲78金右

 

△85歩と仕掛けた局面まで戻り、▲85同歩ではなく▲78金右と応じ、居飛車が銀冠穴熊を完成させた場合について、見ていきます。

 

△86歩▲同銀(▲同角は、△85歩▲68角△42角で、8筋の位が大きい)△83銀に▲87歩が8筋を収めようとする指し方。

 

 

振り飛車は△84銀と棒銀に行きます。△95歩▲同歩△97歩▲同香△85桂が生じたので、居飛車は▲68角で△85桂の当たりを避けますが、△45歩▲36歩に△85銀とぶつけます。

 

 

(A)▲85同銀

 

△85同桂に▲86歩なら△87歩が刺さります。▲同金右には△78銀です。

 

△85同桂に▲86銀には、△95歩▲同歩△97歩▲同香△同桂成▲同桂△83香(下図)で振り飛車よし。

 

 

▲97同香に代えて▲97同桂なら、△同桂成▲同香△64桂▲77銀△85銀が一例で、振り飛車よし。

 

 

(B)▲37桂

 

次に▲45桂と跳ねる狙いがあります。振り飛車は△86銀と取りますが、▲同歩も▲同角もあるところです。

 

▲同歩なら、△69銀▲77金直(▲79金は△87歩▲77金△75歩▲同歩△86飛)に△85歩が厳しい。▲同歩△同桂▲87金には△78銀不成があります。居飛車の金駒は、87をケアしたいけど、77にも行きづらい状況になっています。

 

 

▲同角には、△85銀▲59角△76銀と出た時に、居飛車に持ち歩がないため▲77歩を打てず、振り飛車よしです。

 

 

ちなみに、(2)の変化の最初の方の△84銀と出たタイミングで▲59角と引いた場合、△45歩▲36歩△85銀のぶつけは悪手です。▲同銀△同桂▲86歩の時、△87歩では▲同金に△78銀がありません(飛車の横利きが通っているため)。

 

そこで▲59角には△42角と引き、ラインを変えて力を溜めます。

 

 

以下、▲66歩と位に反発する手には、△85歩▲97銀△75歩▲65歩△76歩▲66銀△64歩が一例で振り飛車よし。手厚くじわじわ押しつぶしていきます。

 

 

 

次は基本図から、居飛車が▲36歩で急戦を匂わせたケースです。この手に振り飛車は△71玉で急戦に備えますが、それにより地下鉄飛車の構想が使いづらくなります。

 

 

 

以下、▲86歩△54歩▲87銀△74歩▲78金△73桂▲66角と進めます。前回は、ここで▲57角型を阻止するために△65歩を突いていました。

 

しかし今回は、仮に▲68銀△65歩▲57角なら、△55歩▲同歩△45歩(下図)で△55角を狙い、振り飛車十分。これは▲36歩型(▲28飛のコビンが開いている)を咎めた格好です。よって、△65歩に代えて△63金を選んで大丈夫です(△65桂の余地を残しておく)。

 

 

△63金以下、居飛車は銀冠穴熊を目指します。振り飛車は△41飛で△42角と地下鉄飛車の準備をします。▲98香△65歩▲77角△84歩▲68金右△41飛▲88玉△52金▲99玉△42角と進んで、下図です。

 

 

ここから、▲88金と▲46歩の変化について、見ていきます。

 

(1)▲88金

 

△85歩と仕掛けます。

 

▲同歩は△同桂▲86角△同角▲同銀△64角で飛車銀両取りが決まります。▲46角△86角▲91角成と切り返され、次に▲87香を狙われますが、そこで△73銀として馬道を止めるのが好手(下図)。▲87香は△64角が飛車取りで入るので、問題ありません(馬道が通っていれば▲同馬でダメ)。

 

 

よって、△85歩には▲78金右と固めるのが一案です。以下、△86歩▲同銀に△62玉▲87歩△81飛で、手損にはなりますが、やはり地下鉄飛車で攻略を目指します。

 

 

▲46歩で▲45歩から攻めを狙う手には、△85歩から反発します。▲97銀△75歩▲同歩△同角▲68角に△55歩と突きます。▲同歩は△56歩▲48銀△66歩▲同歩△同角で△65桂を作りつつ角を捌いて振り飛車十分です。

 

 

△55歩以下、▲45歩△56歩▲同銀△39角成▲26飛△42馬のような千日手模様が一例。振り飛車不満なしです。

 

 

(2)▲46歩

 

▲45歩を作りつつ、△64角を緩和します。ここで△85歩▲同歩を入れた後に△62玉(下図)と進めるのが井出先生の推奨手ですが、研究していないとアマチュアではなかなか指せない手でしょう。

 

 

8筋の突き捨てを入れず、単に△62玉もある手ですが、▲45歩△85歩▲44歩△32銀▲48飛のように攻め合いになる可能性があり、実戦的に面倒です。また、▲86銀のように85の歩を守っても、△81飛が次に△95歩▲同歩△85桂のような手を狙えるので、8筋の突き捨てを咎める手段が居飛車側は難しいです。

 

この△85歩▲同歩△62玉に▲45歩にも、△85桂があります。▲44歩△32銀▲43歩成△同銀▲11角成には、△86歩が厳しく、振り飛車よしです。△62玉型は危険なようですが、攻撃陣が組みやすいため、居飛車の攻めに反撃が利きます。

 

 

そこで、△85歩▲同歩△62玉には仕掛けずに▲88金と固めます。振り飛車は△81飛と回ります。

 

 

▲78金右に△95歩▲同歩△85桂と攻めていきます。ここから、角の逃げ場所について、場合分けして見ていきます。

 

(A)▲86角

 

△同角▲同銀△97歩▲同桂△同桂成▲同銀に△69角が急所の攻め。

 

 

居飛車は△78角成▲同飛△87桂だけは喰らってはいけないので、▲86歩などで受けますが、振り飛車は△36角成で馬を作ります。振り飛車十分です。

 

(B)▲68角

 

△97歩▲同桂△同桂成▲同金には、△73銀~△84銀の棒銀で押しつぶしていくイメージです。

 

▲同金に代えて▲同香なら、▲94歩などで急かされると実戦的に面倒なので、振り飛車は攻め続けます。△85桂と打ちますが、▲96香には△97桂成があるので、居飛車は▲86歩で振り飛車の角の利きを止めつつ桂取りをかけます。

 

△97桂成▲同金に、やはり△73銀と上がります。端攻めで薄くした後、銀を出していく感覚です。△84銀~△92香打 or △83香のように8~9筋を縦の攻めで押しつぶすのを目指します。

 

 

次回も銀冠穴熊の将棋をやっていきます。