今回から、▲66歩型居飛車穴熊 vs ノーマル四間飛車の形を調べていきます。

居飛車穴熊シリーズでは、▲66銀型や▲57歩型(一直線穴熊)に対しては早い仕掛けを狙いましたが、この▲66歩型に対しては、穴熊に組んだ後に仕掛けを狙います。耀龍四間飛車と同じ構想です。

一直線穴熊までと違い、「△62玉型」は外しています。今回は美濃に入る場合が多いです。

さて、まずは、大橋先生の耀龍四間飛車の本と同様の変化を、美濃風の駒組で追っていきたいと思います。

 

基本図は下図とします(▲88銀まで)。居飛車が穴熊のハッチを閉めたところです。

 

 

ここで後手の手番ですが、選択肢は広いです。△64歩、△84歩、△71玉、△45歩辺りが指したい手です。

 

ここで考慮したいのは、△45歩+△64歩型まで来ると、居飛車から▲35歩△同歩▲24歩△同歩▲65歩の仕掛けがあり得なくはない点です。

 

 

上図は居飛車がやや無理筋で、▲67金+▲78金型まで行かないと、厳密にはやりにくい仕掛けなのですが、無駄に相手に仕掛けるを与えるのも微妙です。

 

そこで、基本図から△71玉としてみます。そこでの居飛車も手が広いですが、仕掛けをちらつかせるなら▲36歩としてみたいところでしょうか。振り飛車は、▲38飛に△44角を用意するために△45歩です。下図を第一図とします。

 

 

振り飛車の角道が開いたので、一応、居飛車は▲65歩からの決戦が可能になります。試しに仕掛けてみます。

 

・第一図から▲24歩△同歩▲65歩

 

△77角成▲同桂(▲同銀は△65桂)に△75歩の桂頭攻めが厳しく、振り飛車十分です。

 

 

よって、この筋をカバーするために、△45歩には▲67金とします。

 

振り飛車は、△64歩か△84歩か迷うところですが、やはり居飛車の仕掛けを誘発しないように、△84歩と指しておきます。下図を第二図とします。

 

 

ここでも、居飛車から仕掛けてみましょう。▲67金型にした事で△75歩が消え、△84歩が浮いている事も一応狙い目です。今度は3筋も突き捨てます。

 

・第二図から、▲35歩△同歩▲24歩△同歩▲65歩

 

△77角成▲同桂△22飛▲66角△33角▲同角成△同桂▲66角△42金▲84角が一応狙い筋で、次に▲34歩があります。

 

しかし、振り飛車は△43銀と形よく受ける事ができます。この仕掛けも無理筋でした。形勢自体は互角ですが、2筋からの逆襲という方針がわかりやすい振り飛車が、実戦的には指せると思います。

 

 

よって、居飛車は▲78金と固めます。振り飛車もそろそろ仕掛ける準備ができてきたので、△64歩と突いてみたいところです。第三図とします。

 

 

ここでの居飛車の仕掛けが本命の仕掛けです。

 

・第三図から、▲35歩△同歩▲24歩△同歩▲65歩

 

 

先ほどと同様に△77角成▲同桂△22飛と対応すると、▲44角△33角▲同角成△同桂▲64歩で、次に▲34歩と▲75歩△同歩▲74歩を狙われ、居飛車が優勢です。

 

 

よって、今度は▲65歩に対して△同桂と取り、銀に当てつつ歩を渡さないのが正しい対応です。

 

以下、▲33角成△同桂に▲68銀は、△22飛や△25歩と受けに回る手もありますが、△46歩▲同歩△同飛▲24飛と捌き合う方がわかりやすいでしょうか。

 

 

以下、△45桂▲21飛成△69角▲79金△58角成が一例で、互角の勝負です。

 

 

また、△33同桂に対して、居飛車が銀を逃げずに▲24飛と走ってしまう手もあり得ます。

 

 

以下、△57桂成▲同金△46歩▲同歩△39角▲47金(▲67金寄なら△46飛)△66角成▲34歩△58銀が一例で互角でしょう。

 

 

▲33歩成には△同馬と取れる上、飛車にあたるので、それは居飛車が辛いです。よって、▲77角△同馬▲同金△47銀成▲33歩成△46飛辺りが相場で、互角の変化です。


といった感じで、△64歩型の場合、居飛車から仕掛けはあるのですが、振り飛車も互角程度には戦えます。

 

 

 

では次に、第三図から、仮に居飛車が▲16歩と手待ち(実は意味がある)した時に、振り飛車が△85桂から仕掛けるとどうなるかを見てみます。

 

・第三図から、▲16歩△85桂

 

 

▲86角には△63金(△73銀では、桂馬を渡した変化の時に、▲83桂が生じる)と応じます。そのままでは居飛車からは仕掛けを作れませんが、振り飛車は固めた後に地下鉄飛車を目指すなど、指したい手が沢山あります。

 

よって、どこかで▲59角と引いて、▲86歩を作り、振り飛車の攻めを催促することになります。今回は、△85桂に対して▲86角を経由せずに▲59角と引いた局面を見てみます。

 

△65歩▲同歩△97桂成と進み、振り飛車の角が直通しているため桂香交換は可能です。

(ちなみに、△65歩に▲37角は、△46歩▲同歩△66歩▲同銀△65歩のような変化になります)

 

 

以下、△97桂成以下、▲同香△96歩▲同香△同香▲97歩△同香成▲同桂△96歩▲98歩に△65銀と出る手が大きく、振り飛車優勢に見えます。

 

 

ちなみに、△65銀に代えて△97歩成▲同歩は、桂香交換以上の戦果が見込めず、居飛車に一歩を渡した罪の方が大きくなります。

 

次に△66歩を打てれば穴熊が潰れ形なのですが、居飛車は歩切れのため、▲66歩が打てません。

 

しかし、AI的には先手に耐える手段があるそうです。

 

例えば、▲85桂△同歩として△85桂と打てなくする手。

▲77角△同角成▲同金寄で、△66歩の当たりを緩和しておく。

▲69香△62香▲85桂△同歩▲77角のように、66に力を足す。

 

また、手待ちのつもりで突いた▲16歩が活きて、▲15角のような手もあります。

 

▲15角はともかく、▲85桂のような少し難易度の高い受けもありますので、実戦的には△65銀と出た局面で振り飛車が指せる気はします。特に△14歩型であれば、この仕掛けはある手だと思います。

 

 

次に、第三図以下、大橋先生の耀龍四間飛車の本を参考にしながら、居飛車が松尾流穴熊を目指した場合について、検討していきます。

 

・第三図から、▲38飛△44角▲68銀

 

 

振り飛車は、▲68銀のタイミング(角が68や59に引けない)で△85桂と跳ねます。

 

▲86角には、今度は△73銀と受けます。▲68角 or ▲59角と引くためには、もう一手右銀を動かす必要があるので、△72金が間に合い、83の地点をカバーできる見立てがあるからです。

 

 

以下、▲79銀右△72金▲28飛△33角▲68角と進んだ局面を第四図とします。

 

 

次に▲86歩があるので、振り飛車は△65歩と仕掛けます。

 

・第四図から、△65歩▲24歩△同歩▲同角

 

△22飛▲25歩△66歩▲33角成△同桂で、振り飛車の角を消す事ができますが、ここで▲66金には△39角があります。

 

 

以下、▲68飛△25飛▲28歩△57角成が一例で、振り飛車が優勢です。

 

また、▲66金に代えて▲68金は、△64角▲37角△同角成▲同桂△64角で、居飛車が痺れています。

 

 

・第四図から、△65歩▲86歩

 

△66歩▲57金△97桂成▲同香△96歩▲同香△同香▲98歩△91香▲97桂△65銀が一例で、これは振り飛車優勢。△97桂成に▲同銀と取れない(△67歩成がある)ため、桂馬を端に成り捨てる手が駒損の攻めになっていません。

 

 

・第四図から、△65歩▲57角

 

▲57角は66に力を足す手ですが、△66歩に▲同金(▲同角なら、△同角▲同金△46歩)なら、△65歩▲67金引で振り飛車の角道が通るので、△97桂成が成立します。

 

以下、▲同香△96歩▲同香△同香▲97歩△同香成▲同桂△96歩▲98歩が一例です。

ここで桂馬を取ってもいいですが、相手に歩を渡すと、後の△66香に▲68歩で我慢する順を与えます。

 

先ほどと同様に桂馬を取らないでおいて、△66香▲77金寄を決めてから、△97歩成▲同歩△69香成として、攻めの種駒を作っておく方が勝ちやすいかもしれません。

 

 

 

どうやら、居飛車が第三図から松尾流穴熊に組みに行くのは危険なようです。