3手目▲75歩に対して、後手が4手目△54歩を指してきた場合について、今回も書いていきます。

 

先日、女流名人戦の第一局が行われましたが、5手目に▲75歩と指し、後手の福間さんが6手目△54歩と指していました。

 

今回の話題にしている形と1筋の端歩の交換以外は同じ形ですね。実は、今回、△54歩について記事にする気になったのも、女流名人戦で出てきて触発されたというのが大きいです。

 

女流名人戦では、先手が7手目▲96歩で更に態度を保留した後、後手はこの端の交換には応じず、8手目に△84歩と指していました。


 

ひょっとすると、福間さんの意図としては、▲78飛△88角成~△45角に対する▲85角を消しつつ、居飛車を目指した手と言えるのかもしれません。

 

まあ、プロ間では後手指せるとされている、▲85角の変化を警戒したとも思えませんので、単に居飛車を選んだだけの可能性の方が高いですが。
 

西山さんはこの△84歩に対して▲68飛として3・4・3戦法を選んでいました。おそらく準備してきた作戦だったのでしょう。

 

とすると、先手が端歩で手待ちをして、後手の△84歩を誘導し、相振りではなく対抗形にしようとしていたと推測できます。もちろん真相はわかりませんが。

 

ちなみに、この△84歩の時、▲85角が打てないにもかかわらず、▲78飛と回る手がない手ではなかったようです。

 

△88角成▲同銀△45角には、▲58玉△27角成に▲74歩△同歩(△62銀には▲66角で先手よし)▲同飛が一例です。

 

 

△83歩型では、この▲74歩以下の変化の時、△52飛と回るのをAI的には好手としていました。解釈としては、△54歩型の負担を緩和しつつ、中央を狙っていく感じかなと思いました。

 

△84歩型の場合、この局面で△52飛には▲84飛があります。83に空間ができるのもデメリットになるかもしれません。

 

以下、△73歩なら、▲76飛△45馬▲46飛のように、馬を消しに行く手もあります。これくらいなら、普通に互角の勝負でしょう。△54歩+△84歩型なら、△45角の筋には▲74歩が有効になってくるようです。

 

 

また、△84歩に代えて△52飛で中飛車を目指した場合でも、▲78飛と回って問題ないようです。

 

以下、△88角成▲同銀△45角▲85角に△27角成なら、▲63角成(桂取り)△72銀▲58馬△同玉▲25飛で、部分的には後手が痺れています。

 

 

△49馬▲同玉△32銀くらいでも実戦的にはいい勝負ですが、一応駒得なので、やや先手持ちでしょうか。

 

といった感じで、△54歩に対して端歩を突いてみて、相手の態度を聞いてから▲78飛と回る手を目指すというのは、実戦的な手段としてはあるようです。

 

しかし、後手が素直に端歩を両方とも受けてくるのも普通で、その場合は状況があまり変わらないので、本質的な解決法とはなりません。

 

また、戦型が決まった後ならまだしも、相手の様子を見るためだけに端を突くのも、先手番の指し方としては、やや消極的な印象を受けます。個人的には、1筋だけならまだしも、9筋まで突くのは気が引けるところです。

 

△54歩への本質的な解決法として、現在挙げられているのは「初手▲78飛」くらいでしょうか。

 

「初手▲78飛」ならば、△34歩には▲68銀と指して、次に▲76歩と突けば、△45角の筋が消えているため、角道を開けたまま駒組する事が可能です。相振りを指す振り飛車党で「初手▲78飛」の採用率が上がるのは、そういった背景があると思われます。

ですが、「初手▲78飛」は角交換系の振り飛車が得意な方にはいい作戦だと思いますが、角交換型振り飛車については現在、自分は封印しています。また、ノーマルをやるとしても、三間よりも四間を採用したい事情もあります。

 

個人的に「初手▲78飛」は、飛車の振り場所にしても左銀の使い方にしても、少し形を決めすぎだと思っています。

 

また、「初手▲78飛」には△34歩▲68銀△84歩からの乱戦の変化もあり得ますので、可能ならば序盤はのんびり行きたい自分としては、そういう意味でも選びにくい手です。

とかなんだかんだ言いながら、角交換振り飛車を解禁した場合には、「初手▲78飛」をやってるかもしれませんがw

ただ、現時点では、4手目△54歩への対応のためだけに、「初手▲78飛」まで勉強する必要があるのか?というのが正直なところです。

 

どうやら、「初手▲78飛」には、後手の右四間飛車を警戒する意味もあるようですが、右四間風の駒組に対しては「一直線石田流本組」で対抗する(前に記事にしました)つもりの自分としては、あまり意味を感じません。

また、後手が4手目に△54歩と突いたからと言って、先手に▲66歩を突かせようという意図があってやってるかどうかはわからないのです。

特に、後手が純粋中飛車党という可能性は結構あって、5手目に▲78飛と振っても、△45角乱戦を仕掛けずに普通に△52飛と回ってくる可能性もそこそこあると思います。



というわけで、なんだかんだ書いてきましたが、もう面倒な事は考えず、5手目に▲78飛と振る形が本当に無理なのかを調べてみたいというのが、次回の記事でやりたい事になります。

5手目▲78飛に対して、後手の6手目が△52飛等であれば、▲68銀で問題ありません。

気にするべきは、やはり△88角成~△45角です。

 

逆に言えば、この手に対して大丈夫だと判断できれば、5手目▲78飛は指してよいという事になります。

 

▲66歩型の相振り飛車を相手の全振り場所に対して調べるよりは、この乱戦を1つ研究した方が、よほど効率的だろうという発想です。

 

もちろん、相手から△45角と打ってくるのですから、後手もある程度、研究している形でしょうが、それならそれで受けて立ちましょうw