今回は、相振り飛車において、相手がノーマル四間飛車で美濃囲いを選んだ場合の形を扱ってみます。

 

相振りには不向きとされるノーマル四間飛車ですが、実際の初段周辺のアマチュアでは結構多い印象です。

 

自分は相振り飛車ではほぼ全て三間に振りますので、三間側からの視点で検討していきます。

 

美濃に対しての対策はシンプルで、「(可能な限り)速攻で端攻めをして潰す」です。

普通に石田流本組に組んでも、三間飛車側にメリットが多いのですが、アマチュアレベルでは端攻めが有効なケースが多いため、明快な気はします。

 

では、具体的に見ていきましょう。先手を三間飛車、後手をノーマル四間飛車とし、基本図を下図(▲76飛まで)とします。

 

 

この基本図の時点で、先手は一歩を持ち、手順に浮き飛車にできており、美濃にも一応入っています。先手が悪い要素はなく、AIの評価値的には先手に200点ほど振れます。

 

もちろん、この図に至るまでに、後手に色々と工夫の余地はありますが、今回は後手が基本図のような典型的な美濃囲いに組みに行ったケースについて見ていきます。

 

ここで後手の手番ですが、端攻めにあたって細かく見るなら、端の位を受ける受けない、△82玉を上がる上がらない、+α(その他の条件)等によって場合分けされていきます。

 

特に、+αの部分はやり出すとキリがないというか、この戦型の「結論」を出すところまで研究しないといけなくなるので、今回は手を出さず、できるだけ実戦的かつシンプルなケースについて扱っていきます。

 

実際、シンプルなケースになる事も実戦では多いですし、部分的には同じような筋が出てくることもあると思いますので、知っておくと役に立つ変化が多いと思います。

 

今回は、端を受けた場合の本美濃を、△71玉型と△82玉型で分けて見ていきます。

 

(1)△71玉型+端を受ける

 

基本図の局面は後手の手番ですが、先手の攻撃態勢が整うのが早いため、後手の駒組次第では、危険な筋が色々と生じます。

 

例えば、基本図から、△33角▲96歩△94歩▲77桂△32銀のような進行だと、いきなり▲65桂があります。

次に▲57桂不成がありますので、美濃の形通り△52金左と受けるなら、▲74歩で先手よしです。

 

 

△同歩には▲55角の香取りが受かりませんし、△62金のように力を足すなら、▲55角とこちらも力を足していきます。

 

ここで△45歩には、73へと切り込んでいく(▲73角成)方針で十分です。先手の攻めがわかりやすい筋に入っています。

 

こうした何気ない駒組の中でも、強力かつスピード感のある仕掛けが生じるところが、相振りにおける石田流の強みの1つです。

 

よって、(端を受ける場合は)基本図から△52金左が本線です。

 

以下、▲96歩△94歩▲77桂で、先手は攻撃の準備が整います。▲77桂に代えて▲66角もありますが、△31銀型を活かして、後手から△45歩で角交換を迫ってくる手があり、後手に手段を渡してしまいます。この戦型においては、先手は角交換を可能な限り避ける方針が実戦的だと思います。

 

▲77桂以下、△33角(△22角型のままでは、△32銀の瞬間に角が浮くため、△45歩を突きづらい)には、▲95歩△同歩▲同香と仕掛けます。

 

 

ここで、後手に一度△94歩と打つような手はあるところですが、△同香(AI的には最善)▲96歩△同香▲同飛と一番シンプルに進めてみます。

 

これは▲91飛成の先手なので、普通に受けるなら△93歩ですが、▲85桂と跳ね出します。

 

△91香で93を受けるなら、▲95香で普通に端に力を足す手はあります(ただし、やや攻めが重いため、後手に△45歩から勝負する余地を与える)し、先程のように▲74歩も普通です。ちなみに、自分が使っているAIは▲74歩を最善としていました。

 

 

放っておけば、▲73歩成△同桂に▲93桂成や▲55角があります。

 

△同歩には▲55角と出て、シンプルに香取りが受かりません。

 

非常手段で△62金直のように73に足してきても、▲73歩成△同銀(△同桂なら▲93桂成)▲同桂成△同金に▲55角△64歩▲75銀のように追撃して、先手勝勢です。

 

どうやら、▲95歩と仕掛けた時点で先手に有利な変化が多いようですので、▲77桂に対して後手が△45歩と突いた変化も見てみます。

 

そこで▲95歩△同歩▲同香△同香▲96歩には、△97歩(次に△98歩成)があり、▲同角△96香▲同飛△77角成▲91飛成△46歩のような展開は、後手も十分戦えます。

 

 

そこで、先手は▲58金左で本美濃を完成させ、四間飛車からの4筋の攻めに対応しておくのが実戦的です。

 

▲58金左に後手が△33角ならば、先手に攻め筋が生じており、▲95歩△同歩▲93歩△同香▲85桂と仕掛けます。

 

後手は△94香と逃げるでしょうが、▲33角成△同桂▲73桂成△同銀(△同桂なら▲74歩)▲55角が決まります。

 

 

しかし、△33角に代える手も難しく、△64歩で▲55角の筋を緩和しても、▲26飛の揺さぶりがあり、▲23飛成を受けるなら△32銀ですが、以下、先程と同様に、▲95歩△同歩▲93歩△同香▲85桂△88角成(△32銀型のため、後手の角が浮いており、後手から交換するしかない)▲同銀△94香に▲66角が決まり、先手よしです。

 

 

という感じでして、△45歩を突いたら突いたで、▲55角や▲66角の筋が生じやすくなり、先手に楽しい変化が多くなります。後手が普通に△71玉型の美濃に組み、まして端を受けたりすると、こういう事になりがちです。

 

 

(2)△82玉型+端を受ける

 

基本図以下、△52金左▲96歩△94歩▲77桂△82玉と進めます。

 

 

▲58金左と落ち着いてもいいですが、▲79銀が取り残される可能性もありますので、先程と同様に仕掛けてみましょう。

 

▲95歩△同歩▲同香△同香▲96歩△同香▲同飛に、今度は△82玉型を活かして、△91香と先手を取る受けがあります(ちなみに、△93歩は▲85桂で先手優勢。▲93桂成△同桂▲94歩や▲74歩や▲95香を狙う)。

 

対して先手は、9筋を明け渡すわけにはいかないので、▲94歩で端を押さえます。

 

 

 

ここで後手の手は広いですが、もし△92歩のように端を手堅く収めてくるなら、後手から△94香と走る手が消えるので、先手の飛車が動きやすくなります。ここでは、▲56飛で中央を狙っていくのがいいようです。

 

▲56飛に対して、△14歩のように後手が様子を見るなら、▲97角として53に足すと、後手は不自然な形で受けるしかなくなります。

 

△43飛▲65桂△42銀▲55香△31角が一例です。

 

 

以下、▲53香成△同銀▲同桂成△同角(△同金には▲54銀)▲同角成△同金と53でばらした後、▲32角と食いついて先手十分です。

 

△92歩に代えて△14歩のような手なら、▲85桂△92歩▲66角で、次に▲95香まで足せば、端を破れる形です。ちなみに、先に▲95香では、後手に角交換から暴れられた時に、端攻めが空振る可能性があり、香を手放した罪が重いです。

 

待ったなしの後手は、▲66角に対して△45歩で勝負しに来る事が予想されます。

 

▲66角型の時に△45歩と突かれれば、角交換がほぼ確定するため、一気に激しくなります。ここから、この戦型の実戦的に勝負の局面が続きます。

 

 

 

△45歩に、先手から角交換するのは無筋(▲22角成△同銀の形は、▲55角などの隙がない)ですが、後手には△74角や△54角のような手段があります。ちなみに、△45歩に▲95香は△66角▲同歩△74角でダメです。先手の攻めが空振っています。

△45歩には、これまた手が広いですが、▲58金左が実戦的でしょうか。

△66角▲同歩△74角▲86飛の時、47への利きが増えるため、△47角成▲同銀△46歩のような暴れ方を緩和する事ができます。

 

この△74角は、この戦型で端攻めを行う際、部分的によく出てくる筋で、85の桂取りと47を睨んでいます。厳密には後手の無理筋のケースが多いのですが、実戦的には嫌な手ですので、注意するに越したことはありません。

 

▲58金左に△66角▲同歩△74角は▲86飛でよく、次に▲77香や▲73桂成△同銀▲75歩(角が詰む)があります。

 

ただし、△66角▲同歩△54角▲86飛△84歩のように催促されるような手にも、注意が必要です。

これもこの局面では無理筋ですが、実戦的には瞬間的に攻守が入れ替わるため気持ち悪いです。角交換されると、後手にこういった手段を与えてしまいますので、上手く対処する必要があります。

 

以下、▲73桂成△同銀(△同桂は▲74歩)▲74歩△同銀(△64銀は▲65歩△同角▲67香)の時、すぐに▲55角はあります。もし△73歩なら、▲84飛が利き、△83歩には▲74飛と銀を取れる形です。

 

 

しかし、▲55角に△64歩のように受けられたとき、すぐ▲11角成では、△85歩と突かれて先手が部分的には困っています。▲96飛には△87角成です。

 

 

△64歩には▲56香が好手で、△75銀なら▲11角成が香を取りつつ角取りにもなり、△32角には▲44香のように攻めて先手優勢です。

 

また、△74同銀まで戻り、▲55角の前に▲84飛と走ってしまう手もあるようです。

 

王手銀取りなので△83銀ですが、そこで▲55角と打ちます。先手には、飛車を54の角と刺し違える手があるので、△64桂で焦点で2枚の利きを止めますが、落ち着いて▲86飛と引いておき、▲11角成を受ける△22銀に▲65歩△同角▲68香のようにじわじわやっていけば、後手が支えきれなくなっていきます。

 

 

という事で、今回はノーマル四間飛車で端を受けた場合の美濃囲いに対して、端攻めを行った時の変化を見てみました。

 

基本的には先手が勝ちやすい戦型なのですが、角交換以降、四間飛車側が実戦的に暴れてきますので、注意が必要です。

 

次回は、端を受けないケースについて見ていきます。