前回は、一直線に居飛車が4枚ミレニアムを目指した場合を例に、一手損三間飛車側が△64銀型を作れるかどうか、△64銀型が間に合わなかった場合はどうするのか、について見てみました。

 

今回は、更に理解を深めるために、第二図から居飛車が▲36歩としてきたケース(下図)について、考えてみたいと思います。

 

 

この段階では居飛車が▲66角型なので、間違って△45歩を突いてしまうと、▲33角成△同桂▲24歩で居飛車優勢です。

振り飛車は△64銀型を目指したいのですが、ここで△65歩は、第二回の記事の(1)で扱った変化と同様に▲75角が手強い。

 

実は、△65歩▲75角に、△63金に代えて△63銀なら、▲65桂に△64銀左が利くので頑張れなくもないですが、角を切って▲41銀の割銀もあります。

 

個人的には、居飛車玉が堅いのに振り飛車が美濃囲いを崩すような受けをしてる時点で、実戦的に振り飛車の負けパターンだと思います。

そこで、▲36歩には△63金で高美濃の形を作り、▲75角に備えてみます。

振り飛車のこの手順は、第二回の記事の(2)に該当します。(2)では、△63金に▲57銀が好手で、6筋からの逆襲が厳しく、居飛車よしと判定しました。

しかし、今の局面では、居飛車が▲78金と固める手ではなく▲36歩を選んだので、右金の位置が78ではなく68になっています。

これが大きな違いで、居飛車が6筋の逆襲に来た時に▲68飛の応援がないため、振り飛車がギリギリ持ちこたえています。

下のような局面(△63金まで)が結果図の一例で、振り飛車が角銀交換の駒得で、居飛車の攻めも細いため、互角の範囲です。受けが強い方なら、自信のある局面かもしれません。

 

 

この局面から▲78金には△66歩が好手で、▲78飛に△45歩を用意します。

(▲78金に△64歩では、▲54銀△同金▲43銀で居飛車よし)

 

▲78金に代えて▲64歩には、△53金で▲43銀を消しておく避け方が正解。

なおも▲54銀△同金▲43銀には、△22飛▲54銀成△62歩と低く受けておけば、簡単には崩れません。

次に△24歩で向かい飛車から仕掛けがあり、居飛車が忙しいです。

 

いきなり▲43銀と噛みついてくるなら、△62飛で▲64歩に△同金▲同銀△同飛を用意し、簡単に6筋を制圧させない姿勢が大事なようです。

 

 

また、このような押さえ込まれ気味の局面では勝ちにくいと思う方は、△63金▲57銀に△74歩と突くのも一案で、この手順は第二回の記事の(5)に該当します。

 

次の△65歩が間に合うと居飛車が単に駒損してしまいますので、▲57銀を動かしたいのですが、今回はまだ▲68金型のため▲68銀と引けないのが痛い。

 

▲48銀と戻るのでは、先手が何をやっているのかわからないですし、(5)と同様の変化になった場合、4枚ミレニアムと3枚ミレニアムでは玉の堅さが変わってきますので、振り飛車よしです。

 

よって、▲46銀△65歩▲48角△64銀くらいですが、振り飛車は△64銀型を実現する事ができました。

まだまだ互角ですが、後手番でこの形を築ければ、振り飛車不満なしでしょう。

 

 

つまり、第二図から▲78金に代えて▲36歩を選んだ今回の課題局面なら、振り飛車は△63金で高美濃を作った時点で△65歩が突けるようになり、△64銀型を作りやすくなっているのです。

 

わずかな形の違いで、このような差が出るところが、将棋の難しいところであり、面白い部分でもあります。

 

 

居飛車からすれば、振り飛車に△64銀型に組まれる前に仕掛けの準備を整えたいところですので、△63金の応手は▲37桂か▲57角が本線です。

 

(ちなみに、一応の補足ですが、▲35歩△同歩▲38飛のような居飛車の常套手段の軽い仕掛けは、△51角くらいで三間飛車には薮蛇です。「一手損向かい飛車」でも△64銀型を目指すことは可能で、▲24歩からの攻めは緩和されますが、▲35歩には少し弱い面があります)

 

(A)△63金に▲37桂

 

▲37桂には、△45歩を突きにくくする事と、将来の▲24歩からの仕掛けのために力を溜めるといった意図がありますが、すぐの仕掛けはありません。

 

ここで躊躇してはこの戦法を採用している意味がありませんので、▲37桂以下、△65歩▲57角△64銀で、△64銀型を実現し、振り飛車は主張を通します。形勢は互角ですが、振り飛車不満なしです。

 

 

(B)△63金に▲57角

 

▲57角型になったことで、居飛車は▲24歩からの仕掛けが可能になりました。

 

振り飛車はその緩和のために△45歩を突きたいところですが、▲37桂で▲45桂を狙われます。

 

▲37桂に△55歩は一手遅く、▲45桂で痺れます。

仮に先手がうっかりして▲同歩△同角と進行しても、▲37桂+▲48銀型のため何の先手でもないありません。

▲56歩△44角▲24歩くらいで振り飛車がダメです。

 

よって、▲37桂には△42飛で▲45桂を受け、後手を引くしかありません。

以下、▲24歩△同歩▲同角△22飛▲25歩△44角▲45桂△62銀▲46角△23歩が一例で、すぐに負ける事はありませんが、作戦負けは明白。振り飛車が面白くありません。

 

 

よって、△63金▲57角には△65歩を通したいところ。

 

これに▲同桂は、振り飛車玉のコビンが開いていない(△73歩型)ためさすがに無筋で、△64銀▲66歩△55歩で振り飛車よし。

 

また、▲37桂と力を溜めるなら、△64銀で(A)と合流します。

 

したがって、▲57角△65歩の局面において、▲24歩の仕掛けがどうなっているかが、1つのテーマになります。

 

△63金▲57角△65歩以下、▲24歩△同歩▲同角△22飛▲25歩と進んだ局面が下図です。

 

 

△45歩で△44角を作り、居飛車の攻めを催促するのは、▲37桂△42飛くらいでも不満。

 

また、▲37桂に代えて、▲33角成△同桂と角交換してくる方がアマチュア的で、▲24歩や▲43角の継続手があります。形勢は互角の範囲ですが、△45歩の一手が全く活きませんし、振り飛車からの仕掛けの準備ができていないため、攻め合うのも困難です。

 

よって、▲25歩までの上図の局面では、やはり△64銀と出て△55歩からの攻めを作り、後手を引かないにしたいところ。

自分の使っている将棋AI的にも、△64銀が最善となります。

 

実戦では、ここからの攻防が最も難しい部分だと思います。

そこで、次回では△64銀以降の局面について、細かく見ていきたいと思います。