一直線穴熊の続きです。

 

今回からは、下図(△93桂まで)から▲88銀と穴熊のハッチを閉めてきた場合を見ていきます。

 

 

(B)▲88銀

 

△93桂と跳んだからには、当然△85桂と仕掛けます。

 

ここから角の逃げ場所で場合分けしていくのですが、前回の△97桂▲95角△85桂の場合と違い、▲66角や▲55角に逃げる事が可能になっているのは注意したいところです。

 

この位置は振り飛車の角のラインに入っているので、すぐに△45歩と突くと、居飛車から角交換する手が生じます。

 

この角交換は、たいてい振り飛車が損です(前回は居飛車の角が振り飛車の角のラインからそれていたため、角の開き王手で△45歩が入り、▲88銀と受ける進行がデフォルトでした)。

 

振り飛車は、居飛車の角を目標にして、負担にさせながら攻めたいのですが、その角に捌かれる上、▲24歩や▲82角といった攻めが生じてしまい、居飛車ペースです。

 

よって、「振り飛車の角のラインに入っているかどうか」で居飛車の角の逃げ場所を大まかに場合分けして考えてみたいと思います。

 

(ア)振り飛車の角のラインに入っていない場合(▲86角、▲68角、▲59角)

 

この場合、振り飛車はすぐに△45歩と突くことができます。

 

次に△46歩があるので、▲26飛で受けるのが自然です。前回の変化では、穴熊のハッチが閉まるのが一手遅いため、この受けはありませんでした。

 

しかし、その一手早く穴熊に組めているが故に、居飛車は▲95角で歩を入手していません。実はその違いの影響で、▲68角や▲59角のような角が端に利いていない逃げ場所では、振り飛車の端攻めで穴熊が潰れます。

 

具体的には、△85桂▲59角△45歩▲26飛に△97桂成と成り込み、▲同香△96歩▲同香△同香▲97歩△同香成▲同桂△96歩といつもの手順で端攻めに行った時、前回は▲98歩が打てるため、部分的には桂香交換で済んでいました。ところが、今回はその一歩がありません。

 

 

この局面の最善は、▲98玉と角道を避けつつ顔面受けに行く手です。

 

これは油断ならない受けで、すぐに△91香とすると▲85桂と逃げられ、▲93香で香道を止められると失敗なので△97歩成からバラすしかなくなり、銀は取れるものの居飛車玉の上部が開けて紛れます。

 

▲98玉には、冷静に△84歩で桂の逃げ道を消しておき、次に△91香を狙うのが好手順。攻めが繋がる形になり、振り飛車が優勢です。

 

したがって、「振り飛車の角のラインに入っていない場合」については、基本的に▲86角だけを考えればいいと思います。

 

▲86角にはすぐの仕掛けが難しいため、△85桂▲86角△63銀(▲64角の受け)▲58金右△45歩▲26飛△32銀のような展開が一例で、居飛車は安全に穴熊に組めますが、振り飛車も力を溜めていきます。

 

下図のような局面(△54銀まで)が一例で、振り飛車は端に力がたまり、角も睨みを利かせ、左銀も出てきました。△62玉型には、このような地下鉄飛車の含みもあります。▲86角型のため、銀冠穴熊にいけないのも実戦的に安心な点です。

 

 

 

次の△65銀を受ける手段が難しく、居飛車にはまだ仕掛けがないため、振り飛車が指せます。これだけ条件がそろっていれば、ある意味、穴熊に速攻する将棋よりも攻めが切れにくいという安心感があります。

もちろん、上手く攻めを繋げる必要はありますが、この陣形だけを見れば、穴熊の姿焼きパターンの将棋だと思います。

 

今回はここまでとしたいと思います。

▲86角型はすぐ潰せるわけではありませんが、仕掛けの権利を握った状態で力を溜める事ができるので、振り飛車十分だと思います。


次回は、△85桂に▲66角や▲55角と逃げた場合についてです。