※ 妄想小説です
実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません
BL的表現を含みます。
智side
ピザトーストだけじゃ物足りないなと思い、買い置きしてあったフルーツをカットして皿に盛った。
フルーツをテーブルに運ぶと、丁度トースターが出来上がりの音を鳴らしてきた。
「お、出来たかな~。
翔、焼けているか見てくれよ」
「うん。
わッ!めっちゃ良い匂いだよ~。
ちょっと焦げ目もついて良い感じ!」
「そっか、じゃその辺の皿に乗せて持ってきてくれよ」
「はーい」
いつもよりおどけた声の翔が、皿を二つ持ってダイニングテーブルまで持ってくる。
「うん。良い感じに出来たな?」
「だよね!すげぇ旨そう~」
「まぁこれは…なんちゃってピザトーストだけどな」
「ふふ、良いよなんちゃってでも。
食べても良い?」
「もちろん。
殆ど翔が作ったんだしな。
俺も頂きまーす」
向かいあって手を合わせたあと、熱々のトーストにかぶりつく。
「んッ!うまッ!
美味いよ、智」
「うん、具材も丁度良い感じだな」
「ケチャップの甘味とチーズの塩気が絶妙だね。
この玉ねぎのシャキシャキ感も楽しいし
ベーコンの芳ばしい感じもマッチしているよ」
「んふふっ。
すげぇ上手い食レポみたいだぞ」
「え~。正直な感想なのにぃ」
「違うって、褒めたんだよ。
流石だなぁ~って」
「流石って…?」
「翔はほら、賢いだろ?
だから言葉もスラスラ出るんだなって感心したの」
「ふふ、そう言ってくれるのは嬉しいけど
俺のはただの食いしん坊だよ」
「ははッ、そっか」
「あ~。なんか朝から
こんな旨いもの食えて、最高!」
ニコニコ顔の翔を見ていると、なんだか少し申し訳なくなってきた。
昨日泊まる事は分かっていたんだから、もう少し食材を用意しておけば良かったな…。
まあ、翔は喜んでくれているから良いけど。
「翔、フルーツも食えよ」
「うん。
てか、智、このフルーツどうしたの?」
「ん?普通に買い置きしてあったの出しただけだよ」
「いつも買い置きしているの?」
「そうだなぁ。リンゴとかキウイとかはな」
「偉いねぇ。やっぱ健康の為?」
「そうだな。
あとは美容の為っていうか…」
「美容…!?」
「うん。一応人前に出る仕事だし。
今のTVとかやたら画質が良いじゃん。
肌の毛穴まで見えるだろ?
だからちょっとは気を遣うんだよ」
「え~?
智の肌なんてまだ…」
「いや、俺めちゃめちゃ日に焼けやすいんだよ。
だからすぐ肌が荒れるんだ」
「あ~。野外ロケとかあると結構キツイよね?」
「うん、この前までずっと映画の撮影にかかりきりだったかな~。
前半はかなり野外撮影でさ、なかなか大変だったんだよ」
「そっかぁ。
女優さんとか、傘さしてもらったりするじゃない?
あれも日焼け対策?」
「それは勿論そうだけど、俺たちみたいな職業だと撮影中に日焼けなんてもってのほかなんだよ」
「もってのほか?」
「ああ、映画やドラマって、ストーリー順に撮影していくわけじゃないからな。
日焼けすると、シーンとシーンの繋がりがおかしくなるだろ?」
「あ~…なるほどね。
そういう理由があるんだね」
「あとは体型維持とか、逆に役の為に肉体改造とかな…。
俳優ってほんと身体張った仕事だなって思うよ」
「なるほど、確かにね。
言われてみるまで気がつかなったよ」
「俺さ、俳優の仕事が来る前は
自分で髪切ってたんだよ」
「え?マジ?」
「だって美容室いくのってめんどくせーだろ?」
「そ、そうかなぁ?気持ち良くない?」
「俺はちょっと苦手だったんだよ。
それに、ちょうど伸ばしたいって思ったし」
「え!ロングだった時代があるの?」
「ああ、あるよ。
まだ10代だったんだけどさ。
俺の好きなダンサーが、ロングでさ。
で、憧れて真似してたんだよ」
「ふぅん。
その頃の智を見られる映像ないの?」
「映像?
うーん?
もしかしたら事務所に何か残っているかもなぁ」
「うわ…ッ。
見た過ぎるんですけど!」
「見せねーよ。
恥ずかしいし」
「恥ずかしいって、そんな今更…。
良いじゃない。
あッ!なら写真は?
写真くらいなら残っているんじゃないの?」
翔が目を輝かせて俺を見るけど…。
写真ねぇ…。
それってプライベートの写真ってことだろ?
そんなの見て楽しいのかな?