※  妄想小説です 
実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません
 BL的表現を含みます。







翔side


眠りについたのは朝方だった。

「疲れたからもう寝る」

そう智が言ってから、ものの数秒で寝息が聞こえてきた。

そこまでは覚えてる。

目覚めると、もう昼近い時間だった。

智は俺の隣で身体を丸め、スヤスヤと眠っていた。

初めてみる智の寝顔。

スッと通った鼻筋に、柔らかそうな頬。

長くてカールした睫毛が瞼に影を作る。

艶っぽい唇も、今は少し潤い不足に見える。

最中はあんなにもエ ロくて、妖艶な姿になるのに

今の智は、少年と言っても良いくらい幼く見える。

「…寝顔は随分と可愛いんだな」

俺の独り言にも起きない智をそのままにして、ベッドからそっと抜け出した。

部屋着代わりのTシャツを着て、キッチンに行き、サーバーから水を汲んで飲む。

そうだ。智にも着替えを出しておかなくちゃ。

俺より若干小さな体躯の智。

Tシャツやハーフパンツは、俺のでもいいか。

下着は買い置きしておいた新品を出しておく。

ガサゴソする物音で目覚めたのか、ベッドの中の塊がモゾモゾと動き出した。

「ん〜…」

「起きた?智」

「ん…しょぉ…?」

「ふふ、そうだよ」

やっとこっちに顔を向けた智。

寝起きで髪はボサボサだし、目も半分閉じてる。

まだ、ぼーっとしている智の頬に手を当て、キスをする。チュ、チュと軽いやつね?

「…なんだよ、今の…」

え?

なんでそんな不機嫌?

「何って、おはようのキス?」

そう言ったら智が、「はぁ〜…」って溜息を吐いた。

「なに?嫌だった?」

「別に…んなこと言ってねーだろ」

じゃ、なんだろう。なんで溜息なんかつくんだ?

「そこに着替え置いてあるから。
俺ので悪いんだけど…。
あ、下着とかは新品だからね」

「ん、さんきゅ」

「コーヒー淹れるけど、飲むでしょ?」

「ああ…」

「バスルームとかも勝手に使って。
適当に用意しておいたから」

智って朝が弱いのか?

めちゃくちゃテンション低いんだけど。

「…ず」

「え、なに?」

「水持ってきてくれ」

言われるまま、グラスに入れた水を持っていく。

それを一気に飲み干し、俺にグラスを渡そうとしてきた智が、詰まったような声を上げ、腰に手を当て苦悶の表情を浮かべる。

「…っつ!」

「智?
もしかしてどっか痛いの?腰?」

「誰のせいだと思ってんだよ…」

片目を瞑り俺を軽く睨む智に、シュンとしてしまう。

「俺の…せいか…
ごめん。昨夜はその、夢中で…」

そう答えると、顔を赤くする智。

え、なにその可愛い反応。

昨夜のエ ロい姿とその反応のギャップにドキドキしちゃうじゃん

あんだけ乱れに乱れまくったくせに、そんな可愛いくなるとか、反則だろ。

ベッドから起き上がるのも辛そうな智の着替えを手伝い、リビングのソファーに座らせた。

背中にいっぱいクッションを入れて、足をオットマンに乗せる。

智が身体を休めている間にコーヒーを淹れ、持っていく。

「…翔ってさ、本当にただのサラリーマン?」

コーヒーを口にしつつ、徐に智が訊いてくる。

「そうだよ。
名刺、松本から受け取ったんでしょ?」

「それでこんな所…住めるか?」

ああ。そーゆー事ね。

「このマンションは
俺が所有してる不動産の一つだよ」

「一つって事は他にもあんの?」

「まあ、そうだね。祖父と
親父が幾つか事業をしてて、まあ、色々とね」

「見た目通りのお坊ちゃんって事か…」

「否定はしないよ」

幼稚舎から高校まで、難関とされる私立に通っていたし、大学は更に難関と言われる外部に進学した。

官僚への道も考えたが、将来継ぐであろう会社の事を考え、今の企業に就職を決めた。

〝お坊ちゃん〟と言われる事にも慣れきっている。

「俺の事よりさ、智の事を教えてよ」

「…俺は、テキトーだよ。
高校も中退してるし…
なぁ、そんな事より、腹減ったんだけど?」

なんだか上手くはぐらかされた気がするけど…。

「ああ、そうだよね。
俺も減ったな…
うち、なんかあったかな?」

ちょっと待ってて。と言い残し冷蔵庫へ向かう。

もっぱら外食ばかりの俺。

食事になりそうな物は…殆ど入っていない。

「智、うち何もないから、ちょっと買い物行ってくる。待っててくれる?あ、それともどっか食いに行く?」

「動きたくない。ここで待ってるよ」

「パンとご飯どっちが良い?」

「パン」

「オッケー、じゃすぐ戻るから」

それから30分程して、袋いっぱいのパンをぶら下げて帰ると、智はソファーで横になってた。

「ただいま。色々買ってきたよ」

そう言いながら、袋から惣菜パンやら、菓子パンやら、食事パンやらを出していく。

「何食分だよ。こんなに食えねーって」

ぶつぶつ文句を言いながら、買ってきた惣菜パンにかぶりつくる智。

「うめっ!なんだこれ!」

ついさっきまでご機嫌斜めな感じだったのに、パンの味に満足したのか、目を輝かせている。

ふふふ。

智って、普段こんなに可愛い感じなんだ。

「ここのパン屋は俺のお気に入りなんだよね。
結構いけるでしょ?」

「…モグッ…ぅん、うま〜い!」

あーあ、そんな目細めちゃって。

智の食べている姿に魅入っていると、ぶっきらぼうな言葉が返ってきた。

「そんな顔して見んなよ。
ほら、翔も食えって」

そんな顔?

俺、どんな顔してた?








※明日からニノちゃんバースデイのお話をUPしまーす。
全3話の短いお話です♪
※とってもおふざけなお話です💦
情熱スペクトルは18日から再開予定です。
よろしくお願いします〜。