※  妄想小説です
実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません
BL的表現を含みます。








櫻井さんと 男同士のアレコレについて、話してから、僕もちゃんと調べようと思って、ネットを彷徨ったり、2丁目に行ってソノ手の雑誌や本を買って読んだりした。

多分、櫻井さんも調べてくれてるってわかるから。

調べれば調べる程、不安が大きくなる。

行為自体が。じゃなくて

櫻井さんが、僕に反応してくれるのかどうか。という事に。

濃厚なキスを交わすうちに、お互いのが、反応してるのは、抱き合っていれば分かる。

淫猥なグラビアを目にした時も、一瞬固まってしまったけど、櫻井さんの裸体だと思うと、途端に欲情している自分がいる。

そう。

僕は、櫻井さんにしっかりと欲情するんだ。

櫻井さんは…僕の全てを見て、ソノ気になってくれるかな?

クローバー

ある日、いつものように櫻井さんが、うちに寄って一緒に飲んでいた時、訊いてきた。 

「智くん、次の休みはいつ?」

「次はぁ…今度の木曜日です」

「木曜日か…じゃあ水曜日の夜 
うちに、泊まりに来ない?
俺も、木曜は休みだし…」

泊まり。その言葉が意味する事位、僕でも分かる。

とうとう…

「他に、予定があるなら…」

「行きたいです!と、とまりに…」

小さくなっていく僕の声。

は、恥ずかしい。とてつもなく。

「良かった。
必要な物は、俺が揃えておくから。
水曜日は待ち合わせて、帰ろう」

櫻井さんは、いつもと変わりない口調だ。

こーゆーとこ、やっぱり大人だな〜って思ってしまう。

緊張してるのって僕だけなのかな?

そういえば、前に

キスする相手も、それ以上の関係も
不自由はしてないよ』

って言ったし…

それ以上の関係、か。

それって今でも続いてるのかな…

僕も、その中の1人って事?

いや、その後、櫻井さんはちゃんと言ってくれた。

僕だけが欲しい。って。

色々考えても仕方がない。

だって、僕自身が、もうどうしようもないくらい

櫻井さんが欲しいんだから。


そして、水曜日の夜

ドキドキとしながら、テラスで櫻井さんを待った。

直ぐに櫻井さんは現れて、地下駐車場に停めてある車に乗って、櫻井さんの家を目指す。

着いた先は、ホテルから然程遠くない、都内の一等地に建つ…

ハイグレードなタワマン。

ではなく、数軒先の古風な平屋建てだった。

「ここ…ですか?」

「うん。母親と2人で暮らしてたんだけどね。
数年前に他界して…
だから、今は1人だよ」

「そうだったんですか…
お母様が…」

〝今は1人〟

最後に呟いたその言葉に引っかかった。

お父さんや兄弟は?

他の所で暮らしているのかな?

そんな事をぼんやり考えていたら


「あっちのマンションじゃなくて
ガッカリした?」

なんて、クスクス笑いながら、訊いてくるから

「意外でしたけど、ガッカリなんてしてません。
だって、凄く素敵なお宅じゃないですか!」

そう答えた。

だって、こんな都会のど真ん中に、平屋の家なんて
それだけでめちゃくちゃ贅沢。


「そう言って貰えて嬉しいよ。
さっ、中にどうぞ」

「おじゃまします」

好奇心でつい、キョロキョロと見渡してしまう。

内装は、和洋折衷な造りで、縁側のついた和室の隣は広いリビングダイニング、それに続く対面式のキッチン。

家全体がコの字型の間取りになってるようで、中央には中庭があり和室の縁側とも繋がっている。

他にも、寝室と洋室が一部屋ずつの広い3LDK?ん?もう一つ奥に部屋がありそう?

外観からでは、分からなかったけど

「凄く、お洒落ですね…
畳のお部屋ばかりじゃないんですね」

「ああ、それはね。
この家も結構古くなってたから
リノベーションしたんだよ。
でも、やっぱり日本人だよね
和室と縁側は残したくってさ〜」

ちょっと照れたように、櫻井さんが言う。

んふふ。

やっぱり、自分ちだと落ち着くのかな?

櫻井さんが、幼く見える。

「智くん、ビールで良いかな?」

その櫻井さんが、冷蔵庫の中をゴソゴソ漁っている。
その背中に向かって返事をする。

「あの…その前に…」

ん?と言う顔の櫻井さん。

「お母様に…お線香をあげても構いませんか?」

「あ…うん。もちろん。
こっちの和室に仏壇があるんだ…」

案内され、仏壇に向かって手を合わせる。

仏壇には、お母様の遺影と戒名が1つずつあるだけだった。

「ありがとう。智くん…」

「いえ…あの…」

尋ねていいものか、悩む。

言葉に詰まった僕の心が透けて見えたのか、櫻井さんがポツリと言った。

「俺の家族は母だけだよ。父は…いない」

いない?

どういう意味?

亡くなってるって事?

それとも両親が離婚しているとか?

困惑する僕に、櫻井さんが苦笑いする。

「さっ、リビングへ行こう。
智くんもビールで良い?」


それ以上は、聞いちゃいけない雰囲気だった。


「はい…ビールで」


「了解〜。えっ〜とつまみは…」

櫻井さんは、何も無かったようにキッチンに行ってしまった。

櫻井さんが、お酒とつまみを用意してる間に、僕はリビングのソファーに座って、ぼんやりと部屋を眺めていた。

それにしても、片付いた部屋だなぁ…

余計な物が無くて、スッキリしてる。

1人で暮らすには。勿体無いくらいの広さだし。

いや、2人で暮らすにしたって広い。

やっぱり、さっきの櫻井さんの言葉が気になってしまう。


父親が 〝いない〟とはどういう意味なのか…



そんな事を考えていたら、櫻井さんが、おつまみとビールを持ってキッキンから戻ってきた。