廊下から男性の声が響いてきた。
「枕が合わねぇんだよ!これで具合い悪くなってる」
大きな声だ。
そして全く同感だ。
病院の枕は固くて高くて調整もきかない。
外れそうな肩には苦行だった。
首もどうにかなりそうだった。
看護師さんによると、枕は一種類だけで、どうにもならないらしい。
家族に頼んでマイ枕を持って来てもらう人もいるだろうが、さすがにそこまでは頼めないな、と思っていた。
そこで私はバスタオルでオリジナル枕を作ってみた。折り方を工夫して色々やってみる。
けれど片手だとやはり上手くいかない。
まだ麻痺生活も初心者だから、片手で器用になんでもできる、という具合いにはいかなかった。
もう諦めの境地で、不快な肩首まわりを憐んでいた。
そんな時ピンチヒッターで入った別のフロア担当の理学療法士さんがやってきた。
私がブツブツ枕のことでつぶやいていると、若い女性理学療法士さんは手際良く新しいバスタオルとフェイスタオルを持ってきて、オリジナル枕を作ってくれた。
それがこれだ。
バスタオルを真ん中にたたんで置き、両サイドにフェイスタオルをたたんで配置した。
両サイドのフェイスタオルは肩を乗せる。
私の首や、後頭部の高さ、肩の位置を考えて配置してくれた。
横になるように言われ、頭を乗せてみる。
すると、理学療法士さんは肩の位置に合わせてフェイスタオルの置き方を微調整してくれた。
ああ…首が生き返る。
肩が痛くない。
高過ぎないから首が楽だ…。
私は自分でバスタオルを配置した時には、肩の所にフェイスタオルを置かなかったからまだ無理がかかっていて脱臼ぎみの肩がつらかった。
でも体に合わせてタオルの位置を微調整し、フェイスタオルが入ったことで、外れかかった肩が安定した。
肩が安定したことで、首も後頭部も楽になった。
副交感神経が働いて、全身はリラックス状態に…
ああ、気持ちいい〜
そのおかげもあって、安眠できるし気分がとても落ち着いた。
まずその気遣いがありがたい。
その理学療法士さんは自分が担当ではない日にもわざわざやって来てくれて、新品のタオルに交換して再配置してくれる。
涙が出ちゃういい人でしたよ。
脳卒中で肩が外れかかっている人は、肩とベッドの間の隙間を詰めて、空間を作らない方がいいらしい。
ただし具体的な方法がわからなかったが、こうしてフェイスタオルを使って実践法を教えてくれたのだった。