2005年1月18日は風化させない

 

 

 彼女のCDプレイヤーのイヤホンが突如はずれた瞬間に、肩から掛けていた黒のバックも大きく跳ね、何者かに後ろから強引に押し倒されて力づくで公園に引きずりこまれた。

 男は左手で彼女の口をふさぎ、彼女は悲鳴もあげる間もなく刃渡り15センチの包丁で背中を深く何度も刺された。

 それでも、彼女は恐怖におびえながら黒のブーツで男の左足を何度も蹴りつけたが、意識が次第に遠のいていき、その公園は血の赤い色に染められた。

 そばに残されたCDプレイヤーのイヤホンからは英会話のかすかな声が流れて、彼女は英会話の先にある「夢」を見ることなくこの世を去った。

 その犯人は人の気配を感じ、財布と携帯電話を奪ってその場を去った。

 しかし、1時間後その場に戻り息絶え絶えの彼女の姿を見て逃げていった。

 彼女は自宅から30分歩いた時に、この犯行に襲われた。

 まだ薄暗い寒風の中、朝5時前に黒のロングコートに毛糸の手袋と黒のブーツの身支度で、福岡市東区原田4丁目の自宅マンションからだ。

 国道3号線の歩道を、時折走り去る車のヘッドライトを避けながら会社に向かう途中で、新二又瀬橋を通過し、大井1丁目を左折してしばらく歩くと悲惨な現場となった大井北公園はある。(現在は「夢を語る公園」となった)