滞在4日目。
令和3年1月某日、日曜日。
朝いちばんに不動産屋に行き、
契約を済ませました。



入学時の、1回目と違うのは
契約者は長男、
保証人が私
…というところ。
レオパレスは、親の名義ではなくて
入居者本人の名義で
契約しなければならないようでした。



前回は、
私が契約者でしたから、
長男が黙って逃亡した後は
退去手続きや後始末も
責任を持って私がしましたが



今回は、
「あなた名義の、あなたの家です。
あなたの身元保証を私がしているのだから、
責任を持って、
人様に迷惑をかけることのないよう
暮らしなさい。
あなたの不始末は、
私の信用失墜にもなりますから。」
と話しました。





十分すぎるほど贅沢なマンションで
入学時からの数年間を過ごした後
一年半の逃亡生活を経て



長男が選んだ住まいは、
レオパレス!!
身一つで入居し、
一年足らずで退去する予定です。



既に十分ですが、
少しだけカーペットや荷物を足せば





こんな感じになるんでしょうか?









結局、
私がいちばん気に入った物件と
長男がいちばん気に入った物件は
完全一致。
もちろん、費用の心配をすることなく
すべて親払い。
長男、もう、
ママには何も言えません笑





契約を済ませた後
長男を
Yくんのいる下宿へ送り届けたら、
この物件探しの4日間の旅は終了です。




「じゃあ、入居できるようになったら
また来るわ。
荷物をまとめておきなさい。
PCや衣類だけって言っても、
どうせ自転車で一回では
運べるようなもんじゃないでしょ。
車で来るから、
車のトランクに乗せて運ぼう。」
と私はにっこり笑って言いました。



そして。



「住民登録をさせてくれているSくんにも
御礼をしてから、
住民票は新居に速やかに移しなさい。
居住実態のないところに住民登録するのが
常識的ではないことはわかるわね?
その時に、本籍の場所を
今一度考えなさい。
有事に大事なことよ。
社会的に未熟なあなたが思っているよりは、
ずっと、ね。」
これは、厳しい顔で“通告”をしました。




本籍まで勝手に移したことについては、
私が気づいたのは去年の夏ですが
長男にはあの後も何も言わずにいたので、
今更この話になるとは
思っていなかったんでしょう。
そして、バレた途端に咎められる、
と思っていたであろう長男
一年半も経過してから
怒られることもなく
「もう一度自分で考えてごらん」と
静かに言われるのが意外だったらしく、
「・・・あ。・・・うん。」
とびっくりした顔で返事をしていました。



「なんでだよ、俺の勝手だろ!
実在する場所なら、
日本のどこに定めてもいい
…って決まってんだよ!」
とでも言うんじゃないかと思いましたが、
こちらがびっくりするほど従順に、
「うんハムスター」と言っていました笑





入学時、田舎から出てきた時は
入居してから1週間
私も長男の部屋で寝泊まりし、



新入生の長男が
オリエンテーションや健康診断
入学式等に行っている昼間は、
私は次々と届く
新しい家具家電を受け取ったり、
一人でスーパーに行き
すぐに必要になるであろう
お茶や牛乳、卵、パン、調味料を買って
冷蔵庫をいっぱいにしてあげたり。
夜は、
届いたばかりの洗濯機の前に二人で並び
使い方を教えながらゲラゲラ笑ったり、
二人でお米を研いで炊飯してみたり。
甘やかせ、何もさせてこなかった長男に
暮らしのいろいろを教えるには
一週間では足りなくて
心配で心配で、

長男を一人で置いて田舎に帰る最後の日は
「明日から大丈夫?」
「一人でやれる?」
「もうママがやっておくことはない?」
としつこくしつこく聞き、
終いには「もう、大丈夫だってば!ムキー」と
長男を怒らせ、


「はいはい、帰りますよっと笑」と
笑って玄関を出た後
何も知らない何もできない幼児を
置き去りにして行くような気持ちになって、
一人で車に乗った途端
涙が溢れだしてきて、
私の方が幼児のように
わんわんと大声で泣きながら
本州から離れる連絡橋を渡ったのだけど



そこが今回の二度目のお引っ越し
前といちばん違うとこでしたね。




「じゃ、ママ帰るわね!
もう!日暮れまでに田舎に戻りたかったのに
これじゃ真っ暗の高速走ることになっちゃう!
最後の山越え高速道路は、
怖いからイヤなのよ!」


「・・・え?(゜ロ゜;ノ)ノ
後は俺がやるの?!
で、どうしたらいいの?」




これは、意外でした。
扱いにくく、可愛げのなくなった長男
「ああ」としか
言わないと思っていましたから。




「新居引渡し日には、また来るから
あなたは荷物をまとめておけばいい。
物干し竿とか、
買わなきゃいけないものもあるから
車は必要でしょ。
とりあえず、ざっくり予定を言うと
引渡し日にこっちに来て
荷物の搬入とお買い物は、車を出してあげる。
あなたはその後
窓を開けて拭き掃除をしながら
風を通す。
電気、ガス、水道の開栓は
それまでに日を指定して電話をしておく。
拭き掃除をしながら、
開栓する人が来るのを待つの。
その段取りなら、
当日からトイレもお風呂も使えるから
住めるでしょ。
住みたいんでしょ?笑
入居可能日から、すぐにwww」



入学時はもちろん、すべて私がやりました。
長男が
新入生オリエンテーションや健康診断に
行っている間に全部済ませ、
長男はそこに帰ってくる頃には
明るく暖かい部屋で
作りたてのものを食べることも
メーキングされたベッドで寝ることも
できるようにしてありました。




「えっ・・・滝汗
ママがやってくれないの?…と
言いたげな長男でしたが、
一年半の間に自分がしたことを思えば、
ウッと詰まり、声が出なかったようです笑




「できるわよね?
もう18歳じゃないんだから。」



「・・・で、できるよ滝汗








一年半、勝手をし行方知れずだった長男に
警察の職務質問をきっかけにして
再び会えるようになった私は、
住まいを用意することはしました。
私はまだまだ、甘いと思います。
息子もまだまだ、甘えたガキです。



二度目のお部屋探し、
幼稚な大型犬につないだリードを
いっぱいいっぱいまで延ばして
「あとは自分で好きにしなさい」と
私は突き放したテイで、
親の仕送りは受けつつ
息子の自由は保たれたテイで、



このあたりが
落としどころでしょうか笑




「じゃ、帰る。
私、急いでるの!
ママ、目が悪いでしょ、
高速道路だって慣れてないし。
暗い道を走るのが怖いのよ笑
バイバイ!」



私は嘘をつきました。
長男のために、この街に来ています。
他には、何の用もありませんから
急いではいません。
この一年半、幾度も来ましたから
夜道にも慣れてます笑
涙で目の前を曇らせて
夜の高速道路を走って帰ることだって
何度もありましたが、
私はわざと
“前とは違うママ”を演じました。



『結局、ママの助けなしでは
暮らしが成り立たない自分』に
長男が情けなくならないよう、
プライドが打ち砕かれないよう、
過剰にかまうこともせず



後ろ髪を引かれる思いを
「バイバーイ!」に隠して。





連絡も取れ、いつでも会える。
今までどおり
故郷から祖母が美味しいものを
送ってあげられる場所も確保できた。


私が一年半の間
田舎で想像する長男は、これまで
寝る場所がなく公園で彷徨う息子でした。
研究室やスポーツクラブで
仮眠をする息子でした。
居候しているお宅の隅にお布団敷いて
静かにじっとしている息子でした。
思い詰めて、
首を吊るんではないか
電車に飛び込むのではないか、とも
思っていました。



これからは違います。
遠く離れた田舎にいても
私の頭の中に思い浮かぶ長男は、
長男の名で借りた
長男だけの住まいで、
好きな時間にカフェオレや紅茶を淹れて飲み
好きな時間にシャワーをして
新しく清潔な暖かい部屋で
音楽を聞く息子になります。




迷いや悩みはあるでしょうし、
抱える問題もあるでしょう。
でも、環境はリセットしました。
勉学に励み、疲れを癒し、
悩みや問題を考え解決していく、
長男の“城”を再び作りました。




続く。