『 光のほうへ / 84点 / SUBMARINO 』 2010年 デンマーク 114分
この世界に、新しく生まれる命が、人間らしく生きる為に・・・
【 満足度 】★★★★★★★★☆☆(84点)
【オススメ度】★★★★★★★★☆☆(80点)
◇「セレブレーション」「DEAR WENDY ディア・ウェンディ」のトマス・ヴィンターベア監督が、デンマークが抱える様々な社会問題を背景に、一組の兄弟の過酷な人生を描いた感動のヒューマン・ドラマ。アル中の母親の下で育ち、子ども時代に経験した幼い末弟の死が強いトラウマとして残る兄弟が、どん底の中からかすかな希望の光を見いだすまでの日々を力強くも静謐な筆致で描き出していく。主演はヤコブ・セーダーグレンとペーター・プラウボー。
□デンマーク・コペンハーゲン。アルコール依存症で育児放棄の母親に代わり、懸命に赤ん坊の面倒を見る幼い2人の兄弟。しかし不幸にも赤ん坊は突然の死を迎えてしまう。兄弟は乳飲み子の弟の死に責任を感じ、心に深い傷を抱えたまま成長していくことに。大人になった兄ニックは、臨時宿泊施設で暮らしていた。最近まで刑務所にいた彼は、別れてしまった恋人アナのことを想いながらも、何もできずにただ体を鍛えるだけの日々。一方、疎遠となっていた弟は幼い息子と2人暮らし。妻を交通事故で亡くし、息子だけが心の支えだった。しかし麻薬と縁が切れず、そのせいで最愛の息子との生活を危険にさらしてしまう。そんな中、母親の死をきっかけに再会する兄弟だったが…。<allcinema>
【感想】
何気なく観に行ってみると、その作品がとんでもない傑作だったことってありませんか?
今回は、そういう作品です。今年1番の驚きだったデンマーク映画、『光のほうへ』です♪
今年、自分の中での1位がほぼ決定的な『アンチクライスト』もデンマーク映画やし、いやーデンマーク映画はあなどれんっすね~((φ(・д・。)
しばらくは、【デンマーク映画】というだけで映画館に足を運ぶことが増えるかもね(°∀°)b
それぐらい素晴しい傑作でした!!!
◇◆◇
【中盤までのネタバレしてます。ラストには触れませんが前知識を入れたくない人は読まないでください(-人-)】
オープニング
10歳前後の兄弟と、生後数ヶ月と思われる赤ちゃん・・・
汚い部屋、よれよれの服、赤ちゃんをあやす兄弟の真っ黒な爪
帰ってきたアル中の母親の暴力
何も出来ない内気な弟と、キレやすい暴力的な兄
兄は母を感電させて気絶させる
失禁した母親をバカにしながら、兄弟は隠し持ってた酒を飲み、騒ぎ続ける・・・
彼らは、まだ10歳ぐらいの子供・・・
崩壊した母子家庭、暴力の連鎖。。。
高福祉社会の底辺の実態がそこにある。。。
悲惨な環境が兄弟の精神を蝕んでいく。。。
そして、それはさらなる悲劇を生む・・・
凄まじい・・・
観てから1ヶ月以上経っても、ハッキリと思い出せる。
この最低で、救いが無くて、不快で汚いリアルな描写が、映画的にあまりにも美しく素晴しいが為に、頭にこびりついて離れない。
この凄まじくも素晴しいオープニングから、物語は約20年後へと進む・・・
ソコには、暴力事件で刑務所から出てきたばかりの兄(ニック)の姿。
底辺しかしらないニックは、ソコから抜け出す術を知らない・・・
そして、兄のどうしようもない底辺の生活が映し出される・・・
そこに弟の姿の無いことが、観客にとっては唯一の救い。
弟に会いたい気持ちがありながら、会えないニックの姿は、
幸せな弟に迷惑をかけたくない兄の姿であるように観客には映る・・・
悲惨な兄のパートが終り、弟のパートに移るとき、観客は安堵を覚える、
ここから、幸せな弟が、兄を底辺から救い出すストーリーが展開するのだろうと期待する、
しかし、観客の期待は大きく裏切られる・・・
そこには、幸せな弟の姿は存在しない・・・
そこに映し出されるのは、ヤク中の弟とその8歳ほどの息子(マーティン)の姿・・・
全ての金をクスリにつぎ込み、日々の食事すらままならない・・・
息子を愛していながらも、弱い弟はクスリを絶てない・・・
息子と何かにつけて約束するものの、その約束が守られることは無い・・・
印象的なシーンがある
夜中はずっとクスリを打ち、朝になってもラリってる弟が、
「今日は学校に持っていく弁当を作ってないから、友達に食べ物を分けてもらいなさい」
と、息子マーティンに言ったとき、息子が反抗をする
「嫌だ!」
「今日だけ友達に食べ物をもらうんだ!」
「嫌だ・・・・だって、今日だけじゃないもん・・・(毎日だもん)」
なんてことはない、
なんてことはないけど、これが、この子が、この映画で見せる唯一の反抗・°・(ノД`)・°・
父親が大好きなマーティンは「トイレに行っても良いよ」とさえいう・°・(ノД`)・°・
(※父親はいつもトイレでクスリを打つ)
最低な父親・・・
最低な父親やけど、その弱さは解らないわけではない・・・
この映画は、その弱さを繊細に描き出している・・・
この兄弟がこのような生き方をしていることを、この映画は是とするわけではない・・・
しかし、その環境では、そうしか生きられない弱き人間も居てることをこの映画は提示する・・・
◇◆◇
この後、この兄弟が、どのような人生を歩むかは、ぜひ映画を観てください。
誰がどのような決断をし、どのような結末を向かえるのか?
社会について考えさせられる映画であり、生きることとはどういうことかを考えさせられる映画です。
非常に暗い設定ではあるけど、決して暗いだけの映画ではないので、ぜひDVDが出たら観てください♪
タイトルが示す通り『光のほうへ』向かおうとする映画ですので(φ(・д・。)
オススメです!!!
個人的満足度 84点! オススメ度 80点!
◇◆◇
↓底辺で生きる2人の兄弟・・・
↓10数年時が経ち、大人になったニック(兄)の話への物語は展開する・・・
↓暴力事件で、刑務所上がりの兄の生活は・・・
↓荒みきっている・・・
↓友人もまた底辺で生きる人々・・・
↓人生を諦めかけている兄は、また同じことを繰り返す・・・
↓お葬式で久しぶりに顔を合わせる兄弟・・・
↓一見幸せそうな弟とその息子・・・
↓しかし、弟もまたもがき苦しんでいた・・・
↓光のほうへ・・・光のほうへ・・・光はどこにあるんだろう・・・
悲しくて、辛くて、重くて、痛い・・・
でも、温かい・・・
絶対的な人間への信頼が、この映画を成立させている・・・