肩に書いたほくろ一つをひからせて | 喜劇 眼の前旅館

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肩に書いたほくろ一つをひからせて西新宿は手を振れる距離  我妻俊樹


ほくろはここでは、本物ではなくて書かれたものだけど、まあふつう書くとしたら黒で書きますよね。それが光っているというわけです。黒い(はずの)ものが光っていると。
黒光り、なんてものがみとめられるにはほくろでは小さすぎる。だからこれは、黒いということと光ってるということの共存、というふつうにはないはずの状態を言ってる、ということは確定できる読みなんじゃないかと思います。
つまりほくろが黒くない(金色とか)または黒なのにインクなどの性質上(例外的に)ほんとに光ってるのか、ほくろそのものが光ってるわけじゃなくほくろの周囲の肌などべつのものが光ってるのをこう言ってるのか、あるいは何も実際は光ってないけど比喩的に「ほくろが光ってる」というふうに言ってるのか。
いずれの読みでも別にかまわない、とはとても言えないと思うんですが、しかしひとつ選んだからほかが跡形もなく消える、というわけにいかないところでこういう表現は成り立つのだと思う。つまりここでは、幽霊はいてもよいという態度がとられてるというか。
題詠blog2009、お題「肩」(未投稿)。