マイクロチップマイクロチップと口ずさみ | 喜劇 眼の前旅館

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短歌のブログ

マイクロチップマイクロチップと口ずさみつつ潜み売るポテトチップス  我妻俊樹


三句から四句への句またがりというのはとくに、読み方としては大きく間をあけずに読めないんだけど、意味的には音の空白をまたいでつながっていくので、そこに何か口調のようなものがくっきり出てくるように思います。何かが語られている途中にはさまれる息継ぎ、のようなものとして、語っているのが息づかいをもつ何者かであるということを言葉の意味以前に伝えるというわけです。
呪文をとなえるみたいにあまり意味内容をもたないこの歌にとって、口調が出るというのはけっこう命綱になってるところなのかなと思いますね。短歌が呪文のようなものであるためには、読者ではなくあくまで話者がそれを唱えている、ということにならないとまずいと思うので。そこには微妙にして絶対的な一線があるのではなかろうか。